2011年01月28日

光の帝国 常野物語 感想 恩田陸


光の帝国 常野物語 (常野物語) (集英社文庫)
恩田 陸
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常野というキーワードで繋がった超能力を持つ一族の連作短編集。

すこしふしぎに始まってホラーからバトル風味まで、話毎に違った味わいがある。
舞台設定も現代からいつの時代かわからないものまで多彩で、たとえば表題作の「光の帝国」の舞台は未来の日本か、或いは平行世界の日本を思わせる不穏な時代を舞台としている。
もしかしたら太平洋戦争直前を描いたつもりなのかも知れないが、常野の者の能力の軍事利用を部隊としている目論む軍が常野に"特殊部隊"を潜入させてくるというくだりで、俺はこれは遥か未来か或いは平行世界だろうと思った。
なぜなら過去の日本軍に特殊部隊と呼ばれる内容の組織が存在した事実はないからで、無い筈のものが存在している=平行世界と理解するのが最も論理的なのは言うまでもない。
もちろん平行世界とする論拠は他にもあって、常野の人々の中心人物であるツル先生に関しては、時間と空間を超えて存在できる能力者である事を思わせる記述がある。
時間と空間を超越し、無数に存在する平行世界を渡る者…ロマンではないですか。

バックストーリーはかなり壮大な雰囲気だけど、その辺りは匂わせる程度にとどめているのが確信犯的。超常の力を持ちながら、あえて野にある生き方を選ばせる事となった経緯など、気になることは五万とある。その辺りを少しずつ描いていくのだとしたら、なかなか面白そうなシリーズだと感じた。



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2011年01月18日

ムーミン谷の十一月 感想



ムーミン谷の十一月 (講談社文庫 や 16-8)
トーベ・ヤンソン Tove Jansson
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ムーミンシリーズの最終巻は、冬の足音が迫るムーミン谷を舞台に、ムーミン一家以外のキャラクターたちが織り成す物語。ムーミン一家は旅に出ているという設定なので登場しません。

晩秋のある日、何かに導かれるように主不在のムーミンムーミンハウスへと集まったサブキャラクターたちが、数日間の共同生活をするというのがストーリー。
と言ってもムーミンシリーズのキャラクターたちはみんな個性が豊かすぎる上に自我も強いので揉め事ばかり。みんながてんでバラバラに主張しあうばかりで、読んでて結構どんよりしてくるモノがある。こいつらには空気を読むという概念はないのかと。
日本では穏やかな大人なイメージの強いスナフキンも、原作では機嫌が悪いと奇声を上げたりする結構アレな人(?)だからなー。まとめ役不在のまま終盤まで取り留めのない展開が続くが、そんな状態でも全員の心の中にはムーミン一家の存在がひとつの指標として存在していて、それが最悪の事態への最終安全弁となっていた感があった。だから最後には皆で同じ方向を向くことができたのかも知れない。

ムーミン一家を登場させない事により、一家の存在の大きさを感じさせるという手法。
誰もがムーミン一家のように仲良く穏やかに楽しく暮らすことは出来ないけど、そうあろうと努力する事はできる。そしてそれが一番尊い事なんだと感じた。



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2010年12月13日

ぼくらのひみつ 感想 藤谷治

ぼくらのひみつ (想像力の文学)
藤谷治 北沢平祐
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閉じた時間の環に囚われて、同じ時間を延々と繰り返すSFは昔から色々ありますが、この作品は停止した時間に囚われてしまった者の戸惑いと恐怖と諦念と狂気を描く一風変わった作品。
時間が停止していると言っても普通に人々は通りを行き交い、一見すると何の異常もない普通の世界。しかしテレビは同じ番組を描く延々繰り返し、時計の針は同じ時間を指し続け、そして太陽の位置もずっと固定で変わらない。
そして停止した時間に囚われた主人公の背中には謎の麻袋が張り付いていて…。

