2009年05月08日

人類は衰退しました 4 感想 田中ロミオ

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)
山崎 透
4094511040



今年のゴールデンウイークは忙しさのあまり妖精さんが見えたぜ…!

という訳で、妖精さんとプチ駄目人間な「わたし」が繰り広げるファンタジックでメランコリックでエキセントリックなメンヘル物語第4弾。
決してメルヘンではありませんし、メルヒェンでもありません。メンヘルです。ソコントコヨロシク。


今回も相変わらずのノリで、そこそこ事件らしい事件は起こっているものの、それら複数の事件が密接に関係していて、バラバラのピースを嵌め合わせると巨大な陰謀や世界の危機が見えて来たりする事はまったくありません。
食糧難に陥ったクスノキの里で不気味な動くメリケン鶏肉と壮絶チェイスを繰り広げてみたかと思ったら、湖の中に浮かぶ小島でわたし王国を築いてみたりと、いい感じにノリ任せ。
作者ももしかしたら妖精さんなんじゃなかろうか。

後半の島に王国を築く話は個人的に結構好きですね。文明創造シミュレーションみたいな楽しさがあって。
チョコレートを作り出すために恐ろしい苦労を払うあたり、無から有を生じせしめる事の困難を感じた。
僕も妖精さんと島で王国を作りたいなあ。そして王様になって…いかんいかん、これは罠だ。
そんな厭世的な妄想に浸っていたら、人として大切な何かを見失ってしまう。

本当、1巻の頃は作者の記述どおり妖精さんは人類に代わる地球の主だと信じていたのですが、その不可思議な神出鬼没ぶりを見るにつけ、メンヘル的な意味での妖精さんの方ではなかろうかという疑念ばかりが強くなっていく。
作者のあとがきを読むとそれはもう確信に変わってしまう訳で、まったく、恐ろしいトラップだよ!
僕の頭の上にも鬱雲がかかりそうです。

人類は衰退しました 1巻感想
2巻感想
3巻感想

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2009年04月24日

悪魔のミカタ 9巻 It ドッグデイズの終わりかた 感想 うえお久光

悪魔のミカタ〈9〉It ドッグデイズの終わりかた (電撃文庫)
うえお 久光
4840223785



三束&美樹愛の逃避行後編。
生まれた時から背負わされるしがらみにがんじ絡めにされた姉と、そこから自力で逃げ出そうとした妹の宿命の対決も遂に完結。


物語としては結構起伏に富んでいて、今までに無いスケールの大きな活劇も展開され非常に面白いものに仕上がっています。
また誰かが笑えば誰かが泣くというこの世界の基本原則――等価交換の法則(笑)――をやや力技ながらもコーンウオークという闖入者の存在によって皆が笑える結末に持ち込んだのも見事。
特にハッピーエンドに至る直前にまさかの鬱エンドかとミスリードさせたのは、その後のご都合的とも言えなくも無い展開を素直な気持ちで祝福させるためのステップとしてはこの上なく効果的でした。
まったく、巧いな。


なんですが、ガジェット部分の描き方は結構言いたいことが沢山。
今回の物語の軸となる縹一族ですが、武器の売買にも手を染めていると言う事で拳銃から武装ヘリまであらゆる武器を投入して派手な戦闘?を展開してくれます。
それは別に良いと言うか、むしろそう言うハッタリは好きなのですが、作者の描写がかなりアレなのは萎えた。

例えば縹組の雑魚が持ってる短機関銃(原文まま)を数ページ後には機関銃と書き、またその数ページ後にはマシンガンと表記する統一感の無さ。
給弾ベルトがどうのこうのという描写があるのでたぶん作者的には軽機関銃の事を言いたかったのではないかと思いますが、あやふやな書き方するなら敢えて短機関銃だなんだとカテゴライズしない方が良いと思う。短機関銃と軽機関銃では使用する用途も弾薬も全然違う訳ですし。
また、ミサイルがジェットで飛ぶような表記もありますけど、どこかの「報復兵器」ならともかく大抵はロケット・モーターで推進するものですし、一番酷いのはミサイルに体を縛り付けて相手に向かって飛ぶとか、これはハッタリ云々以前にギャグとしてもどうかと思う。重量バランスが崩れて発射と同時に地面に激突、壮大な犬死にとなるのは必定。

別に表記のエラーを、専門用語ふんだんに使って書きなおせとは言いません。
そんなのやられたら読みにくくて仕方ないし、物語の興を削ぐ事甚だしいだけです。
別に短だろうが軽だろうが重だろうが機関銃は機関銃。しっかりカテゴリ別けする自信が無いんなら単に「機関銃」と書くだけで言いです。それでも充分伝わるんですから。むしろ変に専門用語らしきものを入れようとして失敗したという感じでしょうかね。
電撃随一のミリオタと思われる時雨沢先生にでもいろいろ教えてもらってから書けばよかったかも(笑)


まあ、気になるのはそう言う部分だけで、物語そのものは上に書いたように面白かったです。
しかしまだIt編は続くんですねえ。


悪魔のミカタ・魔法のカメラ感想
悪魔のミカタ・インヴィジブルエア感想
悪魔のミカタ・パーフェクトワールド平日編感想
悪魔のミカタ・パーフェクトワールド・休日編感想
悪魔のミカタ・グレイテストオリオン感想
悪魔のミカタ・ストレイキャットミーツガール感想
悪魔のミカタ・ストレイキャットリターン感想
悪魔のミカタ・It ドッグデイズの過ごしかた感想
悪魔のミカタ・It ドッグデイズの終わりかた感想




