2011年01月14日

ジョーカー・ゲーム 感想 柳広司


4048738518ジョーカー・ゲーム
柳 広司
角川グループパブリッシング 2008-08-29

by G-Tools



昭和のきな臭い時代を舞台にしたスパイもの。
スパイものと言っても、リアルな諜報戦を扱う期待してはいけない。あくまで「スパイとは〜」という概念と作者の想像力とで描かれたミステリー調の短編メインであって、喩えるならば「武士道とは〜」という侍に対する概念のみで誇り高くハラキリなSAMURAIを描いたようなものである。
そう、侍ではなくSAMURAI。この作品で言うと諜報員や特務機関員ではなくSUPAI(SPYではない)。
要するに本格的なエスピオナージものではないという話。

だけど、物語としてはテンポの良さと一編あたりの適度な分量で非常に読みやすく、気軽に楽しめるものに仕上がっている。本格的なものではないと理解した上で、ファンタジーとして読めば結構面白かった。
続編は…気が向いたら読むかも。



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2010年11月27日

機械探偵クリク・ロボット 感想 カミ



機械探偵クリク・ロボット〔ハヤカワ・ミステリ1837〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
カミ 高野優
4150018375



ロボットの探偵クリクとアルキメデスの子孫の博士が何時間に挑むという、いわゆるバカミステリーの系譜に当たる作品。執筆されたのは第二次世界大戦直後の1946年という事で、なかなかにレトロな雰囲気があって好もしい。
設定は馬鹿っぽいが、よくある投げやりなオチの脱力系ではなくそれなりに練ったストーリー展開。
ただ、クリクが事件の解を暗号化した紙をプリントアウトし、それを解読して事件解決という流れが固定化しているのは…ある種の様式美と見るべきか。

ちょっと面白かったのはロボットの在り方で、一般的な日本人のイメージする人型ロボットは人を模した人に準ずるものであるのに対して、クリクは人型でありながらぎりぎり道具の範疇に収まっている。このあたりは文化の違いからくるものなんだろうか。もう少し自律型で博士と軽口を叩きあえる様なロボットだったらなあと思ってしまったのはきっと俺だけじゃない。



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2010年07月06日

二重標的(ダブルターゲット)―東京ベイエリア分署 感想 今野敏


二重標的(ダブルターゲット)―東京ベイエリア分署 (ハルキ文庫)
今野 敏
4758432252



日本版87分署といった感じの安積班シリーズ。
今野作品というと派手な拳法アクションや伝奇・SF要素なんかが結構多いのですが、この作品はそういったケレン味を排して、地に足の着いた捜査活動を描いているのが特徴的。
ただの87分署リスペクトではなく、舞台が日本国内なので日本にマッチした要素が盛り込まれていて、特に警察内での組織間の軋轢に主眼が置かれているのが面白いです。

警察小説であって厳密にはミステリーではないので、事件の謎解きに関しては普通に読み進めているうちにどんどん解明されていって、勿体ぶったヒキはありません。謎掛けをされているというよりは読者も捜査に参加しているような感覚。
そういう意味で凄く教科書的な警察小説と言えそう。
ドラマの安積さんに比べて良い意味でやや泥臭いのが好印象かな。
のんびりシリーズを追っていきたい。



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2010年05月05日

ダーティ・ホワイト・ボーイズ 感想 S・ハンター


ダーティホワイトボーイズ (扶桑社ミステリー)
Stephen Hunter
4594022006


本来なら「極大射程」と「ブラックライト」との間に挟まれていた物語で、一応はスワガー・サーガに含まれる作品らしいのですが、主人公は重犯罪者のラマー・パイとその従兄弟オーデルだし、それに対抗するのは警察官のバドだし、スワガーどこにも出てこないよねってな話で番外編扱いとなっている作品。
一応「ブラックライト」ではこの作品からの伏線が援用されていた記憶がありますが、ブラックライト読んだのもう何年も前なので忘れてしまいました。困ったもんだ。