最初は一応時間SFかと思ったんですけど、SFと違って事象を論理的に解説できないので、どちらかというと幻想文学に近いかも知れません。


すこし前に2ちゃんねるで「>>1が糞スレ立てている間に文明はどんどん発達していく…」という煽りAAがありましたけど、感覚的にはあれをすごく連想させます。
フリーターの青年が停止した時間に囚われ、その中で自堕落に生きて行く。時は停止している筈なのに、自分の周囲以外の目に見えない場所では時が動いている事を伺わせる出来事が起きている。
そして何より、自分自身確実に年老いている。不可思議なガジェットを使用してはいるものの、その背後に見え隠れしているのは極めてリアルな諸事。
リアルすぎて説教臭さまで感じてしまう位に。

ここ近年、自由の解釈が急速に拡大したのと同時に、随所でレッセフェールが叫ばれるようになりました。どんな末路をたどろうと文句言わないから自由にさせろ、放っておいてくれ、定型的な生き方を押し付けないでくれ…などなど。
主人公の青年が閉じ込められた閉じた時間世界はまさに究極的なレッセフェール。時間が停止しているから一日中寝ていても構わない。泥棒を働いても露見しない。クレジットカードを使いまくっても請求されない。何をするのも自由放任の世界。しかしそれは一般的な人達の時間から切り離された無縁の世界でもある。
中盤で世間の感覚と相容れない価値観を持つヒロインが主人公の時間世界にやってきますが、最後には出て行ってしまい、主人公は無縁の世界で一人ひっそりと死んでいく。
自由とは社会のしがらみから解き放たれる事ですが、それは縁や絆から切り離される事でもある。それでもあなたは自由が欲しいですか?と問いかけられているような気がした。


最後の最後で背中に張り付いていた麻袋から死んだ主人公が転生?するのは一つの救いかな?
転生したのが主人公と同じ人間かどうかは明言されてないけど、死んだ主人公との記憶に連続性が伺えるので同じ人物と思っても差支えはないと思う。
転生した彼が今度は本来あるべき時間の中で生きる道を選ぶか、あるいはまた自由を求め朽ち果てていくか、それは神のみぞ知るです。


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2010年06月15日

護樹騎士団物語 4巻 熱闘!入団競技会 感想


護樹騎士団物語〈4〉熱闘!入団競技会 (トクマ・ノベルズ)
水月 郁見 鈴木 理華
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護樹騎士団第四巻。
いよいよリジューは騎士団入団試験に臨む…ということで、展開は派手になって来たかな。
入団試験が学科よりも実技偏重なのは気になるけど、物語としては守護機に乗って派手な立ち回りを演じてる方が面白いので問題無し。

さすが夏見先生だけあって、嫌らしい貴族を描かせると天下一です。
ライバルとなる貴族の子弟達は誹謗中傷、買収、脅迫何でもありで嫌な奴揃いすぎて噴いた。
まあ、金と権力はタチ悪いですからねえ。人を変えてしまうという意味で。

何気に今後のヒロインらしきミラボーが登場したりして、ノアンはどうなるの?とやきもきさせたりするところもあったが、舞台が変わればヒロインも変わるということか。
実際ミラボーの方がキャラクター的にも押し出しが強いし、こっちが本命なのかもしれませんが。



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2010年06月06日

誰かのリビングデッド〈3〉魔性 感想 海原育人

誰かのリビングデッド〈3〉魔性 (C・NOVELSファンタジア)
芳住 和之
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完結。前作ドラゴンキラーの時とは違い、特定のキャラクターにまつわる伏線以外はあまり引っ張らない構成だったので、巻ごとにざっくりとした展開だったけど、その分読み易かったと思う。
デルのマスターの登場の仕方などはかなりあっさりとしたものでしたけど、ロリババアで割と人としての器小さめで、この作者らしいキャラ造形だなと感じたかな。
魅力的な小物を描けるのって才能だと思います。

かつて世界を巻き込んだ戦乱を引き起こした当事者連中が主人公のすぐ近くで暗躍している割には、風呂敷をあまり広げないまま終わった物語でしたけど、あくまでプラスとナムの旅の物語だと思えばこれはこれでありなんだろうと思う。
海原先生は大きな視点で壮大な物語を紡ぐタイプではなく、主人公とその周囲5メートル範囲内での登場人物たちによる掛け合いを通して生き様を描く作風が得意なのかも知れない。
ハードボイルド小説のフォーマットに忠実というか。