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2009年04月18日

アキカン! 1巻 感想 藍上陸

アキカン! (集英社スーパーダッシュ文庫)
藍上 陸
4086303574



初っ端からアレですけど、アニメから先に入ったクチなので、エレクトとは言えメロンがぶど子を殺すシーンはショッキングでした。
幼い女の子の姿をしたアキカンの命の灯が消えていくくだりと、残されたミサキの悲しみはか想像するとなり辛い。
アニメ版ではこの部分は改変されてぶど子の死そのものがなくなったわけですけど、それが正解だと思います。
物語のアクセントと呼ぶにはあまりに生々しかったので。

と言う訳で、アキカン1巻ようやっと読了です。
文章自体は読みやすいんですけど、展開が小刻みに右往左往するところがあって、しかもそれがアキカンエレクトと言うバトルに絡んでの事だったりするので、どうにも慌しい感じが拭えません。
本来なら2冊分のイベントを1冊に圧縮して詰め込んだ感じとでも言いましょうか。
それともこう感じるのもアニメ版の展開スピードに馴染んでしまったからでしょうか。
個人的にはアニメ版の展開スピードの方がしっくり来ますね。


主な展開部分に関しては上の通りですが、バトルの幕間に描かれるカケルとその仲間達との時に和気藹々と、時に殺伐とした馴れ合いは、実はかなり好きだったりします。
幼馴染のなじみにミステリアスな"魔女"東風、ひたすら影の薄いジゴロー。どちらかと言うとサブキャラの連中なのにしっかりとキャラが立っていて、掛け合いがなかなか微笑ましくかつ面白い。
もしかしたらタイトルにもなっている筈のアキカン達よりキャラ立ちしているような。
実際クライマックスでの東風の登場シーンとか、どう見てもアキカン以上に謎だらけだったりしますからね。
あと、男屋と木崎も良い感じに胡乱で面白いです。でも木崎さん23歳…まだ大学出たばっかリなんだな。もう少し年上だとばかり思ってました(汗)。


どうにも慌しい展開が気になりはしましたけど、良い意味でアニメと同様に内容はあって無い様なものなので、ラノベにありがちな溢れる中二スピリッツや爛れた邪気眼イズムによって消耗を強いられると言う事はありません。
個人的に思っているラノベの理想形(青臭い小理屈や劣等感の裏返しの選民思想的なものを一切排除して、エンターテイメント性に特化すべき)には合致しているかなあ、と。


アキカン!アニメ版感想記事一覧

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2009年04月13日

悪魔のミカタ 8 It ドッグデイズの過ごしかた 感想 うえお久光

悪魔のミカタ〈8〉It ドッグデイズの過ごしかた (電撃文庫)


小鳥遊の少女時代(今は少女じゃないのかという追及はさておき)編が終わって、コウたちが帰ってきました。
やっぱり邪気眼まるだしの女子小学生よりも、程好くマイルドな中二臭漂う主人公が胡乱な連中と切った張ったやる展開の方が面白いよね…とか思ったら。

一応主役はコウで間違いないんですけど、実質的には三束部長とその恋人美樹さんとの愛の逃避行がメインとなっていて、コウはただの巻き込まれキャラと来た。
もちろん物語の深い部分を見れば、コウの立場がただの巻き込まれキャラだけではないのは判るのですが、それでも――やっぱりアレか、三束氏し美樹さんのギシギシアンアンに対して終始一貫して童貞臭を放つリアクションしか出来ないところがどうにもアレだからか。

直接描写は無くても車がギシギシいったりラブホ泊まったり、ラノベでこういうのは結構珍しいかも知れません。
まあラブホで飲み物を買うためにいちいち部屋を出なきゃならないという描写はどうなん?と思いますけど。
普通部屋の中で買えるようになってると思うんですが、まあ和歌丘では違ったスタイルが流行っているのかも知れないし、流行ってないのかも知れないし。


小鳥遊編に続いて今回も上下分冊のため、物語はかなり良いところでぶつりと切られます。
最近は1巻ごとに物語に一応の区切りを付けるのが普通になってますが、この当時は漫画みたいに引っ張って切る作品が多くは無いにしてもそこそこあった気がしますね。

あとこれはウザイ話ですが、追跡者からコウが拳銃を奪うくだりで、装弾数が15発だか17発だかという描写があるのに、イラストでは7発しか入らないタイプの拳銃を持っているのがちょっと奇妙に感じた。(いちいちモデル名は書きません)
この辺、作者とイラストレーターさんとがどういう形で意思疎通しているのか気になりますね。

悪魔のミカタ・魔法のカメラ感想
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悪魔のミカタ・パーフェクトワールド平日編感想
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悪魔のミカタ・It ドッグデイズの過ごしかた感想
悪魔のミカタ・It ドッグデイズの終わりかた感想


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2009年03月14日

悪魔のミカタ〈7〉番外編・ストレイキャットリターン 感想 うえお久光

484022269X悪魔のミカタ〈7〉番外編・ストレイキャットリターン (電撃文庫)
うえお 久光
メディアワークス 2003-01

by G-Tools



邪気眼少女は世界を救う。
悪魔のミカタ「ストレイキャット〜」の後編にあたる第7巻。

最初の1/3程度はコージー系ミステリーを髣髴とさせるのほほんとした展開でしたが、中盤で小鳥遊が世界を滅ぼす邪神「天津甕星」をうっかり復活させてしまってからは、スケールが大きいんだか小さいんだか良く判らない一種独特の雰囲気で、少女達が世界の滅亡を阻止する為に立ち上がる物語へ。

