2012年04月23日

修羅の戦野3-4巻の感想

修羅の戦野〈4〉ハルピン最終決戦 (C・NOVELS)修羅の戦野〈4〉ハルピン最終決戦 (C・NOVELS)
横山 信義

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修羅の戦野〈3〉北満州追撃戦 (C・NOVELS)修羅の戦野〈3〉北満州追撃戦 (C・NOVELS)
横山 信義

by G-Tools





2巻で遼東半島まで追い込まれた日米軍だが、扶桑山城の旧式戦艦の奮闘と米軍の来援によって戦局を出していた聞き返し、いよいよ最終決戦の地ハルピンへ。
米軍の新鋭兵器を受領した日本軍に対して、どういうルートかは良く判らないがドイツからの供与された新鋭兵器で立ち向かってくるソ連軍。Ta152やHe162が満州の空を席巻する…かと思いきや、P-51Hと僅差の勝負になっている。日本のミリオタの間ではドイツ軍無敵神話がまことしやかに語られているので、マスタングとどっこいの勝負というのは不満を感じる人多いだろうなあ…。
ただ、ドイツ軍はいざしらず、例えば国産の戦闘機は日本の軍オタの間ではすこぶる評判が悪く、口さがない人はイタリア機以下とまで評してますけど、実際に対峙したアメリカではそれなりの評価を受けていたりする訳で、そこらの軍オタの評価が常に正しいとは限らないのもまた事実です。

で、決着の形としては朝鮮戦争をオマージュした形に落ち着け、荒唐無稽な方向に持っていかなかったのは良いと思う。
いくらアメリカの支援があってもソ連を打倒できる国力は日本にある訳ないし。
作者曰く修羅の波濤世界はこの作品を持って完結らしく、修羅世界がこの後どうなっていくかは想像するしかないのですが、日本の置かれた立場は現実の状況とたいして変わらず、違う点といえば中国や朝鮮に共産主義が蔓延ってない事程度なんですけど、同じ自由主義圏でも韓国との関係は見ての通りですし、中国は自由経済に舵を切って豊かになるにつれ高圧的になってきていますので、東西陣営の最前線が日本本土から離れた満州の地に移動したからといって、それで史実の日本とどのくらいの違いが出るかというと、実は殆ど変わらないに一票。
でも、架空の歴史物って現実との近似値内でどこまで捻る事ができるかが醍醐味だと思うので、これはこれでよいのです。



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2012年04月16日

『関東軍風速0作戦―対ソ気球空挺侵攻計画の全貌』の感想


関東軍風速0作戦―対ソ気球空挺侵攻計画の全貌 (光人社NF文庫)
鈴木 敏夫
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世間一般的には風船爆弾として知られる日本軍のふ号兵器。
風船という牧歌的イメージのせいで、当時の日本軍の技術的に未熟だった部分を強調する際に引き合いに出される事も少なくないようですが、当時太平洋を超えて北米大陸まで到達可能な兵器なんてこれ以外存在しません。まだICBMなんて無かった時代に、大陸間攻撃が可能なふ号兵器。これを原始的と笑うのは自らの無知を曝け出しているようなものです。
風船本体にしても、和紙に蒟蒻糊という製法は一見すると原始的にも思えますが、苛性ソーダ処理の化学反応を利用して靭性を持たせるなどしっかりとした工夫がなされています。また同じ浮揚力を持つゴム風船より軽く気圧の変化による膨張や収縮に対しても強い点も見逃せません。
実は結構考えこまれた兵器だったんですね…インスピレーションだけから生まれた様なパンジャンドラム等よりは。


とは言え、本書は北米を攻撃するための風船爆弾そのものを取り扱ったものではなく、ふ号兵器を挺進攻撃に使おうと考えた技術者の苦闘(実際は結構楽しそうでもある)の記録。
具体的には満州から兵員を吊り下げた風船を飛ばせばロシア沿海州方面に対する浸透戦術が可能なのではないか?という話です。
アイデア的には面白いものの、いかんせん風まかせの風船なので部隊が分散してしまう危険性や、高空での兵員の防寒対策といった現実的な課題が山積していて、結局はお蔵入りとなってしまうのですけども。
結果はあまり宜しくないものとはいえ、過程はなかなか楽しそうで、テスト用風船に自分でぶら下がって空を飛んだりとか、ああこれ俺もやってみてぇ!と思えるものでした。

余談だけど、この研究資料をもし満州に侵攻したソ連軍が入手していたらどうなっただろうかと想像するとなかなか楽しいです。
何せ「雪の上ならパラシュート無しで飛び降りても兵器なはず!」と閃いて、兵員を輸送機からパラシュート無しでばら撒いて雪原に無数の深紅の花を咲かせたり、コンテナに緩衝材として藁を詰め込んでその中に兵員を入れて空から落としてみたりと、人命をチップにした諸々のエクストリームギャンブルには事欠かない国家です。風船に兵員ぶら下げて日本海超えさせれば日本本土攻撃余裕じゃね?とか考えて、結果日本各地に凍死したロシア兵が降り注ぐ様な喜劇をやらかしてくれたかもしれない。
いや、それどころか兵員ぶら下げたままアメリカまで飛ばそうとしたかも。(実際アメリカはふ号兵器を使って日本軍が工作員を送り込んでくる事を警戒していた)
うーん残念。



