2011年04月28日

ナイトランナー―ボディーガード工藤兵悟 今野敏 感想

ナイトランナー―ボディーガード工藤兵悟〈1〉 (ハルキ文庫)
今野 敏
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元傭兵として世界の戦場で戦ってきて現在はボディーガード稼業を営む男と、アメリカに拠点を置く急進的な環境保護団体の元メンバーの女性とが繰り広げる必死の逃亡劇。
逃亡というと山中に身を隠したりするのが定番なんだけど、この作品は全編通して首都圏の都市部のみで逃亡劇を展開させているのが新鮮だった。
都市は深い山の中に匹敵するほど身を隠す場所が多いという視点はなかったなー。

敵はCIAで、しかも北朝鮮を焚き付けて核戦争を誘発させるなんて陰謀は些か大風呂敷に過ぎるが、そうしたハッタリに対して逃亡劇そのものや格闘シーンなどはいつもの今野先生らしい緻密さが感じられて、安心して読める。
クライマックスでのひっくり返しも含めてなかなかよく出来た作品だった。
個人的には黒崎氏の過去を知りたい。


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2010年04月09日

さらば長き眠り 感想 原りょう


さらば長き眠り (ハヤカワ文庫JA)
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沢崎シリーズ事実上の完結編。
第一作から一体何年かかったのかなんて気にしてたらいけないので、その辺には触れません。

結構ページ数がある上に、複数の小さな事件が関係性を持ちひとつの物語の流れを作り出しているという緻密な構成のために読むのにはなかなか根性がいります。
100Pぶんくらい一気に遡って読み返さないと細かな伏線が把握しきれなくなるなんてザラ。そういう意味では非常な力作であると同時に、難物でもあります。

もっとも、この作品は所謂本格ミステリー系ではありませんので、伏線や事件の謎と言った部分はあまり気にせず、流れるまま流されるままに読んでもたぶん問題なかったかも知れません。
ハードボイルドは主人公とそれを取り巻く人々の心理模様こそが主題で、謎解きはあくまで登場人物たちを引き立てるためのガジェットです。


前の巻を読んだのももう随分前なので若干記憶が曖昧になっていますけど、初めて読んだ沢崎シリーズ第一巻『そして夜は甦る』当時に比べると若干沢崎の言動が丸くなったように感じるのは気のせいだろうか。当時は和製チャンドラーだなあ、という印象があったんですけど、本書ではタイトルにこそチャンドラーへのオマージュがあるものの、それ以外は完全に沢崎であり原りょうであるという感じ。
大仰さがなくなり、若干素直じゃないおせっかい焼きのくたびれた中年男という現代の日本にいても違和感のあまりないキャラクター性へと辿り付いている気がします。
せっかくこなれてきたところで完結というのも勿体無い気がしますけど、この巻で正式に事務所の主が渡辺から沢崎変わったので、シリーズとしては完結しても沢崎の物語はここからが真のスタートなのかも知れません。
新沢崎シリーズも始まっているようですが、まだ旧沢崎シリーズに読んでないのタイトルが一つあるので、まずはそっちを読むべきですかね。




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2008年02月05日

約束の地 ロバート・B・パーカー

約束の地約束の地
ロバート・B・パーカー 菊池 光

早川書房 1987-04
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2008年02月03日

硝煙に消える ジョージ・P. ペレケーノス

硝煙に消える硝煙に消える
ジョージ・P. ペレケーノス George P. Pelecanos 佐藤 耕士

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2007年11月10日

誘拐 ロバート・B・パーカー

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誘拐 (ハヤカワミテリ文庫―スペンサー・シリーズ)誘拐 (ハヤカワミテリ文庫―スペンサー・シリーズ)
ロバート・B. パーカー Robert B. Parker 菊池 光

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2007年09月29日

蒼ざめた王たち ロバート・B. パーカー

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蒼ざめた王たち蒼ざめた王たち
ロバート・B. パーカー Robert B. Parker 菊池 光