6巻との関連性と言うとキャラクターを引き継いだ位のものでしかなったりするのですが、この2冊を通して小鳥遊の邪気眼が喪失されて、代わりに中二病の症状が緩和されるという流れ…小鳥遊の成長物語だと考えるとこれはこれでアリかなあと思ったりもします。
邪神も所詮は小鳥遊の成長のためのガジェットでしかなかったのは些か拍子抜けですが、まあノリがコージー系だしね。

それにしても「天津甕星」の姿、どこかで見た気がするんですよね。
樽のような胴体にヒトデのような頭部、胴体側面に生えた羽根…うん、もしかして南極から来たのでしょうか?
南極の狂気山脈深部、巨大なペンギンとショゴスに守られたその奥からやって来たのでしょうか。てけり。
裏表紙のイラストがその「天津甕星」をデフォルメした姿みたいですが、あまりにビビッドな配色とデフォルメ加減で、本編読むまで元ネタに気付かなかったぜ…。


読後感は爽やかでしたけど、結局由真の頭の上にくっ付いていた謎の生物はなんだったんだろうか。
中原中也の擬態語で鳴く点と言い、ある意味天津甕星よりも謎おおき存在なのですが…。
故意に正体不明のまま終わらせたのは理解できるだけに、なんだか孔明の罠にかかったような悔しさが残って仕方ありませんw


悪魔のミカタ・魔法のカメラ感想
悪魔のミカタ・インヴィジブルエア感想
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2009年03月01日

七人の武器屋―激突!武器屋VS武器屋!! 感想 大楽絢太


七人の武器屋―激突!武器屋VS武器屋!! (富士見ファンタジア文庫)
大楽 絢太
4829118555



前巻からの続きで、天下一武器屋祭編の後編にあたる本巻。
いつものように次々とトラブルに見舞われて、駄目になって、諦めかけて、そして皆で協力して再起して…の黄金パターンは健在。このパターンがご都合主義だなんだと言われる訳ですけど、僕はこのパターンこそが7人の武器屋の味だと思ってます。これなくなったらもう別の作品だよ?


レイムーヴとミニィちゃんを巡る顛末が意外と面白くて、前巻の感想でミニィちゃんはどうでもいいやと書いてしまった事を反省。
最初はミニィちゃんの事を全く覚えてなかったと読者にミスリードさせて、何だこのスカした嫌な奴は!と思わせておいて、実はミニィちゃんの髪型が変わった事とあだ名が変わった事によって識別できなかっただけというオチ。
また、かつてレイムーヴがミニィちゃんの前を去った理由も「人見知りでなかなか笑わないミッタン(昔のミニィちゃんのあだ名)笑顔にしてやる方法を探しに旅に出た」なんて、泣かせるではないですか。
笑顔になる方法なんて旅をして見つかるものとは思えませんけど、しかしここに至るまでのレイムーヴの飄々とした天然ぶりを見ていると、コイツならやりかねないと納得してしまう。愛だな、愛。

姑にイビられ気味で元気を無くしたノンを元気付けた仮面の人も、心労で倒れたイッコを立ち直らせたイッコ母も全ては愛。
武器屋祭と言う名目でクイズやったりバトルやったりしながらも、根底を流れるものは愛。
ヘタにひオブラートで包んだりせずに、正面から愚直にぶつけられる愛。
何気にジンと来てしまったではないですか。


ラストで武器屋祭の優勝を逃してしまった時には店の再建はどうするんだろうと本気で心配してしまっただけに、その後の賞金云々の話はちょっと拍子抜けでしたけど、それもまたらしいと言えばらしいです。



ラベル:書評
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2009年02月26日

悪魔のミカタ6 番外編・ストレイキャットミーツガール 感想 うえお久光

悪魔のミカタ〈6〉番外編・ストレイキャットミーツガール (電撃文庫)
うえお 久光
4840222193



久々に教科書どうりのJA KI GA Nを見た。

アクマ6巻は小学生時代の小鳥遊と冬月の出会いを描いた番外編。本が薄いのでなんとなく嫌な予感がしてましたが、やっぱり7巻に引っ張る形式でしたか。
ま、薄いといってもスニーカー文庫程度の暑さはあるんですけどねー。


ストレイキャットというサブタイトルからもなんとなく伝わってきますけど、要するに人に懐かない野良猫のようにただ周囲を威圧し、近づいて来るものに爪を立てるとんがった生き方しか出来ないガキの話です。
とにかく作者自身が子供時代の小鳥遊で目一杯遊んでいるのが伝わってきます。
見鬼という邪気眼能力と言い、そのオカルトチックな能力を無理矢理理系っぽく論理的に説明しようとして超理論になっているところと言い、どうみても確信犯です。
邪気眼カッコイイ=理系カッコイイ=小学生=ガキという図式が見事に出来上がっているもんだから、ページをめくりながらニヤニヤが止まらない。
あざといと言えばあざといですけど、こういう毒と些かの自虐を含んだあざとさはアリです。いいぞもっとやれ。

対して冬月が年齢の割に随分落ち着きすぎているのが気になりますけど、1巻で退場して以降無敵キャラとしてコウたちの心の中に君臨し続けている御仁ですから、イメージを崩す訳にはイカンのでしょうか。
小鳥遊が百合に目覚めたのも冬月が原因みたいですし…本当、相当な影響力ですね。