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2012年02月19日

修羅の戦野 2巻 攻防遼東半島の感想

修羅の戦野〈2〉攻防遼東半島 (C・NOVELS)
横山 信義
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ソ連軍満州侵攻第2巻。
冒頭のウラジオ沖海戦で宇垣纏率いる艦隊が航空攻撃を受けてフルボッコになるのは予想通り。
その結果遼東半島への支援が遅れるものの、山城扶桑が文字通り陸上砲台と化して奮戦する事でソ連軍の侵攻を挫き――旧式戦艦2隻で果たして奔流のようなソ連軍の進撃を止められるかどうか疑問は残りますが、大鑑巨砲の夢の残滓としておおらかな心で読みましょう。
その後いよいよ米軍も本格的に動き始め、巻き返しが始まるというところで2巻は〆。
日本軍の扱いが、米軍の本体到着までの時間稼ぎという点で自衛隊のそれに重なっているのは面白いですね。
パットン将軍を随分持ち上げていますが、前作の山口多聞といい、作者の人は敢闘精神旺盛なタイプの指揮官がお好きなんだなと思った。



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2012年02月16日

修羅の戦野 1巻 満州大侵攻の感想

修羅の戦野〈1〉満州大侵攻 (C・NOVELS)
横山 信義
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前作「修羅の波濤」は一応全巻読んだ記憶があるが、もう内容は忘れかけてます。
確か開戦劈頭主力空母がごっそりやられてしまった日本軍が、いかに巻き返しを通して図るか…と言うよりも、空母が無くなったんだから大鑑巨砲しか無いじゃない!な話だった気がする。
もちろん日本戦艦無双で圧勝!!な節操のない話ではなかったですが。

そしてこの修羅の戦野です。
今度は満州に侵攻してきたソ連軍が相手だという事で、陸戦メインですね。
従来の日本戦車ではソ連の機甲部隊相手には足留めにすらならないですが、対米講話後にアメリカからM4シャーマンが供与されていますから、何とか撃ち合う位は出来る感じ。と言ってもT-37/76相手の話で、いずれスターリンやT-34/85が出現することがあればどうなるかは分かったもんじゃないですけど。

流石に慣れない陸戦描写で疲れてきたのか、後半は海戦です。ウラジオに向かうガングート級戦艦3隻を撃沈すべく、角田覚治に唆された宇垣纏が日本に残された貴重な戦艦2隻を率いて第二次日本海海戦よろしく戦いに臨む…遼東半島まで押し寄せたソ連軍に対する対地砲撃の任をうっちゃって。
大鑑巨砲による艦隊決戦の夢に取り憑かれた宇垣はどう見ても死亡フラグ。
だがそれ以上に宇垣に艦隊決戦を吹き込んで炊きつけた角田こそがA級戦犯だお。
敵は前線ではなく身内ありってやつですね…。



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2011年04月21日

亜欧州大戦記 4巻ソ連軍冬季大反攻 感想

亜欧州大戦記〈vol.4〉ソ連軍冬季大反攻 (歴史群像新書)
青木 基行
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冬と共に奴らはやって来る。

黒竜江を渡河し、要衝ブラゴヴェシチェンスクに迫った日本軍だが、補給線の維持に四苦八苦しているうちに戦線は膠着、そのまま季節は冬へともつれ込んだ。
そして冬将軍の到来とともにソ連軍の反攻作戦が開始されたが…というユラ戦第4巻。

サブタイトルの冬季大反攻という惹句からは、砲兵と機甲戦力による蹂躙劇が始まるのかと胸踊らせたが、意外と規模の限られた反攻作戦だったのに拍子抜けした。
実際には戦場の神が神罰を思う様にぶつけた戦線もあったと触れられているのだけど、何故かそうした戦場は詳細に描かれなかったのが気になる。
日本の歩兵中心の戦力ではあまりに一方的な殺戮劇になるのが目に見えているので、敢えて割愛したのかもしれない。

全体として煽った割にこじんまりとした戦いに終始した感があるが、日本の戦力を考えればブラゴヴェシチェンスクを巡る攻防戦に焦点を絞ったのは正解なんだと思う。
この戦いで両軍共に大損害を被った事もあり、東部での戦闘は当面膠着状態。次の巻からは欧州方面を舞台とした戦いにシフトするらしい。1巻以降出番が無かった海軍の奮闘に期待したい。



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2011年03月23日

ガリポリ―第一次大戦における最大の勇気と最大の愚行 感想 アラン・ムーアヘッド

ガリポリ―第一次大戦における最大の勇気と最大の愚行
アラン ムーアヘッド 小城 正
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WW1というと日本語の資料もあまり多いとは言えないのでまったく知らない事のほうが多いが、このガリポリ上陸作戦は名前だけは聞いたことがあるレベルではあった。とは言えガリポリがトルコだという事すら知らなかったんですが。