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2007年06月02日

ファイナル・カントリー ジェイムズ・クラムリー

ファイナル・カントリーファイナル・カントリー
ジェイムズ・クラムリー 小鷹 信光

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2007年03月19日

わが手に拳銃を 高村薫

「いつか利子をつけて返すよ。僕らの利子は高いんだ。年利三割の複利でどうだ? 払えない場合は、命で返す」


わが手に拳銃をわが手に拳銃を
高村 薫

講談社 1992-03
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2007年01月27日

マルタの鷹 ダシール・ハメット

「もしきみが首を吊られたら、忘れずにいつまでも覚えていてやる」


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2007年01月07日

私が殺した少女 原りょう

「人間のすることはすべて間違っていると考える方がいい。すべて間違っているが、せめて恕される間違いを選ぼうとする努力はあっていい」



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2006年12月11日

さらば愛しき女よ/レイモンド・チャンドラー

女と言うものは、嘘を言うもんだぜ


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2006年10月13日

ポットショットの銃弾/ロバート・B・パーカー





荒野の七人をモチーフにして、西部の田舎町に巣食う無法者集団とスペンサーとその仲間達との戦いを描いた、シリーズ中異色作。
実はあの人が・・・というどんでん返しは用意されているが、予想の範囲内です。
初登場時から何か言動が変でしたから。

本作のセールスポイントはこれまでに仲間として、あるいは敵として登場したキャラクターがスペンサーの下に集まり、無法者集団に立ち向かうという講談調の展開。
スペンサーワイワイワールドとでも言いますか、どちらかというとファンサービスの要素が強いかもしれません。
中間達というのが、正義や友情の為ではなく、ドンパチやりたいだけという面々だったりするのが実にスペンサーらしい点です。ホークが霞んで見える(笑)。
中盤はひたすら仲間集めの為にスペンサーが東奔西走する展開となりますが、ここでページ数をかなり消化してしまったのか終盤のドンパチがやや物足りない感じでした。
折角一癖ある仲間を集めて、折角渋い銃器を集めたのに・・・。
でもスペンサーとガンマン達の部活動めいた合宿?は結構面白かったです。この作者体育会系のノリ好きですね〜。


毎度の事ながらスペンサーの銃へのこだわりはなかなかで、仲間達がグロック等最近の銃に乗り換えていく中未だにS&Wの5連発リボルバー(チーフスペシャル?)を頑なに使い続ける点や、今回総勢約40人の無法者達と戦う為に集めた武器の中から敢えてレバーアクションのウインチェスターを選ぶ点とか、渋いというのを通り超えて偏屈の域に到達していますね。

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2006年10月06日

そして夜は蘇る/原 りょう




日本にはハードボイルドと呼べるものはないのか。
今まで国産のハードボイルドと銘打った作品を色々読んできましたが、裏切られるケースが殆どで、もはや日本人にはハードボイルドは書けないという諦観めいたものを持つに至ってしまいました。
だってハードボイルドとか言いながらただのバイオレンスだったり、濡れ場ばっかりで一体どこが自己の規範に従って生きるタフな男やねんそれただの盛りのついた犬じゃない!(ルイズ様口調で)みたいなのばっかりですよ。そりゃ暗澹とした気分にもなりますて。

そんな折に知り合いに進められた本書、感想はというと・・・。
間違いありません。完全にハードボイルドです。
海外の元祖ハードボイルドとの違いを挙げるとすると、ややプロットが込み入っていてミステリー要素が強くなっている程度でしょう。このミステリー要素に関しても、下手なミステリーにありがちな、誤読を誘う要素を随所にばら撒くものではなく、ロジカルに組まれた謎を段階的に展開させていくという、悪く言えばやや理屈っぽい構成となっています。
また、硬質な地の文ではありながらも、情景が浮かんでくるような緻密な描写や全編を通して冷たい雨が降りしきるようなムードもとてもデビュー作とは思えない完成度です。
ただ惜しむらくは主人公に浅からぬ因縁があり、ある事件を境に失踪、以後時々事務所近辺に出没しているという、かつての事務所所長の存在意義があまり無かった事。
ものすごく思わせぶりなキャラクターなんですけどね。
シリーズものなのでもしかすると後の巻にて何らかの役回りを演じているかも知れません。