それなりに面白かったですけど、ただ6巻だけでも一応オチている気がしなくもない…7巻に続ける必要あるのかな?
その辺、7巻を読んでみないと何とも言えませんが、願わくば「おおー!こう来たか!」と嬉しい不意打ちをかけてくれる続編であって欲しいものです。


悪魔のミカタ・魔法のカメラ感想
悪魔のミカタ・インヴィジブルエア感想
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2009年02月20日

曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター2 感想 大迫純一

神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター 2 (GA文庫)
忍 青龍
4797348607



レオンシリーズ第2弾は、偶然知り合った女性から託された鍵の秘密を巡って事件に巻き込まれるというもの。

今回はレオンの前に立ちはだかる精霊達とのバトルが中心になっているかなあ。バトルも精霊の癖に格闘中心なんですけど、大迫さんの作風にはそれが一番似合っているから問題なしです。
ただ、肝心の事件に関しては善悪の判断をつけにくいものだけに、あまりケレン味が無いのが気になるといえば気になるか。仕事と割り切った上で戦いを挑んでくる相手とのドライなバトルが爽快なだけに、事件そのもののウエット感との食い合わせがあまり良くないです。

もともとレオンシリーズはミステリーと言ってもハードボイルド作品に近く、事件を通してレオンやその取り巻く人たちの姿を描き出すタイプの作品ではあります。
この点、登場人物を通して事件とそのトリックを描き出す本格ミステリーとは作品の文法自体が違うので同列に語ってはいけないのですが、日本ではミステリー=本格という図式が根付いているだけに、ハードボイルドな雰囲気がどこまで受け入れられるのかは謎。
ともあれ、2巻はこのハードボイルドと本格との間でどっちつかずに揺れている感じが多少あるのは気になる点。


1巻にはいなかった筈なのに突然2巻から登場した猫(精霊)のセヴニエーラはレオンの合い方として非常に良い感じです。
セヴン初登場となる短編は未読ですが、馴れ合っていないようで微妙に馴れ合っているかもしれない独特の距離感が非常に雰囲気を盛り上げてくれる。
自分の目的はレオンを殺す事だと言いながらしっかりレオンに協力していたりとか、まったく、大迫さんはこの手のジャンルのお約束をしっかりと心得ている人だと言わざるを得ない。





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2009年02月11日

七人の武器屋 天下一武器屋祭からの招待状! 感想 大楽絢太

七人の武器屋 天下一武器屋祭からの招待状! (富士見ファンタジア文庫)
大楽 絢太
4829118261



天下一武器屋祭なるあまりにストレートなネーミングに軽く笑った。

雪の重みで倒壊してしまったエクスガリバーの再建資金を稼ぐ為に、ロトセブンに紹介された天下一武器屋祭に参加する事となった一行の苦闘?を描くシリーズ第3弾。
苦闘という書き方が正確かどうかは何とも言えないのですが、まあ大幅に間違っては無いので良しとしましょう。


あいも変わらず体育会系なノリが読んでいて心地よいです。
商人が主人公でありながらも、経済の仕組み(と言うよりもトレーダーの仕組み)について切り込んだ狼と香辛料や、時代と世界こそ違えど同業である武器商人一行の冒険を描いたヨルムンガンド辺りの重厚さは全くありませんが、しかしこの作品には他に無い爽やかさがある。
相手の腹を探り、いかにして出し抜くかではなく、仲間と頑張って何とかしようというのが基本路線ですからね。

以前の感想にも描きましたけど、実は小規模の小売業ではそれが真理だったりします。
もちろん天下一なんたらなんてものはありませんけどね(笑)。


今回の主な舞台となるのは大陸を横断する鉄道。
鉄道が作れるのに武器に銃器類が無いのは些か腑に落ちないですけど、そこはそれ。
荒野を疾走する列車というのはそれはそれで非常に絵になります。

列車を襲撃するモンスターの群れ。二転三転するストーリー。
派手に展開している割に殺伐としない雰囲気(笑)。
まったく、どこまでさわやかなんだ。拾った武器の売り逃げとかかなりせこい事やるくせに。


この巻は武器屋祭の開催されるデルガドの町にたどり着くまでの冒険で一段落。肝心の武器屋祭は次の巻からとなります。ミニィちゃんの初恋相手についても持ち越しですが、こっちは…まあミニィちゃんだからどうでもいいやw



*本文中で言及した作品*
狼と香辛料感想
ヨルムンガンド感想




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2009年01月31日

狼と香辛料Z 感想 支倉凍砂

狼と香辛料〈7〉Side Colors (電撃文庫)
支倉 凍砂
4840241694




久しぶりに読んだ狼と香辛料は短編集。
ホロがロレンスと出会うよりも前、まだ麦畑にすら居着いていない頃を舞台にした中篇と、ロレンスと夫婦漫才やってる短編が二つで構成されています。


まず中篇の「少年と少女と白い花」。
屋敷を追い出された少年クラスと、その連れアリエスのぎこちない旅と、それに付き纏いつついつの間にか仕切り屋さんとなるホロが描かれます。
人間二人が10代の子供とあってロレンスといる時のホロとはまた違った、姉属性溢れる姿が新鮮と言えば新鮮。
ホロの仕組んだ茶番とは言え冒険活劇仕立てになっているのも今までには無かった要素です。
本編のほうは基本腹の読み合い要素が非常に強く、読者も登場人物たちの言動の僅かな機微を見逃さない様神経を張って読む必要があるのですが、この中篇に関してはそう言った必要はほとんど無くて、気楽に読めるのが美点。