本書を読んで強く感じられるのは、敵を軽んじ、明確な戦略を欠くままに行った作戦は、たとえ戦術的に眼を見張るものがあったとしても、良い結果は齎さないという事。まあ、すごく基本的なことですよね。なのにその基本を忘れて手痛いしっぺ返しを受けた行為は世の中ゴマンと転がっているわけですが。

なお、このガリポリ上陸作戦を立案したのは後の英国宰相チャーチルです。
本書では英国内に於ける政治的なグダグダにも触れていて、作戦は失敗すべくして失敗するだけの要素を常に孕んでいた事も描いてます。
戦史というと主に前線での時系列ごとの出来事の羅列が多いのですが、ロンドンにも目を向ける事で、ドキュメントとしての厚みが出ている気がしました。

結構分厚い本ですが、内容は濃厚なので知的好奇心が減衰する事なく読めました。




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2010年05月18日

目標!伊号潜水艦 感想 アントニイ トルー

目標!伊号潜水艦 (ハヤカワ文庫NV)


インド洋で通商破壊の任に就いていた日本海軍の潜水艦と、英海軍駆逐艦との行き詰まる追撃戦…とか書くと本格海洋戦争小説のように錯誤してしまうが、その実態はアレ極まりない斜め上小説。

まず潜水艦は米国籍の輸送船を沈める際に反撃を受けて潜行不能状態となっていて、応急修理のためにアフリカ沿岸の小島に潜伏している状態で、駆逐艦と互いに腹を読み合い、魚雷&爆雷を交錯させるような展開は一切なし。
クライマックスでも島に上陸した英駆逐艦乗組員達と陸戦で勝負が決すると言う斜め上ぶりで…潜水艦である必然性がまったく見えない。

また日本軍の残虐描写として海上に脱出した輸送船乗組員に機銃掃射をかけるシーンを描いているんですけど、実際問題そういう事が無かったとは言わないが、そんなの戦争ならどこにでも転がっている話でしか無く、殊更強調するものではない。
例えば米軍が日本軍の捕虜を後送するのが面倒になってその場に集めて機銃掃射をかけたという話もあるし、ヨーロッパ戦線でナチのユダヤ人収容所を開放した際にその惨状に頭に来た兵士が捕虜のドイツ兵をその場で虐殺したなんて話もある。
更に非戦闘員を徹底的に殺戮した連合軍の戦略爆撃も忘れてはいけない。
正直な話、枢軸軍と連合軍とではどう見ても連合軍の方がえげつない事やってるだろうという話で、こういう細かい部分を挙げては被害者面をするのはどうにもいただけない。


ちなみに間違いまくった日本人観ももの凄いことになってますけど、最早ツッコむ気力もありません。


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2010年03月31日

軍神は語らず―真珠湾特攻の虚実 感想


九軍神は語らず―真珠湾特攻の虚実 (光人社NF文庫)
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真珠湾攻撃に投入された特殊潜航艇の乗員たちと、彼らを死後軍神として祭り上げた戦時報道の不気味さを軍神の遺族へのインタビューを元に描くノンフィクション。

戦意高揚プロパガンダはいかなる体制のいかなる国にも存在するものではあるけど、やはり度が過ぎると薄気味悪さの方が強くなるのを思い知らされたかんがあります。
特にこの本に収録されている、当時の著名人からの賛辞というのが政治家軍人はもとより文壇の偉い人や学者までが諸手を挙げて軍神を絶賛していて薄ら寒い気持ちにさせてくれます。

もちろん搭乗員の方たちの心意気や国に対する想いは素晴らしいものである事に疑いの余地はありませんが、それだけに彼らの想いを過剰演出して政治利用する行為が醜悪に思えてしまうのは致し方ない。敢えて言えば英霊に対する愚弄。

また、遺族の方達の証言では、"軍神の遺族"を演じる事を強要(命令では無くても演じる事を強要する空気が存在した)され、親として息子の死を悼むことすらままならなかった事などが語られていて、この辺りは本音より建前を優先する事が美徳とされる日本らしいと思ったり。


なお、タイトルに真珠湾「特攻」と付いていますが、のちの神風や神武特別攻撃隊のそれと繋げて考えるべきものではないので注意です。


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2010年01月28日

旭日の鉄十字 日米開戦 感想 三木原慧一

日米開戦―旭日の鉄十字 (C・NOVELS)
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ドイツ軍の装備で武装した日本が太平洋戦争を…というコンセプトの、某軍板あたりのドイッ厨ラント人の妄想をかき集めて魔女の大鍋で一昼夜煮込んだ様な仮想戦記。
ただし、作者があの三木原メイドスキー御大である点からして、ただ単にアジアのアーリア人を気取りたいだけのドイツかぶれな軍オタの自慰的小説に終止するとは思えないって事で読んでみました。

