のっけからこう言う事を言うのもアレだけど、ガンアクションという体裁を取りながらその描写がメタメタでぐんにょりした。女殺し屋のラビオリが持っているのは作中の記述によるとマテバ。そして主人公にして見習い殺し屋のニョッキが持っているのは作中の記述によるとピースメーカー。
いずれも描写の感じから推測しているのではなく、文中に固有名詞で記されています。
さて、どの変がメタメタかというと。
@ニョッキが初めて同行したラビオリの仕事シーンで、突入した部屋にいた4人の男に1発ずつお見舞いして無力化します。その後、弾の補充をする描写も無く
倒れている4人の男に1発ずつ撃ち込んで止めをさしています。
つまりこの作中世界のマテバは8連発なんだそうです。
弾を補充する描写なんて地味なんで省いただけじゃね?とも思えますが、後にニョッキが仕事に参加し始めてからは頻繁に弾を補充するシーン(*後述)が描かれているので、ここだけ省くというのも変な話ではあります。
Aニョッキが初めて得物を手にする時の話。銃を見繕う際にラビオリが店主に対して「ニョッキにはあまり口径の大きくないものがいい」と言ってましたが、その割に選んだのはピースメーカー。
ピースメーカーの口径は.45口径ですから、はっきり言って大口径です。マテバが.357モデルだとすれば、ラビオリの得物より口径がでかい事になります。なんぞこれ?
B上で触れたニョッキが弾を補充するシーン。ピースメーカーは撃ちガラの排出方法と装填方法が特殊で、普通のリボルバーみたいにシリンダーをスイングさせてまとめて排出&装填が出来ません。
なのに作中では
空のシリンダーを棄てて、弾の入ったシリンダーに交換したと書かれています。
はて?
はて?
はて?
たぶんこの作品を書く前に何らかの西部劇を見たのだと思いますが、たしか「夕日のガンマン」だったかで、パーカッション式のアーミーモデルをリロードする際にシリンダーごと交換するシーンがあったと記憶しています。
それを見て書いたんだろうな…西部劇のガンマンが持っているのは全てピースメーカーだと思っているというか、それしか知らないというのが原因なんだろう。
まだ細かいミスは多数あって、例えば敵の殺し屋フウヨウハイがラビオリを狙撃してきたシーンでは
銃声が弾より先に届いたりといった奇天烈な出来事が起きていますがいちいち指摘するのも疲れるのでこれでやめ。
というか、書く前にネットででも調べて欲しいですよね。高価な専門書なんか買わなくてもwiki見るだけで判るレベルの事をエラーしまくっているって、どんだけいい加減な仕事やっているんだと。
あとがきで
「この作品は文学だ」と壮大な冗談をかましたり、思ったほど作家として評価されてないと嘆くのも結構ですけど、何故そうなったのかはこの作品を読めば原因がわかると思うんだ。
肥大した自意識に満ちたリーダビリティ無視の文章、物事を一切リサーチする事無く執筆する姿勢、必要以上に攻撃的な内容…。結局記述エラーばかりが気になると言う事はそれだけこの作品に没入して読めてないと言う事でもあり、色々と構造的な部分が合わないということに行き着きます。
たぶんぼく自身が何がおかしいかも気付かない人だったら、これは凄い作品だ!遂にラノベは文学を凌駕した!!と絶賛していたのかもしれませんが…。
ラビオリ・ウエスタン (ファミ通文庫)芥川 明