続いて短編「林檎の赤、空の青」。
これは6巻終了直後のひとコマという感じでしょうか。
ロレンスが案外(失礼)抜け目の無いキャラクターとして描かれていて、この素人童貞(笑)あなどれねぇなと思えるのですが、その次の「狼と琥珀色の憂鬱」で天然ボケボケぶりを露呈してしまう構成が面白いです。
でも時系列は「狼と琥珀色の憂鬱」の方が「林檎の赤、空の青」より前なんですよね。ノーラがいるし。
特に琥珀色の憂鬱はホロが恋の病(笑)に罹患する話で、ある意味ようやく7巻に来てホロの心の天秤がどの方向に向いているのかが明確に描かれたと言う事になります。
これまでの巻でも雰囲気はプンプン漂っていたのですが、はっきりと言及する事は避けていたフシがありますゆえ。


アニメ化によって周囲が盛り上がっていた当時はやや意地悪な読み方しか出来ませんでしたが、ピークを過ぎて取り巻く環境も落ち着いてきた今は結構素直に素人童貞とヒネクレ獣耳の旅路と恋路を眺める事が出来るようになりました。
周囲のムードに影響されやすいのはアカンですね。はい。




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2009年01月21日

フルメタル・パニック! 戦うボーイ・ミーツ・ガール 感想 賀東招二

戦うボーイ・ミーツ・ガール―フルメタル・パニック! (富士見ファンタジア文庫)
賀東 招二
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ロボットアニメ好きとしてはいつか読んでおこうと思いつつ、何故か今まで手が出なかったフルメタです。
館尾先生の漫画版は読みましたけどね。

設定等に関しては今更書く必要も無いですかね。
世界の安定を維持する為に組織された私設軍隊ミスリルに所属する少年兵士相良宗助と、ウィスパードと呼ばれる特殊な能力を持つ為にテロリストに狙われる少女千鳥かなめのSFロボットバトルラブコメディー。
見所は戦争しか知らないで育ったために娑婆の空気に馴染みきれない宗助の勘違いぶりと、アームスレイブと呼ばれる人型ロボットによるバトルでしょうか。


別にラブコメに対して含む所がある訳ではありませんし毛嫌いしている訳でもありませんが、僕個人が一番注目してしまうのはやっぱりロボット。ガンダムとか好きなもので。
何より、かなめ可愛いよかなめとかそういう萌え&ラブ方面からのアプローチをやっている人は既に沢山いそうなので、敢えて此処で同じ事をやる必要性を感じないというのが大きいですけど。

この作品はウィスパードと呼ばれる能力者によってもたらされた未知の技術体系によって、1990年代でありながら人型ロボットが実用化されています。
なので作品の雰囲気はガンダムほど未来ではなく、アニメで言うと「ガサラキ」辺りが一番近い雰囲気ではないかと思われます。作中の描写から推測する感じではロボットのサイズもMSとタクティカルアーマーとの中間位でしょうか。
媒体がライトノベルと言う事もあってあまりSF的な解説は成されておらず、ASの設計や運用に関する諸々はけっこうあやふやですが、その辺に関してもロボットアニメの系譜の一つだと思って読めば特に問題は無いでしょう。


1巻ではいきなり北朝鮮を舞台にしたりしてそれはそれで刺激的な展開が繰り広げられますが、1巻発売当時と言うと北朝鮮の食糧難問題やテポドン発射実験が大いに話題なった時期でもありますので、ライトノベルには珍しく時事ネタを盛り込んだ内容である事に気付かされます。
更に今後の展開にも繋がってくるかも知れませんが冷戦が継続中というのも面白い。
実際にはミスリルのような組織は現在のような非対称戦争が多発する時代にこそ存在意義があるような気がしなくも無いですが、折角ソ連が健在な世界を創造したんですから赤い嵐が吹き荒れる展開にも幾許かは期待したくなるのが人情。
設定がただの飾り物に終わらない事を祈ります。






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2009年01月03日

ガンズ・ハート 硝煙の誇り 感想 鷹見一幸

ガンズ・ハート 硝煙の誇り (電撃文庫)
青色 古都
484022580X



味のある挿絵に関してはひとまず置いておいて。

何だか壮大な舞台設定が用意されてはいるものの、1巻を読んだ限りでは基本的にはパニック小説だと思われます。
単細胞だけど大物かも知れない下級士族の青年ケリンが、訳ありのはぐれ者ばかりを集めた部隊の指揮官となって部隊を建て直し、近々起こるであろうエズオルと呼ばれる猛獣の大発生に伴う集団暴走(スタンピード)に立ち向かうという内容。
真っ先に思い出したのは、故西村寿行氏の傑作小説である「滅びの笛」。

最近の若い人には西村寿行氏と言っても全く馴染みが無いと思いますが、かく言う僕も氏の作品で読んだのは「滅びの笛」のみだったりします。色々と名作を書かれているので機会があれば他の作品も読んでみたいところですがそれはそれ。
とまれ「滅びの笛」と言う作品は、山梨県を舞台にした鼠の大量発生と集団暴走を描いた作品。
乱獲によって鼠の天敵が減少した事と、120年に一度の笹の一斉開花によって鼠の餌となる笹の実が大量に実った事とが重なって大量発生・集団暴走に繋がって行くという設定ですが、「ガンズ・ハート」でもエズオルの餌となる木の実が100年周期の大豊作となった事が引き金の一つとなっていて、この手のパニック小説の文法に極めて忠実な感じです。