1巻はオーソドックスに真珠湾攻撃を扱っていて、さんざん煽られているドイツ軍の装備とやらはまだ出てきません。いや、最後の章の方にかなり予想の斜め上を行った代物が出てくるには来るのですがそれは後述。
ともあれ真珠湾。作中世界の日本はアメリカとの関係こそ戦争状態突入ですが、オーストラリアとは独立戦争に協力した関係で比較的友好、日露戦争に敗北した事で大陸には権益をもっておらず、泥沼の日中戦争もなければ満州国も無い(代わりにソ連が満州国を建国している)。
つまり、開戦時点では日本は対米戦にのみ集中出来る態勢が整っている。イギリスの動きが今ひとつ見えませんけど、これは上記の斜め上なドイツ軍装備を日本に運ぶ道中で戦う事になるとは思います。

兵器レベルでも小さな改変がなされていて、零戦が金星エンジンを搭載して速度重視の一撃離脱を得意とする戦闘機に改変(燃費の悪い金星を積んで、機体強度も見直して…とやると艦上戦闘機として必要なだけの航続距離を稼げるかどうかは気になるが)されていたり、豪州独立戦争で共闘したアメリカのブローニング.50口径機関銃を国産化して装備していたりとか。
史実に比べるとレーダーの技術が若干進んでいるのも気になります。
そして本命はドイツからの斜め上な贈り物…なんと総統から戦艦ビスマルク以下数隻の艦艇を委譲してもらうという無茶なんだか三木原氏らしいというべきか悩む装備品。
本来だと海軍は日本海軍の方が充実しているので、どちらかというと弱点である陸戦兵器を供与してもらうという展開が一般的なのに、敢えてビスマルクとか臍曲りすぎるだろ…。


改変ポイントはそんな感じだけど、1巻の一番の見所はやっぱり源田実の盛大なドキソぶりにあると思う。作者曰く嫌な上司とでも思って読んでとの事ですが、うーんなるほど(笑)。まさに嫌な上司に対して時々妄想してしまうことを作中で克明に描ききってやがる。三木原御大やるなあ。
個人的には源田氏にはもう少ししぶとく生き残ってもらって引っ掻き回して欲しいかなとも思ったけど、そんな事したら勝てる戦も勝てなくなるので、この始末のつけ方でベターかも。


なおこの作品世界にもあの社会主義がナントカスキーでマルクスとレーニンがぶははははな小説と、謎の作家曲垣武雄氏は存在しています。



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2010年01月27日

ベトナム戦争兵器ハンドブック 感想

ベトナム戦争兵器ハンドブック (文庫版新戦史シリーズ (87))
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ベトナム戦争期間において使用された兵器類をコンパクトにまとめた一冊。
ただの兵器カタログではなく、ベトナム戦争の発端となった第一次インドシナ戦争〜ハノイ撤退、そして南北の統一までの主だった戦闘とその推移なども過不足無くまとめられていて、ベトナム戦争の概要を知る上ではなかなか有意な本になっていると思います。

また、各戦闘での両軍の死傷者数も併記されていて、興味深い事に共産軍と米軍とは空の闘いにおいては共産軍の健闘ぶりが伺えたりします。
(陸の闘いにおいては言わずもがなですが)
交換比率だけ見ると朝鮮戦争や後の湾岸/イラク戦争の圧勝ぶりが嘘に思えるほどの数値になっていて、もちろん対空火器に落とされたぶんも混じっている可能性はあるにせよ米軍の損害1に対して撃墜2という数字はアメリカに取っては苦戦と言ってもいいかも知れません。
なお、朝鮮戦争のキルレシオに関してはかつては米軍損害1に対して10機撃墜、14機撃墜と言う数字が出ていましたが、これはかなり誇張の入った数字であるとの説もチラホラと。


基本的にはあくまでハンドブックであり、いわゆる戦史本の様に特定の戦場や兵器を深く掘り下げているわけではないので、ある程度知識のある人には物足りないかも知れませんが、映画などでベトナム戦争を知って、どんな闘いだったか興味が湧いてきたという向きの人にはオススメ。



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2010年01月01日

旭日の鉄騎兵 満蒙に吼ゆ! 感想 陰山琢磨


旭日の鉄騎兵 満蒙に吼ゆ! (歴史群像新書)
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日本戦車のもう一つの発展史としてスタートしたと思われる本作品もこの巻でひとまずの完結。

日本の戦車にとって一つの転換点となりえた歴史的事件…ノモンハン事件を起点として、史実とは違った戦車の進化を、欧州や中東での戦いを通して描いてきた本シリーズですが、完結編となるこの巻では舞台は再び満蒙はホロンバイルへ。
全てが始まった地で、それぞれ別々の進化を遂げてきた3つの国の戦車が激突すると言う趣向。

