あちこちの書評やアマゾンでの評価をみて以前から探していたのがこれ。
もともと銃アクションは好きなので色々読んでいたんだけど、最近は海外モノが好み。と言うのも日本人作家の銃が出て来る作品はどうもモデルガン臭いというか、銃のカタログデータには詳しくても肝心の「実感」があまり感じられないから。
こんな事書いてる私自身撃った事があるのかというと海外旅行で観光客相手の射撃場にて多少撃った経験しかありませんので実感なんて書くのもおこがましい気がしなくもないけど、ほら、何と言うか、感覚的に感じるものがあると思うんですよ。
国産モノは銃の抜き方とか、マグチェンジの描写とか、形ばかりに凝っている割に銃身の加熱やブラストが及ぼす影響とか発砲炎で眼がくらむとか、そういった事に関する描写がものすごく「薄い」気がする。
余談はさておき、今回は第一部を取り上げます。ちょうど3部構成なので3回レビューでちょうど良い感じだと思います。
主人公グレイはベトナム戦争で「ホワイトスター」と恐れられたスナイパー。
100人近い敵を撃ち倒してきたと言う設定です。
というか、スナイパーの任務を考えるとその数はありえないでしょーと言う感じ。
「ホワイトスター」と言う渾名の由来は常に倒した相手の側、若しくは狙撃ポイントに紙で折った星をサインとして残して行ったからだと言うけど・・・そんな自己顕示欲の強い人間にスナイパーが務まるとは到底思えない。
待機から狙撃、撤収に至るまで完全に姿を消して痕跡一つ残さないのがスナイパーだと思うんですが・・・。
そんなグレイは銃を捨て、現在は連邦検事補として生計を立てている。
この手のアクションもので主人公がホワイトカラーなのは結構レアな気がしますね。そもそもどういう経緯で検事補になったのかも良くわからないけど、離婚後東洋人の養子三人を迎えて、決して裕福ではないものの幸せに暮らしている。
事件はグレイの関った公判で無罪判決を勝ち取って意気揚揚と演説をぶっていたマフィアのボス、デ・サロが突如凶弾に倒れる所から始まる。狙撃現場に残されていたのは赤く塗られたライフル弾の薬莢――。
続いてまたしてもグレイの関った公判で被告が狙撃され、例の如く赤い薬莢が残されていた。
犯人はグレイの側にいる人間を無作為に狙撃しており、まるでグレイを挑発している様な感じ。
親友のコウツ刑事と犯人を追い始めたグレイはロシア人スナイパーヴィクトル・トゥルソフにたどり着く。彼は先の大戦に於けるスターリングラード攻防戦の英雄で、(多分モデルはヴァシリ・ザイツェフだと思われる)年老いた彼は既に銃を持てる状態ではなかった。しかし彼の息子二コライもまたスナイパーで、どうやら犯人はニコライらしい。
個人的にはザイツェフと戦って欲しい気もするが、「ソ連人民最大の英雄」を敵として登場させる勇気は作者には無かったようです。
ともあれ、犯人の目星は付いたので罠を仕掛けておびき出す計画を立てるが、相手は更に一枚上手でグレイは家政婦のミセス・オーランドを死なせてしまう。
敵の目的はどうやらグレイとの対決であり、彼を怒らせて再び銃を取らせる事が目的だった。
・・・というのが第一部。
登場人物何人か端折ってますが、この脇役達もイカレ気味で良い味してます。
もとグレイのパートナー(観測手)は奇天烈なコレクションをしている変人だし、一応ヒロインのエイドリアンは柔道の達人にして微妙にツンデレだし、三人の養子もなんかピント狂ってるし。
設定自体もピントがずれているせいか、全ての要素が渾然一体として独特のムードをかもし出してます。
・・・これは当りの悪寒。