ぶっちゃけ異世界ものという点だけがこの作品はラノベである事を主張しているものの、それ以外の点ではそんなにラノベっぽくないと言うか、ラノベ特有のハッタリが少なくて地味な感じなんですよね。
この世界の一般的な武器――マスケット銃の描写がラノベにしては微妙に細かかったりとか、そういうのが好きな人には面白いんですけど、一般的なラノベのテンプレートであるホイチョイラブコメ&異能バトルを求める人には全く不向きというか。

1巻と言う事でまだ導入編の感があり、ヒロインのミントに至ってはほとんど物語にすら絡んでない状態ですが、ミントの父親が設計したと言う禁制の新型銃とか教団が隠していると思われる太古の文明の秘密など、今後が楽しみな伏線は随所に埋設されています。
物語としてはそれなりに練られている感じがするだけに、登場人物の名前がハーブ類だったりするのはどうにかして欲しい。
脱力感が伴うので。


余談ながらこの作者の方は仮想戦記も書かれた事があるらしいですが、もともとこの作品も幕末を舞台にした仮想戦記?として考えていたものにラノベ要素を大量に添加して発表したとか。
そういう意味では珍しい生い立ちの作品と言えそうです。





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2008年11月30日

かわいいあの娘は戦車兵 ぱんほー! 感想 ゆうきりん

ぱんほー! (HJ文庫)
上田 梯子
4894257610



ぱんほー!とはPANZER VOR!の略なんだそうです。

事実とは違った終結を迎えた第二次世界大戦。
連合国はこの大戦に勝利はしたものの、その国力の疲弊はきわめて大きく、敗戦国ドイツの戦後統治もままならないままに空白地帯として放置せざるをえなくなっていました。
やがてそんなドイツ国内に枢軸国・連合国問わず各国の脱走兵や残党が集まり、ヨーロッパにおける最大の無法地帯に…。

ライトノベルなんで設定に関してあれこれ言うのはやめておきます。
むしろ個人的には、ラノベに仮想戦記的なエッセンスを持ち込んだ事を評価したいですね。たぶん模型誌を母体とするHJ文庫だから出来た事で、電撃や角川なら絶対通らないアイデアだとは思いますが、しかしそういうところでレーベルごとのカラーが出てくれることは大歓迎。
只でさえ金太郎飴化著しい昨今、試行錯誤はどんどんやって欲しい。


ヒルダ達の乗る戦車がヘッツァーと言うのが良い。
乗用車程度の大きさと愛嬌のあるスタイリング、当時の兵士達にとっては鉄の棺桶でしかなかったとは言え、やはり女の子キャラを乗せるのにはこれ以上無く適した車両。
これが重戦車だとやはり違和感が…いえ、そういう作品もあるにはあるのですが。
やっぱり女性には砲弾の装填は大変だ――そう考えると最も女子向きなのは自動装填装置付きの90式??

戦車の描写は思いのほか良くて、埃臭くて泥臭い戦車戦がよく描けていました。
ただ気になるのは、1巻(伏線の張り方からして続巻も出るよね?)最大の敵である"幽霊戦車"の火力で果たしてティーガーの装甲を抜く事が出来るのかと首を傾げてしまった点。
"幽霊戦車"が装備している16口径の76ミリ砲と42口径45ミリ砲ではどう頑張ってもティーガーを抜く事は無理なのでは…。

また、"幽霊戦車"は本来最大で30ミリしかない装甲を300ミリまで強化してあると言う設定ですが、エンジン出力云々は別としても、あの戦車の砲塔配置はかなりキツキツなので、副砲塔にまで増加装甲を貼り付けるのはたぶん不可能。
よって副砲塔はどこに当ててもヘッツァーの火力なら余裕で抜けると思われます…。
やはり"幽霊戦車"みたいなデカブツは、装甲を強化する改造よりも、大口径砲を載せる台と割り切って対戦車自走砲に改造する方がマシなんじゃないかなあ。
あの車体ならたぶん100ミリクラスの砲が乗ると思うので、それならティーガーやパンターの正面装甲を余裕で抜ける筈。
もっとも、そんな真面目な改造やった日には「ヨハネの赤竜隊」が出てきてジ・エンドなんだろうけど。


ラスト前でヒルダが敵の戦車兵に言われた「お菓子の家」の生き残り云々は気になる伏線。
真っ先に想像するのはヘンゼルとグレーテル。
そこから普通に考えていくと、みなし児を集めて兵士としての特殊な教育を施していた施設の通称ではないかと思われます。
旧東ドイツやルーマニアではその手の行為が実際に行われていたと聞いた事がありますし。

亜子の特攻バカに関しては全く予想すら出来ない謎。すげー気になっているんですが…
やはりかくなるうえは続巻を出してもらうしか!ぱんほー!!



