2009年02月28日

ムーミン谷の夏まつり 感想

ムーミン谷の夏まつり
Tove Jansson 下村 隆一
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北欧の夏というのが一体どんなものかは知らないけど、この作品を読む限り日本の暑苦しい夏とは全然違うんだろうなと感じました。
世界有数に湿度の高い夏を宿命付けらけた日本ではここ何年かの気温上昇も手伝って非常に忍耐を要求されるシーズンというイメージが強いですけど、北欧…そしてムーミン谷の夏は静かに生命が息づく季節という感じ。


洪水で家が沈んでしまったというのに、決して悲観的にならないムーミン一家のポジティブさが凄い。
これは物語だからそうなのか、それとも海外の人は日本人ほど土地屋敷に執着が無いのか、非常に気になる部分です。
流れ着いた劇場にムーミン一家が移り住んでも、元の住人であるエンマは一家を追い出そうともしない感覚も、やはり日本では考えられない。こういうところが文化の差なんだろうなあ。

この巻では物語の流れが幾つかに分岐し、そしてまたラストで一つになる構成となっています。
具体的には劇場のムーミンパパ達、途中ではぐれたムーミンとスノークのお嬢さん、そしてスナフキン。
この3つが時々接点を匂わせつつ同時並行的に進行して行くため、今までの視点が比較的固定された作品よりは慌しさを感じる部分もなきにしろあらず。
ですが、3つの流れ全ての根底に家族の愛情や信頼という共通したテーマがあるため、非常にまとまりが良くて読みにくいと言う事は決してありません。
ラストで冒頭ムーミンママが作っていたミニチュアのボートがさり気に使われているのも上手いなあと感じた。


ところで読んでてフィリフヨンカってこんなキャラだったっけ?と感じたので調べてみたら、フィリフヨンカって個人名ではなく種族の名前だったそうで…でもそれで納得。
では叔父がフィリフヨンクと言うのはどうしてなんだと疑問もありますが、多分性別によってヨンカだったりヨンクだったりするのだろうと勝手に解釈しておきます。






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2009年01月28日

鋼馬章伝 1 ボナベナの騎士 感想 安彦良和

鋼馬(ドルー)章伝〈1〉ボナベナの騎士 (徳間デュアル文庫)
安彦 良和
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鋼馬(ドルー)がバイクの事ではなく、文字通り機械の馬というストレートさが良いです。

物語は鋼馬好きの少年スークが憧れの自分のマイ鋼馬「ヴァロ」を手に入れ、鋼馬乗りの憧れの的である騎士を目指すという割と判り易い成長モノ。
世界観は異世界ファンタジーで、文明の水準は歴史区分で言うと中世の終わり頃の雰囲気でしょうか。
と言ってもヨーロッパと言うよりはインドや西アジア的な雰囲気が微かに漂う世界なので、もしかするともっと近世寄りかも知れませんし、チャンポン状態かもしれません。
初歩的な銃が存在していることから15世紀〜16世紀の雰囲気かなとは感じたのですが。

鋼馬はそんな世界におけるオーパーツ的存在です。
鋼馬そのものと動力となる「ヴリル」の製法に関してはごく一部の一族にのみ伝承されているものの、起源は神話の時代にまで遡るもので…この辺は微妙にSF要素を感じさせます。


1巻では馬丁をしていたスークが数奇な運命のうちに騎士になるまでが描かれますが、騎士といっても領地を持ついわゆる騎士ではなく、作中では馬を使った騎馬戦を行いファイトマネーを稼ぐ闘士の様な存在です。
確かに人気商売ではありますが、憧れるようなものなのかなあ…。
もっとも、スークが馬を買った金も泥棒の片棒を担いで手に入れた金だったりするわけで、そうした面から考えるに我々の感覚とは大きく異なる常識が罷り通った世界なのかもしれません。

まだまだプロローグと言った感じで、女盗賊や馬喰のベーメなどとの出会い、そして沼で遭遇したグルームの伏線がこの先どういう波乱に繋がっていくかは未知数。
安彦ファンタジーのお手並み拝見と言うところです。






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2008年10月13日

ムーミン・コミックス 1 黄金のしっぽ 感想 トーベ+ラルス・ヤンソン

黄金のしっぽ ― ムーミン・コミックス1巻
トーベ ヤンソン
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ムーミンの漫画版。
もともとはイギリスの新聞に連載されていた漫画と言うことだそうです。
日本の新聞の4コマ漫画とは違ってある程度大きなストーリーに沿って物語が展開するのが特徴で、日本の新聞の掲載作品に例えるなら連載小説の方に近いかも知れません。

1巻に収録されているのはムーミンの尻尾に黄金の毛が生えて来ることで巻き起こる騒動を描いた「黄金のしっぽ」、パパの気まぐれで突然一家が灯台守になる「ムーミンパパの灯台守」の2編。


