2010年11月27日

機械探偵クリク・ロボット 感想 カミ



機械探偵クリク・ロボット〔ハヤカワ・ミステリ1837〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
カミ 高野優
4150018375



ロボットの探偵クリクとアルキメデスの子孫の博士が何時間に挑むという、いわゆるバカミステリーの系譜に当たる作品。執筆されたのは第二次世界大戦直後の1946年という事で、なかなかにレトロな雰囲気があって好もしい。
設定は馬鹿っぽいが、よくある投げやりなオチの脱力系ではなくそれなりに練ったストーリー展開。
ただ、クリクが事件の解を暗号化した紙をプリントアウトし、それを解読して事件解決という流れが固定化しているのは…ある種の様式美と見るべきか。

ちょっと面白かったのはロボットの在り方で、一般的な日本人のイメージする人型ロボットは人を模した人に準ずるものであるのに対して、クリクは人型でありながらぎりぎり道具の範疇に収まっている。このあたりは文化の違いからくるものなんだろうか。もう少し自律型で博士と軽口を叩きあえる様なロボットだったらなあと思ってしまったのはきっと俺だけじゃない。



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2010年10月30日

大戦前夜(上下) 感想 ジョン・リンゴー


大戦前夜〈上〉―ポスリーン・ウォー〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)
ジョン リンゴー John Ringo
4150117675


大戦前夜〈下〉―ポスリーン・ウォー〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)
ジョン リンゴー John Ringo
4150117683



上下巻分冊となっているが、1冊当りの分量を考えればわざわざ分冊する必要性を感じないレベル。
文字もやや大きめでスラスラ読めるのは心地良いが、財布的には文字を小さくしてでも1冊にまとめてくれたほうが有り難かった。

内容的には古式ゆかしい宇宙からの侵略者と戦う物語なんだけど、少し設定にひねりがあって、好戦的なポスリーン人という宇宙人と、比較的平和主義な複数種の宇宙人によって組織された"連邦"との戦争に地球が巻き込まれるという迷惑な話になっている。
連邦曰くはポスリーン人の進行ルート上に地球があるので他人事ではないという事らしいが、作中で描かれる連邦の内情…種族や能力によるカースト制っぽい社会…が胡散臭いことこの上ないし、いくらポスリーン人に対抗するためとは言え、充分に好戦的で連邦の基準からしたら危険な種族の地球人を利用するからには何か裏があるような気がする。
また、時代設定が現在から10年ほど前の、テロとの闘いが始まる直前の時代というのも興味深い。
さすがに現代の戦力では宇宙人とは戦えないので、連邦から技術移転して開発された新兵器で対抗する事にはなっていますけど、一部の現用兵器はそのまま使用されるので、看板の「ミリタリーSF」も決して嘘ではない。そんなにミリタリーっぽくはないけれど。


で、作中の宇宙人達の描き方で面白いのは、下巻の後半では敵であるポスリーン人の視点で描かれるシーンが結構挿入されるのだが、社会システムや文化(特に食文化)に関しては地球とは全くかけ離れているものの、感情の起伏や思考のロジックに関しては地球人にも理解しやすいものになっていて、"連邦"の胡散臭い宇宙人達よりもある種の親しみを感じてしまうものになっている。
そういう視点でポスリーン人を見ると、あらゆる生物を食ってしまう悪食ぶりはまるでお隣りの国の人みたいだし、複数の梯団を組んで数で押し寄せてくる戦法はまるでお隣りの国の戦術みたいだし、実はこれある種の黄禍論的思想で書かれた作品ではなかろうかとも思える。
ポスリーン人の血が黄色いのも、黄色人種の隠喩とも取れるし。


なお、この上下巻は物語のプロローグでしかなく、これから長い長いポスリーン人との本格的な戦いが始まるんだそうです。




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2010年10月26日

スワロウテイル人工少女販売処 感想 籘真千歳

スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)
籘真 千歳 竹岡 美穂
4150310017




テーマが結構散逸してしまったというか、物語当初に示された人工妖精による連続殺人事件の謎解き部分がなにやら右往左往するうちに狐につままれたような形で片付けられて、主題が見えづらい印象を受けた。

だけど、それを以てしてこの作品を駄作とするかというと否で、確かにシナリオ的には枝葉が多すぎて本筋が見えにくいものだったけど、世界観の見せ方や古今東西の作品から様々な要素を盛りこんでアレンジしている点に関しては非常に面白かった。
未来都市とか人工的に作られた人間型の生命体とか言うとブレードランナーやAPPLESEEDを彷彿とさせるし、人工妖精と人とのあり方はFSSでもあり、蝶型のマイクロマシンによる浄化は極楽蝶の様でもあり…多分他にも元ネタ付きのものはたくさんあると思う。

