2011年04月28日

ナイトランナー―ボディーガード工藤兵悟 今野敏 感想

ナイトランナー―ボディーガード工藤兵悟〈1〉 (ハルキ文庫)
今野 敏
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元傭兵として世界の戦場で戦ってきて現在はボディーガード稼業を営む男と、アメリカに拠点を置く急進的な環境保護団体の元メンバーの女性とが繰り広げる必死の逃亡劇。
逃亡というと山中に身を隠したりするのが定番なんだけど、この作品は全編通して首都圏の都市部のみで逃亡劇を展開させているのが新鮮だった。
都市は深い山の中に匹敵するほど身を隠す場所が多いという視点はなかったなー。

敵はCIAで、しかも北朝鮮を焚き付けて核戦争を誘発させるなんて陰謀は些か大風呂敷に過ぎるが、そうしたハッタリに対して逃亡劇そのものや格闘シーンなどはいつもの今野先生らしい緻密さが感じられて、安心して読める。
クライマックスでのひっくり返しも含めてなかなかよく出来た作品だった。
個人的には黒崎氏の過去を知りたい。


posted by 黒猫 at 22:37| Comment(0) | TrackBack(0) | ハードボイルド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジェノサイダー―滅びの戦士たち 梶尾真治 感想

ジェノサイダー―滅びの戦士たち (ソノラマ文庫)
梶尾 真治 米田 仁士
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行方不明となっていた有人火星探索船が地球に帰ってきた。
しかしその乗組員達は、人ならざる存在『ジェノサイダー』と化していて、人類を滅べすべく暗躍を始める…という、B級テイスト溢れる娯楽SF。
SFと言ってもハードSF的な要素は皆無で、どちらかというとハリウッド映画のノリに近い。小難しいことは考えず素直に読むのが吉。

いきなりだけど、なぜ乗組員達がジェノサイダーなる怪物に変化してしまったのかに関してのタネ明かしが正直なところヤケクソ気味に感じた。人類を宇宙に発生した異常細胞と定義するのも、些か時代を感じる部分がある。
異常細胞を駆除するキラー細胞的な存在としてジェノサイダーが発生したという基本構造自体は興味深いものがあるだけに、変に神を匂わせる意思を背景に据えたのが逆効果。
もっと自然発生的にジェノサイダーが出現したという方が良かったかな。

あと作中で原発を派手にデストロイしたりとかは、原発=絶対安全神話が生きていた当時だからこそ許されたジョーク。
今となっては笑えないネタなんだろうな。



posted by 黒猫 at 22:26| Comment(0) | TrackBack(0) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月21日

亜欧州大戦記 4巻ソ連軍冬季大反攻 感想

亜欧州大戦記〈vol.4〉ソ連軍冬季大反攻 (歴史群像新書)
青木 基行
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冬と共に奴らはやって来る。

黒竜江を渡河し、要衝ブラゴヴェシチェンスクに迫った日本軍だが、補給線の維持に四苦八苦しているうちに戦線は膠着、そのまま季節は冬へともつれ込んだ。
そして冬将軍の到来とともにソ連軍の反攻作戦が開始されたが…というユラ戦第4巻。

サブタイトルの冬季大反攻という惹句からは、砲兵と機甲戦力による蹂躙劇が始まるのかと胸踊らせたが、意外と規模の限られた反攻作戦だったのに拍子抜けした。
実際には戦場の神が神罰を思う様にぶつけた戦線もあったと触れられているのだけど、何故かそうした戦場は詳細に描かれなかったのが気になる。
日本の歩兵中心の戦力ではあまりに一方的な殺戮劇になるのが目に見えているので、敢えて割愛したのかもしれない。

全体として煽った割にこじんまりとした戦いに終始した感があるが、日本の戦力を考えればブラゴヴェシチェンスクを巡る攻防戦に焦点を絞ったのは正解なんだと思う。
この戦いで両軍共に大損害を被った事もあり、東部での戦闘は当面膠着状態。次の巻からは欧州方面を舞台とした戦いにシフトするらしい。1巻以降出番が無かった海軍の奮闘に期待したい。



posted by 黒猫 at 21:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦記・ミリタリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月18日