第二次世界大戦に登場した戦車を恐竜的進化させたドイツのエレファント駆逐戦車。
機動性と量産性能に主眼を置き、三者の中では一番史実の戦車に近いソ連のT52。
そして二巻当時に登場した車両ではあるものの、複合装甲と新開発の砲弾を装備してアップグレードされた日本の一〇式戦車。


個体の戦闘力としては、機動力を切り捨てて一〇式の砲に耐える装甲と一〇式をアウトレンジ出来る火力に特化したエレファントがあまりに圧倒的な印象があったが、上記のようにエレファントは基本的にWWU当時の技術の最終発展型。一応照準装置に新技術が使われているとは言え、車体設計そのものはもうこれ以上発展の余地が無い。
対して一〇式はというと、エレファントの砲弾を数発受けると撃破されるし、その火力もエレファントの装甲を貫徹することは出来なかったが、ボルトオンで取り付けできる拘束セラミック複合装甲や世界に先駆けて開発された新型砲弾など技術的にはに1〜1.5世代上を行っており、更なる発展の余地を感じさせるものではありました。
もっとも、1950年代にセラミック複合装甲はチートな気がする。
セラミックの持つ特性として、原子間の結合力が強く亀裂の成長速度が侵徹される速度よりも遅いため、侵徹体の運動エネルギーの大半を消耗させることが出来る云々…といった原理の解説はなかなか面白かったけど。


基本的に戦車オタが書いた戦車小説と言う感じで、狙っているレンジの狭さは強く感じるが、ピンポイントな人にはとことんピンポイントな作品だったように思う。
もちろんそのピンポイントが自分自身だったのは言うまでもないですが。

旭日の鉄騎兵 感想
旭日の鉄騎兵西へ 感想


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2009年12月21日

亜欧州大戦記 3巻 北部正面消耗戦 感想 青木基行



亜欧州大戦記〈Vol.3〉北部正面消耗戦 (歴史群像新書)
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早速日本軍の勢いに翳りが見えてきた。東部正面は敵失もあり比較的容易に制圧が進んだものの、黒竜江を越えてヴラゴヴェシチェンスクを目指す北部正面作戦は渡河能力の問題とソ連軍河川砲艦による補給線への攻撃を受けて遅々として進まず、消耗戦の様相を。
消耗戦となれば生産力に勝る側が時間の経過とともに有利になるのは自明の理。しかも季節は冬に向かいつつあり、いよいよソ連軍にとって絶好の反撃の機会が…。

物語自体も極東地域での戦闘に全ページを費やしていた1・2巻と打って変わって、中東地域の英軍やソ連占領下から脱出した自由ドイツ軍の動きにかなりのページが割かれる様になり、いよいよタイトル通りにユーラシア大陸そのものを戦場とした大戦争の足音が聞こえ始めたのには滾るものがあります。
もちろん最終的に勝敗を決するというか、戦争の行方が確定的になるのはアメリカが正式に参戦した時なんだろうと予想はしておく。


内陸での戦闘と言う事もあり、1巻のウラジオストック奇襲作戦以来大きな見せ場が無い海軍にもそろそろ何か仕事を与えてやって欲しいな…。ソ連の太平洋艦隊はもともとたいした戦力が無かった上に、緒戦でほぼ壊滅してしまったので、黒海からお出まし願うしか無いのかなー。
そのまま日本海まで艦隊がやって来たらそれはそれで燃えるものがあるけど、時代的にそれはちょっと考えられないかな。
いずれにせよまずは目前に迫ったソ連軍の冬季反攻作戦をどう凌ぐかが焦眉の急だと思われるので、海軍の出番はまだもう少し後かも知れません。



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2009年12月03日

遥かなる俊翼―日本軍用機空戦記録 感想 渡辺洋二



太平洋戦争当時の陸海軍航空隊を取り扱ったノンフィクション戦記。

題材が結構マニアックと言うか、水上戦闘機「強風」や偵察機「彩雲」といったあまり表舞台で語られる機会がない存在まで取り扱っているのがなかなか面白い(戦記に面白いと言う事場は不謹慎ですが)。
全体として大戦後期〜末期の題材が多いため、数のみでなく性能的にも優勢な米軍機との苦しい戦いが延々と描かれていますが、勢いに任せて突き進んでいる緒戦よりも、防戦に回ってからがその国の軍隊の真価が見えてくると思っているので、個人的には非常に興味深く読めました。
冒頭の南郷大尉のエピソードに象徴されているような一部の秀でた技量の持ち主に頼った体質、そして新鋭機材の不安定な稼働率、国力だ物量だ云々以前に負けるべくして負けた感がより強く感じられるのは気のせいでは無い。
…という話は、怖い人達に怒られそうなのでやめてこう(笑)