前者はしっぽが黄金になった事が新聞やテレビで報道されて突然有名人になってしまったムーミンを通して、ブームの盛り上がりと急速に醒めて行く様を風刺した短編。
有名になった途端に、黄金のしっぽの本家本元は自分だと主張して起訴してくる人物が現れたりと、今までのムーミンのイメージを覆す生臭さが何ともいえない。
ムーミン谷ってもっと街から離れた深い森の中にあって、そういう世間のゴタゴタから隔絶された世界だと思っていたのですが、どうやらそうでもなさそうです。

日本でも昔エリマキトカゲとかの珍獣ブームが猛烈に盛り上がり、一気に醒めて行く事が何度かありましたので何となくブームの滑稽さが判るなあ。


2編目は灯台守の募集広告を見たパパがロマンを求めて応募し、一家で灯台島に引っ越す事になる話です。
こちらは「黄金のしっぽ」と違って従来のムーミンのイメージに合致した作品。
やはりこういう作品だと作者の国の風土が出るのか、比較的波静かで多数の小島が点在する海の描写からはフィンランド湾を連想させるものがあります。
温暖な地域の海と違って、色彩に欠けた鈍色で寂寥感が強く漂っているのも北の海のイメージどおり。
更に灯台島に機雷が流れ着くあたりは、フィンランド湾の最深部に厄い国の重要港湾都市レニングラード及びバルチック艦隊の母港クロンシュタットが存在する事を連想させて(原作小説でもアメリカからのラジオを受信して聞くシーンがあるので、当然作中世界にソ連が存在していても何の不思議も無い)、一見平和なムーミンワールドもやはり世界の大きなうねりの影響からは免れ得ない様です。

ある意味、こういう背景に何がしか皮肉が透けて見えるところがこの作品の味と言うか、単なる児童文学の枠内に収まりきれない部分だとは思うのですが。


小説版ともども折に触れて読んで行こうと思ってます。



小説版


ムーミン谷の彗星 感想
たのしいムーミン一家 感想
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2008年09月20日

たのしいムーミン一家 感想 トーベ・ヤンソン

たのしいムーミン一家 (講談社文庫 や 16-1)
トーベ・ヤンソン
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春、冬眠からの目覚めに始まり、秋の訪れまでのムーミン谷を描いたシリーズ第3作目。
タイトルだけ見ると1作目に思えてしまうのはご愛嬌というか、紛らわしいので何とかしろというか。
ちなみに事実上の第1作目に該当する「小さなトロールと大きな洪水」に関してはかなり入手が困難な状況なので未読。


2作目の「ムーミン谷の彗星」が結構冒険要素を含んだスケールの大きい話だったのに対して、今作はムーミン谷の日常に、飛行おにの帽子やニョロニョロの島と言った小さな不思議や冒険を若干のスパイスとして加えたと言う感じ。
冒険よりも谷の日常に比重が置かれているだけあって、谷の季節の移り変わりや谷の住民達がしっかりと描かれていて、前作が役者を揃えるための話で、今作はそれを掘り下げていく話とも言えそうです。
意外と我の強いスノークのお嬢さん(アニメではフローレン)や気難しいじゃこうねずみなど、どのキャラクターも変に個性が強いのは、様々な人間のタイプを戯画化したからとも言えそうですが、特に小難しい哲学に浸って引き篭もる癖があるじゃこうねずみなんかは、その社会性を欠く言動も含めてネット界隈で過激かつ衒学的な意見で持って釣り行為に勤しむ一部の御仁達の姿とかなりの部分でダブって見えます。
当然この作品が書かれた当時ネットなんて存在すらしませんでしたが、いつの時代にもああゆう人は存在すると言う事でしょうか。
だとしたらちょっと厭だな・・・。

しかし、この作品が真に素晴らしいのは、そうした一癖二癖あるキャラクター達が皆適度な距離を維持しながら大きな諍い無く共存している事にあると思います。
殊更友情だ、友愛だ、仲間意識だ・・・と言ったメッセージは含まれていないのに。
時に言いたい事はきちんと言い、時に面倒な事は聞き流す。必要以上に判り合おうとはしないが、かと言ってタイプの異なる者を排除しようともしない。
たったこれだけの事で、ムーミン谷の住民達は上手くやって行けている訳です。
ムーミン谷って、そこに住む人たちを含めてある意味理想郷かも知れません。



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ムーミン谷の彗星 感想


ラベル:ファンタジー
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2008年04月14日

ムーミン谷の彗星 トーベ・ヤンソン

ムーミン谷の彗星 (講談社文庫 や 16-2)ムーミン谷の彗星 (講談社文庫 や 16-2)
トーベ・ヤンソン 下村 隆一 Tove Jansson

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2008年01月20日

ドラゴンキラーあります 海原育人

ドラゴンキラーあります (C・NOVELSファンタジア)
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無法者が集まる街に住む元脱走兵のココ。
この街で便利屋家業を営む彼の元に転がり込んできたのは、ドラゴンキラーと呼ばれる最強の生物兵器リリィと、その連れアルマ。
実はアルマは某国の王女で・・・。

舞台となる街が街だけに、みなさんとても口が悪いです。
トラブルになると、交渉よりも先に鉛弾が飛び交い、死人が出ても直ぐに掃除屋が片付けてしまうなんて・・・それなんてロアナプラ?