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2010年02月05日

護樹騎士団物語3 騎士団への道 感想

護樹騎士団物語〈3〉騎士団への道 (トクマ・ノベルズEdge)
鈴木 理華
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3巻目にしてようやく護樹騎士団の存在が明確に語られました。
これまでにも台詞の端で触れられる事はあったものの、ほぼその場限りで存在を匂わせる程度の扱いでしたからね。長かった。実に長かった。

アイルコーン家の侵略と山賊団の跳梁を一挙に片付けるという事で結構慌ただしい展開の3巻。
しかし慌ただしい展開でありながらアイルコーンの守護機ザラマンダとの闘いの途中での護樹騎士団士官のアシュレイ・ジュード少尉との出会いと、彼に憧れて騎士の道を目指す決意をする事など要点はしっかり押さえてあるので、ただひたすら状況に流されるばかりの2巻に比べると物語がずっと引き締まった感じがします。

山賊の変態息子に×××されたノアン救出&討伐に関してはほとんどアイルコーン戦の返す刀という感じでしたが、リジューが初めて指揮官としての役目を果たしたという意味では結構大きな出来事だったかも知れない。
もう抜き差しなら無いところまで来てしまったという意味で。
3巻で一番印象的だったのはやはりオゾンのこすっからくも図々しい策士ぶりでしょうか。
リジューは完全に彼の掌の上で操られているよ…。


ところで、読者のターゲット層として女性を狙っているためか、挿絵が人物ばかりで守護機が全くビジュアルとして描かれないのですけど、せめて巻末にでも設定資料的なものを付けて欲しいと願うのは贅沢でしょうか。



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2010年01月16日

誰かのリビングデッド2 【愛情】感想 海原育人

誰かのリビングデッド〈2〉愛情 (C・NOVELSファンタジア)
芳住 和之
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誰かのリビングデッド第2巻。相変わらず堅調な面白さを維持しています。
今回はデルがまだ人間だった頃深い縁のあった人が登場したり、1巻冒頭でちよっとだけ触れられていたプラスの兄弟子?が登場したりと何やら賑やかに。


サブタイトルの「愛情」ですが、この2巻には3つの愛情が錯綜しています。
まずは兄弟子オールトのプラスに対する溺愛ぶり。ブラコンと言うかなんと言うか、まあ傍目から見たら変態一歩手前でしかないんですけどとにもかくにも愛情には違いない。すぶずぶに爛れていてたとしても。
続いて生前のデルと縁の深かった女魔法使いプロシュミと、彼女に想いを寄せる青年マシューの純愛劇。終盤の決闘シーンでのこっぱずかしいやりとりは読んでて赤面しそうなものはありましたが、マシューのひたむきな想いだけは重々理解した。
そして三つ目の愛情はというと3巻へと繋がっていく話なんだろうけど、店長のもと同僚である魔法使い『最果て』の魔女に対する偏執的な愛。

これらの愛情を優劣無しの等価として描いているのは海原先生らしいと感じた。
もともとハードボイルド気質のある作風の先生ですからして、第三者から見て歪んでいようとドロドロだろうと、本人が確たる思いの下にやってる事ならそれは一つの信念に違いないと言うことか。


愛情がトラブルを引き起こし、愛情でもってそれを収めるというなんとも因果な展開ですが、きっと世の中なんてそんなもんだろうと思う。
なんか3巻に向けて伏線を貼りまくる事がメインだったため、デルを作り出したマスター探しに関しては保留状態に近いですが、そこは完結編の楽しみとしてとって置く事にします。




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2009年12月17日

本の姫は謳う 4巻 感想 多崎礼 

“本の姫”は謳う〈4〉 (C・NOVELSファンタジア)
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この巻でいよいよ完結となった『本の姫』。

正直なところをいうと、この作家さんは1巻完結で書く方が持ち味を活かせるのでは無いかと思う。文字集めについても描きこむ部分と端折る部分との落差が大きくて些か物足りなさを感じた。
作風最大の特徴でありセールスポイントでもある緻密に張り巡らされた伏線に関しても、全てをすんなり把握するには全4巻は些かボリュウムがありすぎる。
もちろんこれは自分の様に次から次と本を読む人間にとっては伏線確認のために再読するには分量が多いと言う話であって、普通に読む向きの人にとってはまた違った話だとは思いますが。