当時のパイロットや関係者へのインタヴューを中心にして描かれているので、厳密な資料性に関してはなんとも判断できない部分もあるかもしれませんが、しかし記録だけからは伝わってこない当時の隊内部の空気や、個人或いは機材に対する想いなど、臨場感とでも呼ぶべきものは良く伝わってきます。
訓練中の事故で記憶に障害が出ただけで軍の精神病院に放り込まれ、実家には憲兵が親族に精神病の者がいないか調査に訪れるとか今ではちょっと考え難い(尤も、現在でも第三者を使ってこっそり調査しているらしいですけど)話もあり、時代を感じてしまった。
戦記ではともすれば忘れられがちになってしまう、人間と言う要素を通して当時の戦場を描き出す手法は、このカテゴリー内では結構珍しいかも知れません。


遥かなる俊翼―日本軍用機空戦記録 (文春文庫)
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2009年11月27日

ニセコ要塞1986 1 利尻・礼文特攻篇 感想

かつての仮想戦記ブームの火付け役とも言える「艦隊シリーズ」。その原典といわれる「要塞シリーズ」です。

ぶっちゃけ、原典どころか全く別ベクトルの作品なのに面食らった。
一応は80年代当時の東西冷戦をモチーフにして描かれているのですが、艦隊シリーズの様な作者のユートピア願望はほとんど含まれておらず、純粋に戦争に終始しているのが心地よい。
近代戦に要塞という概念はどうか?と思ったりする部分も無きにしろあらずですが、そこは荒巻節と理解して華麗にスルーするのが大人の作法。

実在の地名を使いながらも完全に架空の世界を舞台にしていて、生産力や経済力といった部分は完全に無い事になっているのがすごく特徴的です。作中の説明によると太平洋の向こう側から兵器は無尽蔵に運ばれてくるらしいですし、兵員も次々に冷凍状態で運ばれてくるのを蘇生して使用するとかで。
実現不可能な国家戦略を延々と語る艦隊シリーズから比べると随分思い切った設定でありますが、氏の作風だとこの位で丁度良いのもまた事実。純粋に戦術だけに特化した仮想戦記というのもまたよきかな。


艦隊シリーズがとにもかくにも日本を勝たせるという目的で書いていたために常にワンサイドゲームで進捗していたのに比べると、両軍共に血を流しながら延々殴り合う消耗戦の様相が描かれているのですが、これは作品中随所で触れられている六道だか十界だかを匂わせる仏教的世界観でいうと、作中世界は修羅道であるという暗喩でしょうか。
艦隊〜も輪廻転生が物語の主要キーワードでしたが、この作品もそういう類の神がかり的な要素が極めて強いと感じた。


ニセコ要塞1986〈1〉利尻・礼文特攻篇 (中公文庫)
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2009年11月09日

亜欧州大戦記 2 東部正面電撃戦 青木基行



1巻終盤の流れを引き継いで、沿海州を巡る戦いが描かれるユラ戦第2巻。
1巻の異常なテンションはだいぶん落ち着いた感もありますが、特定の主人公を設けず個々の兵士視点で戦場を描く手法が七里積極的に使われていて、臨場感は相変わらず健在。「戦場」を描きながらも全体を俯瞰して「戦争」を描く事もそれなりに行われていて、沿海州地域の地図を眺めながら読むとより趣き深いものがあります。

しかし日本ソ連共に戦術がお粗末で、共に人命をあまり考慮していない戦い方をしている姿はなんとも諧謔味に溢れていて居心地が悪くなってしまう。戦車に火炎瓶で立ち向かうのも、ウラウラと吶喊するのも、当事者には(主に精神論的な見地で)それなりに言い分もあるだろうけど、第三者視点で見るとやってる事はたいして変わらない。
それこそ神風とターランに精神論以外の面でどれほどの差があるんだろうかという話みたいなものです。もちろんまだ作中では両軍共に体当たり戦法の愚は犯しちゃいませんが。

奇襲効果と天佑に支えられて何とか沿海州を制圧した日本軍ですが、あくまで満州の後背を衝かれる危険性を排除できたに過ぎません。戦場にはT-34もちらほらと現れ始めましたし、何より巻末で極東方面戦略総軍司令官にジューコフが就任した事でそろそろ辛くなってくるだろうなあ。


なお、上で兵士の視点云々と書きましたが2巻ではソ連兵視点が大半で、実はソ連軍が主役?と思ってしまうレヴェルだったのにふいたw
特に初期型T-34を受領して九七式改や百式砲戦車(史実の一式砲戦車)と対峙するスミルノフと部下2名のエピソードは秀逸。
この巻のメインといっても差支えが無い。百式に撃破されたもののなんとか脱出して生き残ったので、また先の巻で登場するかもしれない。楽しみにしておこう。


亜欧州大戦記〈VOL.2〉東部正面電撃戦 (歴史群像新書)
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2009年10月04日

超・空挺砲艦「火龍」1 大逆転!ガダルカナル戦 陰山琢磨 感想

タイトルはあれだが内容は比較的ハード。

物語の中心に存在する空挺砲艦の存在もさることながら、あくまで陸軍主導で攻勢限界点を早期に設定して持久戦の構えに持ち込む展開に新鮮さを感じた。
ヨーロッパの様に陸続きの国境がある訳でも無い太平洋の場合、必然的に米軍の侵攻ルートは限定されてくる訳で、そうした進路上の要衝となる島嶼の補給及び整備能力さえ定期的に漸減してボトルネックを作れば比較的持久も可能かもしれない――という幻想を見させてくれる。