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2008年11月25日

悪魔のミカタ 5巻 グレイテストオリオン 感想 うえお久光

悪魔のミカタ〈5〉グレイテストオリオン (電撃文庫)



久しぶりの悪魔のミカタです…ってこれ4巻の感想でも書いたなあ。
しかも1年以上前…(汗)
何せ積み本多すぎて完全に訳わからなくなってます。
読むペースより増えるペースの方が圧倒的に早いので…どう考えても計画的に進められる訳が無い。


ま、それでもある意味それでも読んだ本の内容を朧げながら記憶している俺ってスゴイ!!
はい、軽く自画自賛して気合入れてみました。これであと10年は戦えるかも知れない。


5巻は今までの知恵比べ的な展開から一転、ボクシングを題材にしてかなり派手なアクションを含んだ物語として仕上がっています。
特筆すべきはコウと高虎との綾をかけたボクシングの試合シーンで、約80ページにも渡って息詰まる攻防が描かれています。
スポーツとは言え物語の中での位置づけはバトルに近いものでありながら、殴りあうシーンとラウンド間の駆け引きとを有機的に組み合わせて展開させる事で単調さを排し、退屈どころか非常に読み応えのあるものに仕上がっていました。
このシーンだけでも一本の短編小説として成立すると言ってもたぶん差し支えないでしょう。

また、これまでの話は知恵の実と契約した契約者との駆け引きがメインだったのが、知恵の実そのものと対峙する構図になったのも物語の転換点を感じさせて興味深い。
終盤グレイテストオリオンの力で日奈に生まれ変わる=日奈を生き返らせる決意をした綾とか、盛り上がり方もまるで最終巻かと思わせる位のものがあります。


反面、今回はキャラクター的に言うと綾がメインだけに、1巻当時のあんな事やこんな事などなど結構どぎつい描写が散見されるのは判断が分かれるところかも知れません。
個人的にはお気楽な話の方が好きと言えば好きなので、今回はちよっと読んでて疲れました。
それでも作者の技巧の冴えでぐいぐい読まされた訳ですから、やはりうえお氏は非凡な才能の持ち主なのは間違いない。


次の巻は…1年以内には読みたいなあw

悪魔のミカタ・魔法のカメラ感想
悪魔のミカタ・インヴィジブルエア感想
悪魔のミカタ・パーフェクトワールド平日編感想
悪魔のミカタ・パーフェクトワールド・休日編感想
悪魔のミカタ・ストレイキャットミーツガール感想
悪魔のミカタ・ストレイキャットリターン感想
悪魔のミカタ・It ドッグデイズの過ごしかた感想
悪魔のミカタ・It ドッグデイズの終わりかた感想



ラベル:うえお久光
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2008年11月17日

片手間ヒロイズム 小林めぐみ 感想

片手間ヒロイズム (一迅社文庫 こ 1-1)
小林 めぐみ
4758040109



最近のギャルゲー的フォーマットに最適化されつつあるラノベの中にあって、どこか懐かしいジュブナイル的な香りを放つ1冊。
一応SFの短編集と裏表紙に書かれていますが、SFはSFでも"すこしふしぎ"の方に分類される気がします。
もちろんそれは良い意味の方で。


なんだか久しぶりに露骨な萌えの無いラノベを読んだ気がします。
僕は萌え否定論者ではなくてどちらかと言うと萌えは好きな方なのですが、その毎日毎日これでも喰らえと謂わんばかりに萌え系作品をぶつけられると流石に食傷気味にもなってくる訳です。
ここで今更自分流の萌えイデオロギーを開陳する気はありませんが、一言だけ言うならば「モノには限度がある」という事で。

もちろん萌えが無いと言っても押し付けがましい萌えが無いだけであって、春の若草の如く自然に萌え出る感情を託すに足りる主人公が不在と言う訳ではありません。
主人公にして現役女子高生であるところの真理たんの、お人好しでどこか肝心な部分の螺子が半回転ほど緩んだキャラクター性(結城心一さんの描くイラストのイメージどおり!)には真理たんは俺の嫁(候補)と感じさせるものが充分にあります。
一体どこで「百人斬り」等と言う厄い言葉を覚えて来たんだろうかとかいう疑問はありますが、程よく所帯じみた雰囲気とファンタジックすぎないキャラクター造詣のおかげで、そういう単語を口にしても何故か許せてしまう訳です。
というか僕も真理たんに斬られて(以下略)


物語の方は最初に書いたとおりにすこしふしぎな短編集で、異世界人やら宇宙人やら色々登場して、時に悪ノリな部分があったりもしますが、一話一話が綺麗に纏まっていて分量的にも手頃なため気軽に楽しめます。
大筋としては時間の円環モノなのですが、散りばめられた伏線や物語のプロットを意識しながら読まなくても最後に全ての構図を「何となく判ったような気分」にしてくれますから、時間ものが苦手な僕にも馴染み易いものでした。


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2008年11月16日

超自宅警備少女ちのり 感想

超自宅警備少女ちのり (GA文庫)
小幡 休彌 しゅー
4797351772



いまいち萌えない自宅警備少女が世界を守ってしまうなんだかよくわからないライトノベル。
ちのりさんの設定が美人の部類なのにひきこもりというのが腑に落ちん…別にキモくする必要性は全く無いけど、まあ人並み程度でもよかったと思う。同様に唐突に欲情する積極性もひきこもりらしくない。あんまりリアルにしたら現在進行形で引きこもってる人に怒られるのかな?

ヒロインがいまいち萌えない一方で、地底人3人娘はいい味を出していた。そのままスピンオフで1本でっち上げられるレベル。ドジっ娘だったりイマイチやる気に疑問を感じたり堅物だったりと実にラノベらしい明確な属性が振られていた。
それだけに、とチュゥから添え物扱いになったのは残念でならない。
ちのりとエキセントリックなお嬢様のバトルよりも、駄目っぽい地底人3人娘の日常がもっと見たかったナリ。



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2008年11月08日

ふりふろ♪ 感想 高崎とおる原作 土田奥郎

ふりふろ♪ (GA文庫 た 5-1)
すーぱーぞんび
479734167X



カエルは緑色に限る。
よく庭の隅っこで見かける土色のカエルや、少し標高の高い山に行くと足元で激しく跳ね回っている赤銅色のちいさなカエルもそれはそれで愛嬌が無いわけではないけど、やはり緑色に適うものなし。