本編はと言うと、ラストだけあって全てがあるべき場所、あるべき形へと一気に収められて行った感がありますが、レッドの処遇がアレでいいのかなあとやや釈然としない点も。
もちろん物語の公式の中ではあれ以外無いという結末だったんですけど、読者の心情的にはちょい甘くないかと言う話で。
逆に思わせぶりに死んで、最後まで死んだままだったウォルターは…。

やや不満点もある一方で、アザゼル達の時代ととアンガス達の時代を繋ぐ姫の存在に関しては上手く予想の一つ斜め上を行っていてこの発想はなかった…と感心した。
SF的手法としては禁じ手に近いものではあれど、ファンタジーならこういうのも充分許容範囲でしょう。見事にみんなが幸せになる(極一部除く)締め括りに持って行った訳です。


このラストを踏まえると全四巻と言う分量は、余韻に充分な味わいを与えるのに必要な熟成期間だったと考える事もできる。むしろ全2巻程度だとこのラストは唐突に感じてしまうかも知れない。
しかし上記のように分量的に気軽に読めるというものでもなく、なんとも悩ましいです。
それでも何だかんだ言いつつ作品として楽しめたのは間違いなですけどね。



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2009年12月06日

護樹騎士団物語2  アーマンディー・サッシェの熱風 感想 水月郁見


護樹騎士団物語II アーマンディー・サッシェの熱風(かぜ) トクマ・ノベルズ
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相変わらず展開は遅い。
2巻ではドゥクトの領有権を巡る争いの混乱の中で、"僕は関係ない"と城下町を逃げ出したリジューが盗賊団の襲撃を受けたり、保護を求めた中立領主が実は盗賊団と結託していたりと実に嫌らしい経験を経て、少しずつ戦う決意を固めていく流れが描かれています。
恐ろしいことに感の7割近くがリジューの逡巡に関する描写で、流石に冗長な感は否めない。
それでも文章がテンポ良くて非常に読みやすいので、気がついたら読了していたというのは1巻と同じなのですが、改めて振り返ってみるとその展開の遅さに面食らう。
アニメで例えていうと、1話分の話に単行本1冊まるまる費やしているという感じです。
多分この先の感も展開速度は似たり寄ったりだと思うので、ある程度覚悟して読む必要はあるかな…。


と、そんな感じではありますが、幾つかは今後の展開に繋がってきそうな要素も。
例えばリジューをごろつきから救った商人の息子ヌーサ・クロウは今後もリジューとの縁が続きそうですし、この巻で初めてタイトルにもある「護樹騎士団」の存在が語られましたし、適度に期待感を煽る仕掛けは散りばめられているんですよね。
この匙加減が憎いというか、冗長さを相殺しているのですが、どうせなら煽りつつもテンポ良く…と望むのは贅沢というものでしょうか。
とりあえず3巻ではシュペル・アンヴァイールでの大活劇に期待ですね。
守護機の輸送台でもって合戦のさなかに突撃して人身事故しまくりんぐなワイルドさを発揮したくらいですから、やってくれると信じている。


護樹騎士団物語1 感想

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2009年11月28日

誰かのリビングデッド 1巻 "不浄" 感想 海原育人


元ホームレスの少年とフリーターの少女が、ふとした事で拾ったリビングデッドの青年を巡る騒動に巻き込まれていくという筋書き。巻き込ま型のストーリー展開は前作ドラゴンキラーシリーズにも通じるものがあって、どうやら作者さんお得意のパターンみたいです。
そういえば前作の主人公ココも世間的ヒエラルキーでは下の方に位置するポジションでしたけど、今作の主人公もまた。
エリート萌えブーム蔓延るこのご時世に、真逆を行こうとする作者の姿勢はココや店長以上にハードボイルドだ。


上でホームレスだフリーターだと書いたのですが、一応はファンタジー世界の物語です。
本当に一応は、という感じですけどね。文明の進歩具合や魔法の存在など舞台設定はまっとうなんですけど、登場人物の設定は何かと現代の社会を暗喩しているようで、「小間使いとして働いていた先から逃げ出してホームレス化」「定職に付かず気ままに生活」「主に捨てられた生きる屍」とかなんとも香ばしすぎる。
会話から感じ取れるメンタリティも現代人のそれとほぼ変わりないもので、深読み&無駄読みしようと思えば出来るのは間違いないんですが、まあ別に無理に深読みしなくても充分楽しい作品なので問題はないかな。