でもって本作品ですけど、基本的にはラマーとオーデル、そして行きがかり上道連れとなったリチャードの3人の犯罪者による脱獄劇です。
主役が悪人ってな事でピカレスク要素はそれなりにあるのですが、暴力的な世界を描きつつも人間描写にもかなりのリソースを割いていて、単純にワルカッコイイ的な作品にはなっていないのがハンター先生らしいです。
ハンター作品恒例のヘタレキャラとして登場するリチャードもなかなか良い味を出していたと思います。もちろんヘタレに作者の大きな愛情が注がれている点もいつものハンター作品。
ただ、いつものハンター作品に比べると随分シニカルな部分が目につきましたが、これは作者自身の悪漢小説に対するスタンスを表しているんだと勝手に解釈です。

スワガーが出てこないので銃の薀蓄とかはあまりありませんでしたけど、緊迫感のあるストーリーは面白かったとですはい。


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2010年01月13日

宿闘―渋谷署強行犯係 感想 今野敏



宿闘―渋谷署強行犯係 (徳間文庫)
4198929424



これも『義闘』と同じくかつて『拳鬼伝』として出版されたものを改題したもの。
拳鬼伝では3巻の「鬼神島」に該当するのかな。2巻までしか読んでなかった上に昔の事で記憶が曖昧なので確信は持てない。
「義闘」に比べると辰巳の出番が飛躍的に増大していて、これなら改題後のシリーズタイトルである"渋谷署強行犯係"も決して看板に偽りありとは言えないと思った。
もっとも、後半の舞台は対馬なので渋谷違うやんと言われるとそれまでですが。


一撃で人を死に至らしめる謎の拳法と、芸能プロダクションの闇を物語の軸に据えて展開する今回の話ですが、前巻と同じく基本的に複雑怪奇な謎解きはありません。もとが拳法小説なんだからこれは仕方の無いこと。
一応物語最大の謎である殺人拳法の正体に関してはちよっと意外なものかも知れませんけど、作者得意の日本書紀ネタを駆使した解説がそれなりに楽しいので問題なし。

しかしながら、物語に微妙に伝奇風味な味わいを加味すべく後半は対馬に飛んだ筈なのに、その対馬編が何とも薄味に処理されてしまっていて終わり方もかなりぶつ切りに近かったのは残念。観光ガイドじゃないんだからさ。
本来なら東京編・対馬編と上下分冊にしても良かったのではなかろうかと思うけど、この作品が初めて世に出た当時の今野氏は現在のような"巨匠"では無かったので、なかなか難しいものがあったのかも知れません。

いずれにせよ前巻と同じ程度のページ数に、前巻と同じ程度の基本プロットを入れて更に対馬と言う新要素をねじ込んだのだから、あちこち切り詰めて帳尻を合わせるしか無い訳です。
決して悪くはない作品なんですが、もう少しページ数が欲しかった。




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2010年01月09日

老検死官シリ先生がゆく 感想

老検死官シリ先生がゆく (ヴィレッジブックス)
雨沢 泰
4863320655



1970年代半ばの共産主義体制化のラオスを舞台にした異色のミステリー。
こういう特殊な国を舞台をした作品の場合、大抵はアメリカ人や日本人がそうした国々で何らかの事件に巻き込まれて…というパターンが一般的なんですけど、この作品の場合主人公からしてラオス人だし被害者もベトナム人と、極めてローカル色が強いのが特徴的。
そういう意味である種の珍品。物珍しさありきで手に取った訳ですが、これが意外と(失礼)ちゃんとミステリーしていて驚いた。作者はタイ在住のイギリス人と言う事で、東南アジアのエスニックな情緒に常に触れているだけあって、雰囲気はよく出ていたと思います…もっとも、当のラオス人から見てどう感じるかはわかんないですけど。


ラオスというマイナーな国の、しかも共産主義体制下という極めて特異なシチュエーションは結構読者を選びそうですけど、「途上国」故の設備の無さと「共産主義」故の閉鎖性を上手くミステリーのガジェットとして織り込んでいて、ちよっとした陰謀劇として展開させているのが面白い。
なにより先進国には無い独特の長閑さと、なにやら剣呑な共産主義の組み合わせが不思議な味わいを醸していて、これはなかなか拾い物ではないかと思うわけです。
主人公シリ先生の霊能力は些かチート気味ではあるけど、東南アジアのスピリチュアルなムードを考えればこれはこれでアリかもしれないが…どうだろう。