そうした漸減の要となるのがタイトルにもある空挺砲艦…現代で言うガンシップであり、これの編隊でガ島やポートモレスビーを定期的に襲撃する事で兵力の集中を妨害し、ヘンダーソン基地の拡張も阻止しようと言う大胆極まりない戦術。もっとも、史実のニューギニア戦では米軍の少数の爆撃機による日本軍基地への嫌がらせのような空襲が連日行われた記録もあるので、その立場を逆転させただけと言えなくも無いです。


兵器レベルの改変ではB-17に衝撃を受けた日本が総力を挙げて開発した4発重爆「火龍」と、それをベースに75ミリ砲と40ミリボフォース砲、連装20ミリを搭載した空挺砲艦(ちなみに米軍の双発爆撃機B-25にも対船舶攻撃を意図して75ミリ砲を搭載したモデルが実在します)だけでなく、敢えて隼を捨てて鍾馗を一式戦闘機として採用したりといった、陸軍強化策があれこれ施されているのが楽しい。車両関係も史実より強化されている模様ですが、1巻ではほとんど出番が無いのでこれは保留。
1巻終盤の米軍爆撃機による大規模空襲に際しては空挺砲艦の75ミリ砲でB-17と空中戦を行ったりと、なかなかに無茶をやっているのも面白かった。
これも史実では大戦末期の本土防空戦で、対B-29の切り札として四式重爆に75ミリ砲を搭載したキ109と言う機体が生産されているので、あながち荒唐無稽ではありません。
この辺りのソツのなさは流石陰山先生と言ったところ。


超・空挺砲艦「火龍」〈1〉大逆転!ガダルカナル戦 (コスモノベルス)
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2009年09月23日

アブロ・ランカスター爆撃機―ドイツを崩壊させた英空軍機 鈴木五郎

アブロ・ランカスター爆撃機―ドイツを崩壊させた英空軍機 (光人社NF文庫)
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冒頭、ポール・ブリックヒルの「暁の出撃」に描かれたルール地方のダム破壊作戦からスタートし、第一次世界大戦前の航空機黎明時代に遡ってA.V.ロー(アリオット・ヴァードン・ロー)によるAVRO社の設立と躍進からランカスター爆撃機の完成、終盤はトール・ボーイ爆弾による戦艦ティルピッツ撃沈で掉尾を飾るまでが描かれた一冊。

同じ作者の「フォッケウルフ戦闘機」に比べると事実を捻じ曲げたような贔屓ぶりは控えめになっていて、比較的安心して読めるのが特徴。
とは言え、資料が古かったのか幾つかの記述ミスも散見され(ドイツ夜戦に搭載されたシュレーゲ・ムジークの件とか)、純粋に兵器のカタログスペックを見たい向きの人にはあまりお勧めできないですね。

しかし多少のエラーは知識で補正して、イギリス人の粘着質な大規模報復爆撃や黎明期の電子戦といった、機体運用の方を読み物として愉しむぶんには全く問題ありません。
特に上でリンクを貼った「暁の出撃」と併読すると、ランカスターと言う爆撃機の魅力がより伝わってくると思う。
個人的には先に「暁の出撃」を読んでからこちらを読む方が理解が深まる様感じます。
メインで読むにはやや物足りない、副読本と言う感じでしょうか。



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2009年09月07日

ジェット空中戦―朝鮮戦争からフォークランド紛争まで 感想 木俣滋郎

ジェット空中戦―朝鮮戦争からフォークランド紛争まで (光人社NF文庫)
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第二次世界大戦以降勃発した主だった戦争の中から空中戦にのみ焦点を絞り、戦後の航空機の発展史を俯瞰した一冊。
当たり前の事だけど戦後の軍用機についてはほぼ米ソの独壇場に等しく、それにフランスがかろうじて続いているという具合。
戦後のいわゆるジェット戦闘機は、大戦機に比べるとやや人気が落ちるきらいがありますが、これはきっと第二次世界大戦の僅か5年強の間に猛烈な勢いで世代交代と進化を繰り返した密度の濃さに原因があるんだろうなあと思っています。現代の戦闘機は初期型が生産されて以降改良に改良を重ねながら30年以上使用されているものも珍しくなく、それだけに変化が乏しいものに感じられてしまうのは否めない。
しかし、この本で取り上げられている、朝鮮戦争〜フォークランド紛争までの期間のジェット機については、第2次世界大戦におけるレシプロ機以上の、それこそカンブリア紀の生物大爆発にも等しい多様な進化を遂げているのに気付かされます。
シューティングスターやサンダージェットとF-15では、それこそ複葉機とP-51以上に設計思想にも運用思想にも隔たりがあって、大きな戦争こそ無くても断続的に勃発し続けた地域紛争を通して各国が常軌を逸した開発競争に邁進していのが感じられる訳です。