たぶん作者が描きたかったのは、殺人事件の謎を追うサイバーパンク風ミステリーよりも、上記の様なSFのごった煮であり、作者が読んでもらいたいと思っているのはそうした元ネタを理解し、作者の意図を汲める人なんだろうと思う。
聞きかじった断片的な知識で一つか二つの元ネタを見つけて、パクリパクリと喚き立てる様な薄っぺらい読者はノーサンキューなんだろうな、きっと。
つーかこれをパクリというなら、ニャル子さんはクトゥルーのパクリってことになるよねw

そんな感じで、オタ向けSF好きの人なら楽しめるというか、むしろそれ特化作品かもしれない。



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2010年10月18日

紫色のクオリア うえお久光 感想


紫色のクオリア (電撃文庫)
うえお 久光 綱島 志朗
404867904X



唐突ですがライトノベルにペダンティックなふりかけをまぶす行為は個人的には大嫌いです。
科学や哲学を語りたければそういう専門書で語るべきです。
生半可な疑似科学や擬似哲学レベル、つまり子供だまし的な効果はあっても専門分野の人には鼻で笑い飛ばされるような屁理屈を並べ立てて俺様すげえと悦に入る作者、またそれを読んでレビュー欄でライトノベルは遂にここまで来た!やっぱりライトノベルは凄い!!と井の中の蛙のルサンチマンの裏返しで絶賛する読者…駄目です。生理的に駄目です。そういうの。


なんですが。
なんですが、これはある意味凄く突き抜けてて、例えば量子論なんかの上っ面を部分部分齧りつつ適当な薀蓄を垂れ流しつつも、それを作者とラノ専読者間の閉じた小さな世界における自慰行為に終始させてしまうのではなく、もっとあけっぴろげなエンターテイメントとして、壮大なネタとして昇華させているのに感心した。前半たらたらと似非哲学的な薀蓄を書いておきながら、後半は完全にお遊びに持って行っていて痛快極まりない。
うえお先生はライトノベルはライトなエンタメであるからこそライトノベルであり、だからこそ最も輝くんだという大原則をしっかりと理解した上で書いておられる。
似非科学や擬似哲学を延々萌えキャラに語らせるのがライトノベルじゃない。まずはエンタメである事。それを忘れたら中二病的自意識による自慰行為の成れの果て…つまり"使用済みティッシュ"でしかなくなる。
そんな事を強く感じさせてくれる一冊でした。いや、実に素晴らしい。



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2010年10月15日

這いよれ!ニャル子さん 5巻 感想 逢空万太



這いよれ!ニャル子さん 5 (GA文庫)
逢空 万太 狐印
4797361484



ようやっとと言うか、意外と早かったというか、5巻です。
5巻は特に目立った新キャラとかはないのですけど、そのかわりこれまでの巻の決算というか、つまり過去に張った伏線が現在放置されたり齟齬が生じたりしている部分を改めて洗い出し――ネタにしています。前巻辺りから伏線を遊びに使っている雰囲気はあったけど、まさか過去にさかのぼってまでやるとは思わなかった。
考え様によれば、ここで伏線の齟齬をネタにしておけば、今後の展開で過去の伏線に縛られなくて済むという目算があってのことかもしれない。だとしたらとんだ策士よのう。

そういうことを踏まえた上でですが、なんだか唐突とすら思える位にクー子とフラグが立ちそうな雰囲気が出てきた。クー子は個人的にニャル子さんより好きなので、クー子ルートに入ったことは素直に歓迎したいが、次の巻ではそんなこともすっかり無かった事になっている可能性も…。
基本的に伏線クラッシャーな作品なのでどうなることやら。

なお、ネタの幅広さは最早混沌の域に到達。素晴らしい。



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任侠学園 感想 今野敏

任侠学園
今野 敏
4408535109



近年よく耳にする教育再生を一風変わった視点で描いた快作。
展開そのものは奇抜さはなく、悪く言えば先が見える部分もあるんですけど、しかし作品のテーマを考えれば変にひねった内容にする必要もないと思う。
とにかく登場人物がいきいきしていて、それだけでも気持ちがいいですね。今野先生の作品で見せパンがどうのこうのなんて会話が読めるとは思ってなかったw
なにぶん自分自身主人公日村に近い世代なので、昨今の激甘教育に関してはこれで本当にいいの?と思うところも多く、かなりの部分で共感しながら読めた。
なお、なにやら前作があるらしいので、そちらも読んでみたい。




posted by 黒猫 at 22:30| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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