続編も海外では出版されているらしいので、翻訳されれば読んでみたいですね。


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2010年01月04日

義闘―渋谷署強行犯係 感想 今野敏

義闘―渋谷署強行犯係 (徳間文庫)
4198928800



なんかこれどこかで読んだ事あるなと思ったら、氏が警察小説に本格的に乗り出す前に書いていた武道小説の改題版なんですね。一応は刑事である辰巳の存在が幾許かの警察小説要素を主張して無くも無いけど、基本的には格闘ものと思って読んだ方が良いかも知れません。

粗筋的には暴走族を専門で狙い半殺しにする謎の格闘家を追うと言うもので、犯人も割と早期に目星がつきますし、動機部分についても特別目新しいものでもなく、推理要素はあんまりありません。
反面氏の得意とする格闘要素に関しては割と濃い目でしょうか。もちろん氏が格等モノ専業に近かった頃の作品に比べるとライトになってはいますが、その頃の作品の場合格闘技マニア以外お断り的なきらいが無くもなかったので、この作品程度が一番バランスが取れているのかもしれません。


暴走族少年の格好に作品が描かれた時代を感じる(都会では所謂暴走族はほぼ絶滅したって本当ですかね)ものはありますが、少年法を盾に狼藉の限りを尽くす少年達という構図に関しては2010年現在の視点で見ても決して古臭い過去の話などでは無い所が、この作品を改題新版として再び世に出る理由の一端なのかもしれないと思ってみたり。
氏特有の淡々とした語り口ながらも、口で言っても反省しない奴は本来徹底的にぶちのめすべきだろと言う怒りに似たものは作品から感じることが出来た。
全く同感です。




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2009年12月14日

ハートの刺青 感想 87分署シリーズ4


87分署シリーズ第4弾。

今回の事件はハーブ河に浮かんだ女性の水死体を巡る事件。
事件のあらましそのものは結婚詐欺という古典的な代物なのですが、文通募集の雑誌(作中の時代は1950年代)を使って独り身の女性を募り、金を頂いた後は毒殺…と言う話、なんか物凄く最近聞いたような気がするんだぜ?
時代の変化で雑誌は婚活サイトに変わり、毒を盛るのが睡眠薬→練炭のコンボ技に進化したし、なにより犯人が男から女へと変化してしまったけど、大筋の手口はそのまんますぎてふいた。
いや、不謹慎な意味ではなくて、あまりに悪人の考える事は変化がないと言う事にシニカルにふいたという意味ですが。


この巻では87分署の刑事さん達よりも、キャレラの奥さんとタトゥー職人の中国人の二人が活躍しているのが特徴的かな。
気の短いあの刑事なんか最後まで足引っ張るだけの役だったし。
終盤連絡の行き違いで展開が錯綜する辺はスリリングで面白かった。今なら携帯電話で一発なんだけど、携帯が無い時代は結構大変だったんだよね。


ハートの刺青 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-4)
高橋 泰邦
4150707545



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2009年11月01日

戦場の画家 感想 アルトゥーロ ペレス・レベルテ


戦場カメラマンとして世界各地の紛争地帯を巡り、人の狂気を撮影し続けてきたフォルケス。
現在はカメラを捨て、地中海に面した田舎町の望楼に住み、一人で戦争の壁画を描き続ける日々。
そんな彼のもとにある日、もとクロアチア民兵のマルコヴィッチという男が現れる。
曰く、ユーゴ内戦の折フォルケスに撮影された事がきっかけで、セルビア人に囚われて拷問を受け、家族も失ってしまった。その復讐としてフォルケスを殺害しに来た…との事。
追いつ追われつのサスペンス的な展開になると思いきや、フォルケスとマルコヴィッチの6日間の対話を軸に、彼等が戦争の中と外で見て来た狂気を通して、人間の生きる理由と殺す理由を一種のメタ視点で綴る形而上学的作品。

