太陽の村
朱川 湊人
ハワイへの家族旅行の岐路で遭遇した飛行機事故。
一人生き残ったオタク青年が漂着したのは、不思議な島だった。
という訳で、日本の室町時代頃に似てはいるものの、何かが根本的に違っている謎の島に流れ着いたオタク青年の冒険と成長を描く本作品。最初はタイムスリップか異次元かとわくわくさせてくれたが、終盤の種明かしについてはいささか拍子抜け的なものがあった。
とは言えラノベ的な文体とコミカルなキャラクターが特徴的な作品なので、こういう大掛かりなギミックもありとえばありか。
若干ながらステロタイプなオタク批判のエッセンスは感じたが、作品自体はオタク向けじゃないのでそういうものだと思って読むしか無い。
ただ、一番ラストで主人公に突きつけられた選択肢はなかなか考えさせるものがあった。
俺みたいに自分の限界を知ってしまった人間なら島に残る方を選ぶだろうが、まだ俺は本気になってないだけと思える世代なら帰る方を選ぶかも知れない。
いずれにせよ明確な回答を敢えて作中では描かないところが良かった。