そういう事で、現代ではミリタリーマニアにしか余り馴染みのないゴールデンエイジの航空機達に思いを馳せる事ができる貴重な本書。個々の戦争や飛行機に対する掘り下げは深くありませんが、ジェット戦闘機なんてみんな同じ様な形で退屈だと思っている人にこそ読んでもらいたい。


なお、80年代以降のジェット機がどの国の機体もほぼ似通ってきた(双発双垂直尾翼もしくはカナード付きデルタの2パターン)のは、ある種の収斂進化です。陸戦兵器と違って国土の事情にあまり左右されない航空機は、どうしても進化の果てには没個性の領域にたどり着いてしまう宿命があるのかもしれません。



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2009年08月17日

征翼の守護神 装甲空母群、東へ 感想 内田弘樹

征翼の守護神 (ジョイ・ノベルス)
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日米開戦に先立って戦端が開かれた日ソ開戦初頭、ウラジオストック奇襲作戦においてソ連空軍の反撃で手痛い打撃を受けた赤城と加賀を戦訓とし、航空主兵論の台頭とあわせて装甲空母として完成された大和と翔鶴・瑞鶴の3隻を主力とした日本海軍が太平洋戦争に臨むと言うもの。

もともとこの作者さんは兵器を当時の技術水準内で改造する魔改造戦記を得意としていて、鉄獅子の咆哮戦艦大和欧州激闘録など、戦術レベルにおける改変がなかなかに面白い作品を発表しておられるのですが、その一方で大局的な歴史改変……つまり戦略的なレベルでの改変に関しては色々とアレな部分があったりします。
この作品では改造要素の比率が低めになっていて、シリーズ化を意識してか歴史の改変の比率を高める方向に果敢にも挑んでいるのですが、正直なところ突っ込みどころが多い。
当時の関東軍の戦力ではソ連と開戦した場合まともに戦えるとは思えない(モスクワ前面にドイツ軍が迫っている状況だとしても無理)し、日中戦争・日ソ戦争を引き摺ったまま日米開戦なんて正気の沙汰とは思えない。
作者もその辺のところは多少意識しているらしくて、ドイツがソ連を降伏させるだろうと他力本願の戦争を始めた云々と書いてますが…投げやりだなあ。


面白いのは数多の仮想戦記においてほとんど悪役専門扱いとなっているハルゼーを多少なり持ち上げているところか。
例のキルジャップ発言のおかげで日本においては軍人の資質以前の問題として、情緒的に嫌われまくっている彼ですが、作中世界におけるアメリカ側の航空主兵論者としての立ち回りには興味が湧いてきます。
この巻では真珠湾攻撃までしか描かれてませんが、今後どう歴史を変えていくかは何となく見届けたい。



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2009年08月07日

クリムゾンバーニング 4巻 燃える真珠湾 感想

クリムゾンバーニング〈4〉燃える真珠湾 (C・NOVELS)
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まだまだ続くよハワイ上陸戦。

武蔵の仕組まれた特攻という大ハッタリをかまして読者の度肝を抜いたくれた本作品ですが、しかし実質的な戦闘の方はというと、大量の鉄と火薬(と人命)を磨り潰しつつ着実ではあるけど緩慢に進行中という感じ。
日米共に投機的な要素は少なく、ガチに戦争してるのだから消耗戦の様相を呈してしまうのも当然といえば当然ではあるのですが。

ともあれ米軍はついに橋頭堡を築く事に成功し、いよいよ陸戦が始まろうかという緊迫感が漂い始めたのが良い。
1万メートル以上彼方の相手と巨砲で殴りあうのもまた良いですが、相手の顔が見える様な距離で原始的な戦いを繰広げる陸戦には人間の本質部分に訴えかけてくる何かがあります。
この巻ではただでさえオーバーテクノロジー気味の四式戦車に、74式戦車とメルカバ戦車の放蕩を載せた試作型なんかも登場して、鋼鉄成分が高まってきた!滾る!
思わせぶりに登場したバロン西の扱いも気になります。史実では硫黄島の戦いで英雄視されている人物ですが、アメリカすら赤化させるヒネクレ度数を誇るメイドスキー先生が素直に大活躍させたりするとは思えない。
まして、赤化大好きメイドスキー先生的にはおそらく悪しき階級社会の象徴でもあろうバロンの出自を考えると、死亡フラグが確定しているのかとすら思える。

…とは言え、残念ながらまだこの巻では戦車の本格的な出番ではなく、戦場の神――砲兵の戦いが中心。
砲兵そのものより弾着の観測を担当する側にやや比重を寄せて描いているバランス感覚は絶妙で、観測班あっての火砲というのが判りやすく書かれていたりしてそれはそれで愉しいのですが、やはり男は鋼鉄の車でドツキあってこそのもの。戦車戦が待遠しい。



posted by 黒猫 at 01:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦記・ミリタリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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