全編を通して訥々とした語り口ながら、その圧倒的な閉塞感が凄い。
人の生死の瞬間を自らの人間性を排して撮影し続けてきたフォルケスの態度が、ありふれたヒューマニズムのフィルターを通さない生々しさを演出していて、決して目を逸らしてはいけない世界の現実の姿が垣間見える。
作者自身そうした現実に対して是とも非とも言及しないのは、作中のフォルケスと同じくもともと戦場ジャーナリストだった経験からなのか。もちろん是非を語らない事によって、事態を露悪的に見せる効果を狙っているのではあると思うけど。

終盤のフォルケスとマルコヴィッチの対峙と、そこから一気に雪崩落ちるような終末に関しては、様々な解釈が出来そうなのでちよっと感想をまとめにくい。
結局のところカメラマンもまた狂気を内包した存在に過ぎないと判断したのか、或いは恋人を失った時点で彼はもう死人同然の存在になっていたのか。
たぶん読んだ人の数だけの解答がある気がする。


重苦しい内容と異常な文字密度ながら、一度読み始めるとその吸引力は物凄く、自分自身が暗い塔の中で絵を描きながら語り合う二人の男を部屋の隅で眺めているような感覚に囚われます。
なかなか読み応えのある作品でした。たぶん絵画や写真の技法に詳しければもっと味わい深いものがある筈。


戦場の画家 (集英社文庫)
Arturo P´erez‐Reverte
4087605671



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2009年10月31日

武打星 感想 今野敏


ブルース・リーに憧れ、アクションスターを目指して香港に渡った若者長岡誠が、苦難の末に俳優としての第一歩を歩み始めるまでを描いた作者得意の拳法活劇小説。

ブルース・リーの死で沈み込んだ香港映画界が、新しいスターの誕生で再び盛り返し始めた1980年代初頭を舞台としていて、子供の頃夢中で見たジャッキー・チェンやユン・ピョウなどのカンフー映画を思い出してなんだか和んだ。
そういえばジェット・リーことリー・リンチェイがデビューしたのもこの頃でしたっけ。

そんな個人的な思い入れはともかくも返還前の香港が舞台と言う事で、香港ノワール映画さながらの猥雑かつ無法な香港の姿が描かれていて、これがまた非常に興味深い。
今野氏の作風上多少の誇張があるのかもしれませんけど、今でこそ近代的なビル街となっているもののかつては東洋の魔窟なんて呼ばれた九龍寨城とかはどんなに誇張しても誇張しきれないほどにリアル無法地帯だったらしいですし、香港の産業はすべからく黒社会の影響下にあったなんて怖い話も夙に耳にしておりましたので、実際の所も小説の中並みに、もしかしたらそれ以上に怖い裏の面を持っていたのではなかろうかと思ったりもします。
日本だって幾つかの産業は暴力団と切って切れない関係にあるといいますし。

その辺を踏まえて読むと、誠を取り巻く環境が醸し出す底知れぬ不安感が読者にもダイレクトに伝わって来て、登場人物たちの台詞の一言一言が意味深に思えて怖い。
最後の締めは割と大団円でしたけど、それに至るまでの誰が敵で誰が味方かすらわからない居心地の悪さは特筆ものです。
ノワールものと言う程に血煙と硝煙臭が立ち込めている作品ではありませんが、かつての香港が持っていたらしい混沌とした雰囲気と、なかなか先が読めない展開は秀逸でした。最後やや強引にまとめた気もするけど、変に鬱エンドにされるよりはいいと思った次第。


武打星 (新潮文庫)
4101321558



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2009年08月04日

麻薬密売人 感想 エド・マクベイン 87分署シリーズ3


麻薬密売人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-5 87分署シリーズ)
中田 耕治
4150707553



警察小説の古典、87分署シリーズ第3作目。
冬のアイソラを舞台に、移民問題と10代に浸透しつつある麻薬問題を描く内容は、前2作に比べるとやや社会派な雰囲気。移民と麻薬という組み合わせに関しては、この作品が描かれてから50年経つ今でもリアルタイムでアメリカ…だけでなく最近は日本なども直面している大きな問題の一つであります。

今回の作品には麻薬密売少年グループのリーダー格としてゴンゾという存在が仄めかされ、そのゴンゾなる謎の男を追う展開が一つの謎解き的要素になってはいますが、多分大抵の人はゴンゾの正体にすぐ気付くでしょう。
そういう意味で謎解き要素に関してはかなり薄味と言わざるを得ない。

