2011年01月15日

ハルカ 天空の邪馬台国 感想 桝田省治


ハルカ 天空の邪馬台国
桝田 省治
4757734123



1800年前の日本はファンタジー世界だった。
若干スケベで若干投げやりで若干キモめの高校生が、実家の蔵で見つけた鏡に導かれて古代の日本へと召喚され、救世主としてさまざまな種族を束ねて一大率と闘う古式ゆかしいヒロイックファンタジー。
1800年前ということで邪馬台国の時代ですが、邪馬台国が空に浮かぶ島だったり石のロボットに乗り込んでバトルしたりりとかなりやりたい放題で、真面目に考えて読んではいけません。
たぶん作者の人的には2000年近く前というと超太古と言っても良いくらいの過去なんだから、オーパーツだろうと人外種族だろうとなんでもアリだぜ!という感覚もあったんだと思うけど、2000年前というのは人類の文明の歴史の中では取り立てて古い時代とは感じられなので、些かやり過ぎかなあと感じる部分も。
とは言え、上で「真面目に考えて読んではいけません」と書いたように、歴史の知識は頭から追いだして読むべき作品ですから、ああだこうだと細かい事をいうのはただの野暮ですね。

作者がゲーム作家ですから当然内容もゲーム的で、各章毎に舞台とサブキャラクターがガラっと変わり、ミッションが与えられる構成。(俺屍の世界と一部クロスしているらしが元ゲームを知らないので言及しない)
このおかげで非常に読みやすいのは事実なんですけど、旅の様子等の世界観を膨らませる描写は割愛され気味なのは残念。もっとも、舞台が九州と四国の一部と結構狭い範囲内なので、世界観も何も無いだろという話もあります。

いくつか伏線が未回収のまま終わったので、続編も機会があれば読んでみようと思う。



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2011年01月14日

ジョーカー・ゲーム 感想 柳広司


4048738518ジョーカー・ゲーム
柳 広司
角川グループパブリッシング 2008-08-29

by G-Tools



昭和のきな臭い時代を舞台にしたスパイもの。
スパイものと言っても、リアルな諜報戦を扱う期待してはいけない。あくまで「スパイとは〜」という概念と作者の想像力とで描かれたミステリー調の短編メインであって、喩えるならば「武士道とは〜」という侍に対する概念のみで誇り高くハラキリなSAMURAIを描いたようなものである。
そう、侍ではなくSAMURAI。この作品で言うと諜報員や特務機関員ではなくSUPAI(SPYではない)。
要するに本格的なエスピオナージものではないという話。

だけど、物語としてはテンポの良さと一編あたりの適度な分量で非常に読みやすく、気軽に楽しめるものに仕上がっている。本格的なものではないと理解した上で、ファンタジーとして読めば結構面白かった。
続編は…気が向いたら読むかも。



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2011年01月13日

プリンセス・ベルクチカ Proyekt-0 感想 富永浩史


475772487Xプリンセス・ベルクチカ Proyekt-0 (ファミ通文庫)
富永 浩史 吉田 音
エンターブレイン 2005-10-29

by G-Tools


旧ソ連地域の小国を舞台にした冒険小説風ライトノベル。
作者の人が仮想戦記畑でも活動されているだけあって、そっち方面のエッセンスが結構含まれていて読者を選びそうな予感がする。
主にソ連/ロシアのネタを扱うのが好きというのは、日本最強モノか極東のアーリア人気取りかの二大勢力が幅を効かせている日本の軍オタジャンルの中では貴重といえば貴重なんだけど、それとラノベは関係ない。

まあ、多少軍ネタが散りばめられてはいるものの、冒険小説風ラノベとしての出来は悪くないですけど、読後感としてはやや食い足りない。
国土奪還なんて壮大な前振りの割に、コンパクトにまとまり過ぎたという感じか。
特に終盤、ロシアの圧力で一気に物語が進んでしまうのはあっけなかった。



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2010年12月28日

ぷりるん。―特殊相対性幸福論序説 感想 十文字青


ぷりるん。―特殊相対性幸福論序説 (一迅社文庫)
十文字 青 ま@や
4758040923



ひところのエロゲみたいなタイトルだけど、何かが迸るような内容と一種独特のテンションとで一気に読ませる作品。

クラスのアイドル的女子と付き合い始めたのをきっかけに、主人公ユラキの周囲で巻き起こるトラブルや理不尽なあれこれを、ちょっぴりメンヘルっぽく描いている。
この作品をどう評価するかと言われるとちょっと悩むのだが、問題児ヒロイン桃川みうの常に誰かに愛されているという実感が得られないと不安になり暴走する依存症的な性格には、実際のところ覚えがあるというか、みう程エキセントリックではないけど、異常なまでに電話やらメールやらを強要しながらも、こっちが忙しくて構えないと男友達と勝手に遊びに行ったりして、どうして?と問うと素でどうして?と返してくるような、そういう女の子と一時期縁があってやっぱりユラキよろしく煩悶とした思い出があるもんだから、ユラキの鬱が結構ダイレクトに伝わってきて精神的にまいる作品、というのが一番の感想。