捕食者なき世界 感想 ウィリアム ソウルゼンバーグ


捕食者なき世界
ウィリアム ソウルゼンバーグ 高槻 成紀 William Stolzenburg
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頂点捕食者がいかに生態系のバランスを保っているのかという話を、生物学者たちの苦労(というよりも執念)溢れるエピソードを通して論じるノンフィクション。
基本は食物連鎖の話なので、取り立てて新説や新発見がある訳ではないのですが、生物界の覇者となりながら生態系の維持に関してはあまり関心の無い怠惰な頂点捕食者であるところのホモサピエンスに対する警句に満ちた内容となっていて、世界規模で生態系の変化が観測される現代だからこそ一読しておくべき書ではあります。

また、書の後半では生態系の維持に勤勉な捕食動物を北米に導入すべきだとの論があり、北米大陸にライオンや像を放てと半ば暴論じみた論調の話も出てきますが、象やライオンはともかくも、個体数が減ってしまった狼などを再生することによって、増えすぎた被捕食者を適正な数に収めることが出来るのなら一考する価値はありそうな気がした。
実際日本でも鹿や猪が増えすぎて食害が問題になっているだけに、タイムリーな提案と言えそうです。ただ、その為には仮に狼が人や家畜を襲った場合、いかにして散弾銃を持ち出すことを抑制するかと言う大問題が横たわっていますが。

どこまで現実と折り合いをつけるかが難しいところではありますが、貴重な提言を投げかけている良書だと思います。



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2011年03月23日

ガリポリ―第一次大戦における最大の勇気と最大の愚行 感想 アラン・ムーアヘッド

ガリポリ―第一次大戦における最大の勇気と最大の愚行
アラン ムーアヘッド 小城 正
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WW1というと日本語の資料もあまり多いとは言えないのでまったく知らない事のほうが多いが、このガリポリ上陸作戦は名前だけは聞いたことがあるレベルではあった。とは言えガリポリがトルコだという事すら知らなかったんですが。

本書を読んで強く感じられるのは、敵を軽んじ、明確な戦略を欠くままに行った作戦は、たとえ戦術的に眼を見張るものがあったとしても、良い結果は齎さないという事。まあ、すごく基本的なことですよね。なのにその基本を忘れて手痛いしっぺ返しを受けた行為は世の中ゴマンと転がっているわけですが。

なお、このガリポリ上陸作戦を立案したのは後の英国宰相チャーチルです。
本書では英国内に於ける政治的なグダグダにも触れていて、作戦は失敗すべくして失敗するだけの要素を常に孕んでいた事も描いてます。
戦史というと主に前線での時系列ごとの出来事の羅列が多いのですが、ロンドンにも目を向ける事で、ドキュメントとしての厚みが出ている気がしました。

結構分厚い本ですが、内容は濃厚なので知的好奇心が減衰する事なく読めました。




posted by 黒猫 at 21:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦記・ミリタリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月12日

不死身のフジミさん―殺神鬼勧請 感想 諸口正巳

不死身のフジミさん―殺神鬼勧請 (C・NOVELSファンタジア)
諸口 正巳 タカハシ
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おやじ臭いキャスティングは結構好きだ。
特にフジミさんのヘタレた中年という感じは悲哀が漂っていて良い。
とある理由で短命な家系なのも、とある理由で妻を亡くして以来ずっと孤独に生きてるのも切なさ満点で良い。
それはいいんですけど、前半の展開がワンパターンすぎるのが辛い。
グロイ事自体は悪い事でもないし、ホラーっぽさもよく出てて、もう少し展開に変化があれば一気に面白くなると思うんですがねー。
擬音に凝ったりする力をストーリーの方に費やして欲しかった。

あと、微かに宇宙的恐怖系のキーワードが見えた気がするんだけど、城田さんが一番ソレっぽい。
もしかしてその系譜作品なのかな。



posted by 黒猫 at 21:33| Comment(0) | TrackBack(0) | ホラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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