気になる点というか、やっぱり日本人だなあと思った点。
事件に深く関わる小道具として登場する拳銃が「銃身の長いルガーP08」なのですが、銃身の長いルガーと言うとアーティラリーモデル、またはランゲ・ラウフと呼ばれる8インチ砲兵モデルだと思われます。砲兵モデルのルガーはアメリカのガンマニアの間ではものすごいプレミア銃(普通のルガーも結構プレミア)で、目玉の飛び出す様な価格で売買されていますので入手は極めて困難な上に、ルートが限られる=足が付きやすいという図式が成立してしまう筈です。
犯罪に使うにはこの上なく不向きな拳銃なのですが、やっぱり日本ではルガーとかワルサーがキャッチーなので登場したのでしょうね。

なお巻末に、本作の事件から2年後、主人公沢崎が事件に関わったある人物から取材を受けるという形式でハードボイルド(主にチャンドラー)についての所感を述べる短編が収録されており、沢崎の口を借りて作者なりのハードボイルド観が語られるのには興味深いものがありました。
この沢崎シリーズ、全巻読んでみたいと思います。
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2006年10月01日

失投/ロバート・B・パーカー



スペンサーシリーズの3作目。
レッドソックスのエース投手マーティの八百長疑惑を秘密裏に調査して欲しいとの以来を受けたスペンサーがいつもの如く料理の薀蓄を垂れ流しつつボストンを駆け巡ります。

ストーリーは完全な一本道で、配置されるべき場所に配置されるべき人物が配置されているという感じ。うかつに本筋に触れるだけで話の全容が見えてしまう位です。
もっとも、私立探偵を主役としながらもこのシリーズは謎解きを主眼に置いた本格派ミステリーとは性格が180度違うものなので特に問題はありませんが。

この巻からスペンサーの固ゆで自己陶酔が露骨になってきますが、調査の為、そして何より身を守る為とは言え結果として暴力に訴えてしまった自分の行為に関して悩み、恋人のスーザンについ弱音を漏らしてしまったりと、人間らしい側面が見え隠れし始めるのも特徴です。
自分が思っているほど格好の良い人間ではない・・・という事ですが、相棒にしてツッコミ役のホーク登場前なので、セルフツッコミ形式で自省している姿はやや痛々しいですね。
それでも固ゆで男の証、マイ規範に則って行動するという点は終始貫かれている(それ故に悩み多き主人公なんですが)ので、ハードボイルド作品としては二重丸でしょう。
件の八百長疑惑投手も、事情はあれどなかなかの固ゆで男でした。

ところで作中でウォリィが所持していたM-16、口径7.62mmって一体ナニ?確かAK用の7.62mmが使用できるモデルがナイツ社辺りから限定で出ていた気がしますが、執筆当時にそんなものあったとは到底思えません。AR-10の間違いですかね。
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2006年07月20日

裁くのは俺だ/ミッキー・スピレイン

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去る7月18日、ハードボイルド作家のミッキー・スピレイン(本名/フランク・モリスン・スピレイン)氏が逝去されました。私立探偵マイク・ハマーシリーズに代表される数々のタフガイを生み出してきた氏の逝去は多くのミステリー&ハードボイルドファンを悲しませました。
僕も非常に残念です。