だもんだから、純粋なエンターテイメントとして楽しめなかったのが残念。
ただ、ユラキの姉や妹やぷりるんさんと言った人達が、良い意味でエロゲのサブキャラクター的な存在感を発していて(実際ぷりるんさんなんかサブキャラと思わせてラストでメインヒロインだったという極めてゲーム的なキャラクターだし)、憂鬱な物語をライトに感じさせる効果を発揮していた。

十文字先生の作品はまだ2冊目だけど、いわゆる漫画・ゲーム的な部分と変に生々しい部分とを上手く織り交ぜた作品を書く人という印象を受けた。




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2010年12月13日

ぼくらのひみつ 感想 藤谷治

ぼくらのひみつ (想像力の文学)
藤谷治 北沢平祐
4152091282



閉じた時間の環に囚われて、同じ時間を延々と繰り返すSFは昔から色々ありますが、この作品は停止した時間に囚われてしまった者の戸惑いと恐怖と諦念と狂気を描く一風変わった作品。
時間が停止していると言っても普通に人々は通りを行き交い、一見すると何の異常もない普通の世界。しかしテレビは同じ番組を描く延々繰り返し、時計の針は同じ時間を指し続け、そして太陽の位置もずっと固定で変わらない。
そして停止した時間に囚われた主人公の背中には謎の麻袋が張り付いていて…。

最初は一応時間SFかと思ったんですけど、SFと違って事象を論理的に解説できないので、どちらかというと幻想文学に近いかも知れません。


すこし前に2ちゃんねるで「>>1が糞スレ立てている間に文明はどんどん発達していく…」という煽りAAがありましたけど、感覚的にはあれをすごく連想させます。
フリーターの青年が停止した時間に囚われ、その中で自堕落に生きて行く。時は停止している筈なのに、自分の周囲以外の目に見えない場所では時が動いている事を伺わせる出来事が起きている。
そして何より、自分自身確実に年老いている。不可思議なガジェットを使用してはいるものの、その背後に見え隠れしているのは極めてリアルな諸事。
リアルすぎて説教臭さまで感じてしまう位に。

ここ近年、自由の解釈が急速に拡大したのと同時に、随所でレッセフェールが叫ばれるようになりました。どんな末路をたどろうと文句言わないから自由にさせろ、放っておいてくれ、定型的な生き方を押し付けないでくれ…などなど。
主人公の青年が閉じ込められた閉じた時間世界はまさに究極的なレッセフェール。時間が停止しているから一日中寝ていても構わない。泥棒を働いても露見しない。クレジットカードを使いまくっても請求されない。何をするのも自由放任の世界。しかしそれは一般的な人達の時間から切り離された無縁の世界でもある。
中盤で世間の感覚と相容れない価値観を持つヒロインが主人公の時間世界にやってきますが、最後には出て行ってしまい、主人公は無縁の世界で一人ひっそりと死んでいく。
自由とは社会のしがらみから解き放たれる事ですが、それは縁や絆から切り離される事でもある。それでもあなたは自由が欲しいですか?と問いかけられているような気がした。


最後の最後で背中に張り付いていた麻袋から死んだ主人公が転生?するのは一つの救いかな?
転生したのが主人公と同じ人間かどうかは明言されてないけど、死んだ主人公との記憶に連続性が伺えるので同じ人物と思っても差支えはないと思う。
転生した彼が今度は本来あるべき時間の中で生きる道を選ぶか、あるいはまた自由を求め朽ち果てていくか、それは神のみぞ知るです。


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2010年12月06日

入らずの森 感想 宇佐美まこと

入らずの森
宇佐美 まこと
4396633130



地元愛媛在住の作家さんが書いた、愛媛県内を舞台にしたホラー、それも都市型ホラーじゃなくて大好物である山村ホラーという事で読んでみた。
地元贔屓的なフィルターを外して評価すると、ホラーとしての出来は結構良かったし、複数の伏線が終盤で一本に繋がる展開の妙も良かった。だけど、人間の負のドロドロした感情や人間に寄生する特異な進化をした粘菌、さらには生霊と、いろいろな要素を詰め込みすぎている気がしなくもない。特に粘菌ですね。恐怖の正体をそこに持ってきた事自体は構わないのですけど、普通に生霊が登場する物語なんだから別に粘菌という実体ある存在を正体に据える必要はなくて、平家の怨霊でもなんでも良かった気がする。
それでもなんだかんだ言いながら深い森の奥にある粘菌が住む谷の描写とかは凄く雰囲気があった。
四国ってすごく森が深いんですよね。海沿いに散らばる僅かな平地に町があるだけで、大半は山地と深い森。

なお、作中の舞台となる山村について。地名の響きは愛媛県の小田町に似てますが、作中の説明では高知と愛媛の県境で石鎚山系に属している地域だそうです。石鎚山系に属するのは愛媛県東部の東予地域になるのですが、小田は南予地方です。さらに石手川という川の名前が出てきましたけど、これは松山市の真ん中を流れる川で地域的には中予です。なので、舞台となる山村のモデルを特定するのはかなり難しいですね。多分故意にやっているだとは思いますが。
ともあれ四国の山に登る人は、山の中でネガティブ思考したり他人に対する恨み言を考えるのはやめましょう。でないと粘菌に寄生されてしまいますよ。




posted by 黒猫 at 00:18| Comment(0) | TrackBack(0) | ホラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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