この点についてはたぶん、作者は社会問題を作品を通して訴えようと言う意図の基にこの作品を書いたから、その意図をストレートに伝わるように敢えてミステリー的な部分を排除したのではないかと思ってみたり。


相変わらず海外ものには珍しく季節の移ろいを感じさせる情感溢れる描写は健在ですし、ヘミングウェイがどーのこーのという捻りの効いた会話も面白かった。
キャレラがゴンゾに撃たれて死にかけたりとか見所もそれなりにあるし、まあ楽しめたですかね。



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2009年05月02日

飛鳥井全死は間違えない 感想 元長柾木

飛鳥井全死は間違えない
元長 柾木
4048736191



ひところ流行ったラノベ調ミステリー。その中でも本作品はかなりの変異種と言えます。

元長先生の作品ではヤクザガール・ミサイルハートの持つ圧倒的な暴力性に魅了された記憶があるのですが、レーベルの消滅によって続巻が出る事無く(最近コミカライズとして復活したみたいですが未読)寂しい思いをしていたので、手に取ってみた次第。

この作品、元長節とでもいうべき破天荒な暴力性は、確かにあります。
しかしそれがヤクザガールのような直截的なものではなく、迂遠なロジックの暴力として描かれているのがどうにももどかしい。
近年ロジカルに物事を語ることがブームとなっていますが、ここまで無駄にロジックを展開されてもリーダビリティを損ねるだけじゃないのか?というレベル。
そして思いっきりロジックを展開した割に、飛鳥井全死の持つ人間のメタテキストを読む能力など物語に深く関わってくる部分は論理ではなく感覚的に描かれている…おそらく、ロジカル思考ブームに対する一種露悪的なアンチテーゼとしてやっている節はあるんですけど、正直やりすぎ。
また、全死やその相方?で殺人鬼の香織(苗字)等には、アウトサイダーとかマージナルと言った二つ名があるのも、かなり狙っている感じですね。


セカイ系とかなんとか以前に作品自体が壮大な中二病釣りとなっていて、たぶん作者的にはニヤニヤしながら楽しく書いたのだと思いますが、釣り針と糸が見えてしまうと醒める。
帯には美少女を攻略云々とか書かれていますけど、それすらも釣りとしか。攻略には間違いないんだけど、ギャルゲ的な甘いものを連想すると香織君に石で後頭部をどつきまわされます。


…どうも大塚英志氏も関わっているらしくて、その面で香ばしさについては真性な部分もなきにしろあらず。
真剣に読むものでもないですが、変わったものが読みたいと言う欲求には応えてくれる作品と言えます。


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2008年09月08日

暗夜 志水辰夫 感想

暗夜 (新潮文庫)暗夜 (新潮文庫)
志水 辰夫

新潮社 2003-01
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主人公榊原俊孝が弟の死の謎を探るうちに、中国と日本の間に横たわる古美術品の密売ネットワークの存在を知り、どんどんと深みに嵌っていくという、独特の読後感のある作品です。


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2008年02月10日

影と陰 イアン・ランキン

影と陰 (ハヤカワ・ミステリ文庫)影と陰 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
イアン ランキン Ian Rankin 延原 泰子

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2007年12月16日

紐と十字架 イアン・ランキン

紐と十字架 (ハヤカワミステリ文庫)紐と十字架 (ハヤカワミステリ文庫)
イアン ランキン Ian Rankin 延原 泰子

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2007年12月13日

天帝のつかわせる御矢 古野まほろ

天帝のつかわせる御矢天帝のつかわせる御矢
古野 まほろ

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2007年10月20日

地底獣国の殺人 芦辺拓

地底獣国(ロスト・ワールド)の殺人地底獣国(ロスト・ワールド)の殺人
芦辺 拓

講談社 2001-06
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2007年10月03日

2007年09月21日

水銀奇譚 牧野修

水銀奇譚 (ミステリーYA!)水銀奇譚 (ミステリーYA!)
牧野 修

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2007年07月13日

六とん3 蘇部健一

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蘇部 健一

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