ストーリーは帝国のお家騒動を巡るもので、特に捻ったものではありません。ドラゴンキラーと言う存在についても、基本的にはものごっつい超人だと言う認識で問題ないでしょう。
結構血腥い展開なのに、どこか軽妙な雰囲気なのは美点。言い換えるとそれだけ命の価値が安い世界と言う事でもありますが、最近はこういうマッチョズムが流行しているのは承知なので、特にそれについて思うところはありません。
そういうものだと思って読めば、多分さほど気になる事もないのでは。
飛びぬけて面白い!と言うほどではありませんが、リリィさんの変化してゆく様子はそれなりに見ていて微笑ましいものがありました。
基本は堅物なんですよね、リリィさん。
・・・まあ、僕はパン屋のアズリルがいいなあと思う訳ですけれども(笑)。


*過去記事*
ドラゴンキラーいっぱいあります感想
ドラゴンキラー売ります感想


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2008年01月03日

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2007年11月01日

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2007年09月25日

魔法探偵 南条竹則

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2007年08月19日

2007年01月20日

空の中 有川浩

いっぺん間違ったことを正解にすることはできると思う?

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2007年01月17日

ぼくのキャノン 池上永一

私はこれを『キャノン様』って呼んでいるんだ。その方が強そうだろう。でも内緒だよ。

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2006年08月28日

楽園の知恵/牧野修





以前コメントを頂いたあひるさん推薦の一冊。早速amazonで取り寄せて読んでみました。
内容は短編集と言う事で、ホラーテイストあり、不条理あり、コメディありと盛りだくさんなのですが、牧野節とでも言うのでしょうか、現実と薄皮一枚で隣り合う妄想世界との境界が溶け出したような、延々メタな文章の洪水で躁鬱渾然一体となったなまめかしい世界観だけは共通しています。
この部分にこそ牧野作品の魅力があると僕は思っていますが、人によっては意味不明に感じるかも知れません。客を選ぶ作家ではありますね。

個人的に好きな話は「召されし街」でしょうか。グロテスクでありながら美しい。本当にこの作者の頭の中は一体どういう構造をしているのでしょう。
馬鹿馬鹿しくて笑えたのは「演歌黙示録」。演歌と魔術の関係を民明書房ばりに胡散臭く解説したと思ったら、いきなり終盤は宇宙的恐怖、いわゆるコズミック・ホラーに結びつける強引さ、全く予想できない展開です。

他の短編もどれも味わいのある作品群ですので、最期の1Pまで退屈する事無く読めました。
信者になりそうな悪寒。


41冊目。
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2006年05月08日

お化けだぞう



記念すべき一作目はつい先日読了したお化けだぞうです。
アマゾンを流している時タイトルと粗筋に惹かれてゲット。

「江戸日本橋の呉服商、浜田屋主人藤兵衛たちが遭遇する、草木自然界と人間を巡る摩訶不思議な物語。」

と粗筋にあるとおり、自然界の摩訶不思議を求めて旅する大店の主人(途中から隠居)の物語。
結構ストレートな妖怪ものですが、ホラー要素は希薄でどちらかと言うとファンタジーに分類して良いかもかも。
構成は一話完結で全11本。あくまで相互に介入しない、人は人として、物の怪は物の怪としての距離を保ちつつ自然への優しい視点を含めて描かれています。ノリ的には「蟲師」なんかに少しだけ近いかも。
個人的には第9章の天くだる五穀が好きな話かな。

ただね、いただけないのは舞台が江戸時代なのに現代の用語で現象を説明してるのよ。エネルギーとかバリアーとか、そりゃ興が冷めるでしょう。力の源とか障壁とか書けよと。
あと後半は展開が人間寄りというか、浜田屋夫妻がメインになってきた事かな。
最終話の第11章 海を渡る蘭では草木の怪は一切出て来ませんし。いや、作者としては浜田屋夫人のタキ・・・ひいては女こそ一番摩訶不思議だと言いたかったんだろうけど。
それにしても唐突な終わり方ちゃ終わり方だよ。

何のかんの言っても結構楽しく読めた作品だったけどね。



posted by 黒猫 at 13:46| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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