溢れる自意識によって彩られた刹那的な小説。最早それ以外の形容しようがない。
簡単に言うと中二病。
だが、この中二病は…嫌いではない。
いい歳した大人が根拠不明の選民意識を振りかざして上から目線でグダグダと屁理屈を書き散らし、それを論理的だと自画自賛するタイプの作品にはひたすら吐き気をもよおす僕ですが、そこに1つ"この作品は壮大なネタです"という要素が加われば印象は一転する訳です。
この作品のメイン登場人物たちは、概して"俺はお前と違う"、"皆と違う俺様かっこいい"、"自分以外全員バカ"的な考え方を持っています。あまり直接的は語らないものの(一部の某デブキャラは露骨に語ってるけど)、シンジケートとかラヴァーズなど適当なあだ名を自分達とは違うグループに付ては、俺達はあいつらとは違うんだぜ?的なニュアンスの言動を繰り返していたりする所にそうした意識が現れているわけで。
そうした自意識の垂れ流しのまま終盤まで描かれてしまうと、結構辛い作品となってしまうのですが、物語中盤からちよっとアウトローな連中が関わってきて、後半は超人的な戦闘能力を持つ主人公グループが並み居るヤンキーをちぎってはなげーの、ちぎってはなげーの展開。
仲間の一人で存在感の薄い地味なショタキャラが突然"実は暗殺拳法の伝承者だった"とか、もうとことん好き勝手なカオス状態です。
前半で築きあげてきた、ちょっぴり言動が鼻に付く連中の学園ライフ小説というイメージを完膚なきまでに打ち砕き、壮大なネタ作品へと昇華させている。
いいね。実にいい。
次々飛び出す中二設定も、作者がニヤニヤしながら書いているのが伝わってきて愉快。
劣等感を選民意識に裏返して、俺様はお前等クズとは違うんだ、俺が評価されないのは世の中が俺の真価を見抜けないマヌケばかりだからだ…みたいなことを書いてる某SF風ラノベ作家なんかとは一味も二味も違う。
中盤以降はあまりの面白さに一気に読んでしまいました。
この人の作品、他のも読んでみたい。