そこで今回は本棚を漁って、氏のデビュー作でもある「裁くのは俺だ」を読み返してみました。
同名の大藪春彦氏の小説とは直接的な関係はありません。

発表されたのは1947年と実に60年近く前の作品でありながら、世の悪の構造に関しては現代とさして変っていないという事実。
その割に現代では正義の多様化や人権の拡大など社会全体のインポテンツ化で犯罪者に優しい社会となってしまっており、そんな時代だからこそマッチョズム全開で悪は断固として許さないハマーの姿が輝いて見えます。

ハマーの親友であり、戦争中には彼の命を救ってくれた事もある警官のジャックが何者かに殺害された事から事件は始まります。
凶器は.45口径の拳銃。
親友を殺された怒りからハマーは警察をあてにせず、自らの手で犯人を射殺するべく捜査を開始。
容疑者は次々と浮かび上がるものの、ハマーが接触する片端から殺害されていきます。
これはもう手詰まりかと思えた時、ある小道具が鍵となって一気に解決へと雪崩れ込んでゆく展開にはカタルシスさえ感じさせるものがあります。
そして真犯人との対面、そこで訥々と語られる謎の解明は、ともすれば退屈になりがちなシーンでありながら、ハマーの語りと同時進行で描かれる真犯人の動作によって、まるで綱渡りの様な緊張感が持たされている点も新鮮。

スピレインといえば暴力とセックスというイメージがありますが本書ではベッドシーンはありません。
後のシリーズより謎解きの比重も高いので、(後の作品では謎を推理するよりも怪しい奴は片端から殴り倒して力技で謎解きしている感も・・・)ミステリーとしても楽しめます。
偶然と言うプロットに頼った面もなきにしろあらずですが、偶然というプロットを多用しつつ伏線や全体の構図に齟齬が生じていないのは流石と言うべきでしょう。

26冊目。
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2006年07月12日

初秋/ロバート・B・パーカー




スペンサーシリーズ中では最高傑作との声高い本作、出版されてから結構立ちますが未だに版を重ねられているというある意味化け物の様な作品。

内容はいわゆる「育てもの」で、自分勝手な両親に半ばネグレクトされている少年をスペンサーが預かって"一人前の男"として生きてゆく術を教えるという内容です。

スペンサーの元に舞い込んだ依頼は、離婚した夫の元から息子を連れてきて欲しいというもの。普段は派手な銃撃戦までやらかすスペンサーにとって、簡単な仕事のはずでした。
しかし件の少年は無気力で自閉症気味で、そしてそんな息子をあくまで互いの争いあう際の道具としてしか見ていない両親。
しかも、少年の父親はさる縁で後ろ暗い連中とも付き合いがあり、スペンサーに対して色々な妨害工作を仕掛けてきます。
こんな親の下においては置けない、少年を少しでも早く自立(人生の目的を見出し、自分自身に信念を持てる男になるという意味です)させようと奮闘するスペンサー。
彼は大抵にしておせっかい焼きなんですが、今回はそのおせっかいが物語の核となっています。
まずは少年の体を鍛える為のジョギングに始まり、ボクシングを教えたり二人で小屋を建てたり、時にはバレエを鑑賞したり。そんな中で少年は逞しくなってゆき、人生の目的としてバレエダンサーの道を見出してゆきます・・・。

タイトルの「初秋」とは、少年は今季節で言うと初秋の辺りにいる、やがて厳しい冬が訪れるまでに一人前の男にならなくてはならない・・・というスペンサーの思いから付いたタイトル。作中でスペンサーによって語られる「人に頼らず、自分の力で生きていく」という内容の言葉の数々、それは作家と言う究極の自己責任世界で、巨匠としての地位をペン一本で築き上げた作者の言葉でもあるのかも知れません。いい歳した僕ですが、本作は本当に身につまされる部分の多い作品でした。

余談ですがこの作者、時々銃に関する描写が妙に細かい時があります。寸法やスペック云々ではなく使い方の部分に関してで、例えば本書ではスペンサーのS&Wの.38口径のリボルバー、これ普段は一発弾を抜いて空にしたホールをハンマー位置にして携帯している描写があります。リボルバーは不意の衝撃でハンマーが雷管を叩いて暴発することがあるので、こうして空のホールをレストポジションにするのが安全上の措置なんですが、こんな描写は銃が日常に入り込んでいるアメリカならではだなあと変な部分で感心しました。