…と言う訳で、この作品は蛙界の王子にして強大な魔法の力を持つ神、それでいて何故か人間の女性が大好きと言うエロガエルのディングルと、ある不幸な出来事でディングルと一心同体になってしまったお坊ちゃまのエリオット、その幼馴染でガンマンのティアナと商人のカーロッタが繰り広げる、世界の命運を賭けたちよっとエロスな物語です。


物語の形式としては19世紀程度の文明水準を持つ世界を舞台にした冒険ファンタジー。
あるアクシデントによって世界が破滅する引き金を引いてしまった主人公が、それを阻止する為に世界各地に散らばった宝珠を集めると言う、ある意味王道的なストーリーです。
近年ではこういう作品、結構貴重な存在かも。

設定自体はさほど変化球ではありませんが、キャラクターが非常に活き活きしているのが好印象。
主人公達も女装だったりガンツリーだったりと色々個性的なのですが、今回のエピソードに登場するフランシスカ姫は円匙こそ最強の武器と力説する塹壕を掘ることが大好きなかなりアレな人だったりしますし、また姫の両親を殺害し王国を乗っ取ったクニムント将軍も策略家と言いつつ言動がかなり意味不明でアレな人です。

もちろん中にはまともな人もいて、道中出会った女騎士のシグルドなんかは唯一の常識人と言えそうですが、いかんせん周りがアレな人ばかりなのでその真面目さが空回りしてしまっているのが…面白い。
意外と性的なネタに耐性が低いのもそこはかとなく萌え心をくすぐります。


基本的にはお色気コメディ色の強いライト・ファンタジーですから、シリアスな展開は今後も期待しない方が良さそうですね。ポップなイラストは作品にマッチしていて良かったかな。
ただ、これは感性の問題でしかないですが、ボケに対するツッコミが律儀すぎてちよっとクドいと思った。
ギャグは投げっぱなしにする事で効力を発揮するものもあるので、ツッコミ過ぎは興を削ぎます。




…ちなみにフランシスカ姫の円匙に対する認識は実に正鵠を射たもので、第一次世界大戦当時の塹壕戦においては取り回しの悪い銃剣等より遥かに優れた白兵戦用武器として重宝され、また殺傷力を増すために刃の部分を尖らせたりノコギリ状にしたものもありました。
これに対抗できるのはトレンチガンのみ!…というと大袈裟ですけど、実際にその位優秀なツールだった訳です。




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2008年09月24日

ギャルゴ!!!!!2 地域限定焼餅大全 感想 比嘉智康

ギャルゴ!!!!!2 地域限定焼餅大全 (MF文庫 J ひ 3-2)
河原恵
4840121478



物干し竿を手に真幌市の平和を守るために日夜戦う落とし神ギャルゲーゴッド略してギャルゴの活躍を描くシリーズ2巻目。

サブタイの「地域限定焼餅大全」とは何ぞや…と思ってましたけど、読み終わってしみじみと納得。
なるほど、確かにかなり限定された焼餅の総合商社な内容でした。
新キャラライムの登場に加えて、エリアスだけでなくかま子まで人間化してしまって、これは羨ましいのか厄いのか判然としない極めてカオティックな状況と言えます。要するに、1冊まるまるラブコメ展開になっている訳です。
これはこれで時代のニーズに沿った展開なのかも知れませんが、どこか消化不良な感じが残ります。
やっぱり物干し竿振り回して地伝を解決してゆく姿を見たかったなあ、と。

もっとも、2巻で登場のエロ長ことライムは田中の祖母によって地伝と戦う術を仕込まれたもう一人の地伝ファイター(?)です。そんなキャラを登場させておいて、今後もラブ米ばっかりだったりすると、それはアフラトキシン塗れのジコ米並に問題と言わざるを得ない。
なので、今回は新キャラの紹介と、既存キャラの設定に関する追加補足をラブ米の形を採りながら説明した巻と解釈したい。

で、2巻最大の謎となる着物女ですが…最初は全くちんぷんかんぷんでしたけど、エリアスの台詞でなんとなくピンと来ました。
それから今までの行動をもう一度読み返してみて納得。巧みな伏線の張り方に脱帽。
思えば1巻のしりとり地伝もそうでしたけど、さりげなく仕込みネタを入れるのが本当に上手な作者です。
その一方で構成の方はというと、規定ページ数キツキツに何とかねじ込んだぞーという荒業が伺えたりもしますが。


ちなみに僕の中ではメインヒロインはエリアスです。
コトリさんの蕩けた感じも悪くないんですが、田中とのやりとりについてはただただ蕩けただけのコトリさんよりも、エリアスの方が読んでいて楽しいんですよね。やはり甘いだけでなく、時にピリリとした辛さも必要って事です。
今回ちょっとエリアスさんのシモネタが大人しかった気もしますが…人間化した状態でシモな誘いかけたら、どこかの狐妖怪が出てくるラノベになってしまうからかな?
いやいや、それはそれで歓迎なんですけどね。ゆやよん。



ギャルゴ!!!!! 地方都市伝説大全 感想


ラベル:ライトノベル
posted by 黒猫 at 02:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月13日

ドアーズ 1巻 神坂一 感想

ドアーズ 1 (1) (角川スニーカー文庫 46-18)
神坂 一
4044146187




今の小中学生の人は知らないかもしれませんが、15年位前に頂点を極めた神坂一と言う作家がいました。



続きを読むの?
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