23冊目。
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2006年06月27日

トラブルはわが影法師



巨匠(らしい)ロス・マクドナルドの著作群の中では比較的地味な位置付けの作品。
第二次世界大戦中の1945年、海軍少尉のドレイクがハワイでの休暇中に巻き込まれた殺人事件。容疑者は友人の部下でへクターという黒人。
本土へ戻ったドレイクはへクターが脱走した事を知らされ、彼の妻のもとを訪ねるが、へクターの妻もまた死体と化していた・・・。
この主人公ドレイク少尉は余程運が悪いらしく、行く先々で事件に巻き込まれる。
南部に向かう列車内でも事件に遭遇し、また彼自身殺されそうになる。
それらの事件を繋ぐ「ブラック・イスラエル」なる急進的黒人結社の存在。そしてその結社を影から支援する投資家と、米国内の情報収集を目論む日本軍の影。

結論から言うと、ミステリーとスパイものを足してみた感じだけど、どうも上手くいってない。「ブラック・イスラエル」なる結社の本体は最期まで見えず仕舞いだったし、日本軍の動きも殆ど描写されていない。結局は個人的感情による事件部分が主で、ちょっぴりスパイ風味のミステリーと言ったほうがいいだろう。

ただ謎解き部分は2重3重にプロットが絡み合わせてあって、なかなか凝った構成だった。大陸横断列車内でまさに影法師の様にドレイクに付きまとう謎の男の存在などは会話が主で退屈しがちな列車内でのシーンに良い緊張感を持たせてくれたと思う。この辺りはさすが巨匠と言った所か。
ちなみにその男の正体は、同じく事件を追うFBIの捜査官だった訳だが、正体が明らかになって以後最期まで登場しなかったのは残念。過去の大事件にも関っていた捜査官らしいだけに何か活躍があると思っていたんだけど。

国際スパイものが好きな人には結構物足りないと思うけど、ミステリーとしてはよく出来ているというのが印象でした。

そうそう、物語のキーワードは"ブラッディマリー"です(謎


レビュー15冊目。
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2006年06月20日

ゴッドウルフの行方



漫画「ジオブリーダーズ」の影響で読み始めた・・・というと何やら情け無い感じたが、きっかけなんか何でもいい。
ボストンの私立探偵シリーズ、それがこのスペンサー・シリーズだ。

本書は第一作目とあって、まだまだキャラクターの造形が固まりきれてない部分が多々ある。美食家(ただの食道楽)で、皮肉家で健康マニア・・・そんなスペンサーの基本設定は出来ているものの、この手のハード・ボイルドものには欠かせない要素――つまりタフでマッチョな部分が、どこか形式的すぎるようだ。

シリーズが進むとスペンサーの「マッチョ」はやや空回り気味のものになってきて、実際には恋人の尻に敷かれている雰囲気が漂い、それがまた微笑ましいものとして描かれるのだが、第一作目ではまだまだ「固い」。
要はハードボイルドってツンデレに通じるものが有るような気がするんだが、(多分気のせい)この時点ではツンが勝ちすぎ・・・位丈高なマッチョズムの方が強いという事だ。

物語は盗まれたゴッドウルフの写本を巡ってスペンサーがボストン中を駆け巡るものだけど、まだ恋人のスーザンや相棒のホークは登場しないので基本的にはスペンサー一人で数々の危機に直面、処理しないといけない。それ故に後の巻のスペンサーよりも硬派な雰囲気があるのでは・・・とも思う。
後の巻のホークとの嫌味の応酬もシリーズとしての魅力のひとつではあるけど、ひとつの独立した物語としてはこの1巻が一番練りこまれているかもしれない。


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