個人的には前作ではハードボイルドとピカレスクが些か混同気味だったのが気になっていたのですが、この作品ではその辺りの部分がかなり修正されているのが嬉しいところ。
畑の作物を盗もうとしたホームレス少年のブラス(主人公)を拾ったパン屋の店長は、30年前世界を統治していた魔女を殺害した"不浄"と呼ばれるネクロマンサーだったりする訳ですけど、魔女を殺害した理由から猛烈な固ゆで匂が漂っていてカッコイイ。例え自分の行動の結果が世界を戦乱に叩き込む事だとしても、自己の規範だけは曲げない。これぞハードボイルドという感じ。
もっとも、店長の店はは硬ゆで卵じゃなくて固焼きパンが名物らしいから、ハードグリラー(ベーカーか?)とでも呼んだ方がいいですかね。
ところで何かと気になる店長の幼女フリーさんですが、1巻巻末でブラスたちはリビングデッドのデルのマスターを探す旅に出てしまうので、2巻以降は出番無しですかあ?
微妙にテンポのずれたキャラクター性が好きなんだけどな。


誰かのリビングデッド〈1〉不浄 (C・NOVELSファンタジア)
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2009年11月16日

護樹騎士団物語 螺旋の騎士よ起て! 感想 水月郁見

ロボットファンタジーものの変り種小説。
ファンタジーにロボットという組み合わせそのものは決して珍しいものでは無いんだと思うけど世界観が結構独特で、守護機と呼ばれるロボットは所謂魔法の力とか太古の超科学とか言った類の力の上に存在しているのではなく、現在進行形で生産配備されている…つまりかなり科学の水準の高い世界でありながら、平民と貴族との間に絶対的な身分差が存在する中世的な世界でもある。
しかも1巻時点では仄めかす程度にしか書かれていないものの、複数の異なる世界が多元的に存在する設定も感じさせるものがあり、相当にスケールが大きな物語と思われます。

ロボットの操縦描写に関してはかなり現用の航空機を意識したものになっていますが、著者の水月さんは夏見正隆氏の別名義らしいので、なんとなく納得。
そう考えると、露悪的に描かれた極端な身分制度なども、「レヴァイアサン戦記」当時から夏見氏の作品に漂っていた強烈なルサンチマン精神の延長上にあるのかもしれない。


それなりに派手なロボットアクションもさることながら、比較的真っ直ぐな主人公の少年リジューを取り巻く大人たちの生臭い事情もしっかりと描かれていて、本人の意思不在のままどんどん深みに嵌っていく展開はなかなか面白いです。
特に1巻で描かれる事件で死亡した?ディオデイト家の子息エミュールの代替として、家人達によって当主に祀り上げられてしまう展開は強引ながらも一応の説得力(ディオデイト家が途絶えると家人たちは職を失うので、彼等の生活の為に偽者を演じる事を余儀なくされる)があってよかった。
また、一応は中盤で死んだ事になっている模様のリジューの父に関しても、おそらくは意図的に状況をぼやかしていて実質的には生死不明状態なのが非常に先を読みたい気持ちにさせてくれる。

所謂ハイ・ファンタジーの様な硬派さがある訳でなく、作中世界の技術の描写に関しても甘いけど、物語を読ませるという点に関してはかなり巧みだと言わざるを得ないです。


護樹騎士団物語2 感想


護樹騎士団物語 螺旋の騎士よ起て! トクマ・ノベルズ
鈴木 理華
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2009年11月12日

本の姫は謳う 3巻 感想 多崎礼


別視点で続いてきたアンガスとアザゼルの話がかなり修練されてきた感じです。アークがアザゼル編のあれだったのかー!的な伏線の繋がりも見えてきて、作品自体がまとめに入ってきた感が強い。
ただ、ひたすら温度に差がある物語を平行線上で進行させてきたせいか、それぞれの物語が共に劣らぬ個性のようなものを持ち始めてしまい、これを1つにつなげるのは結構大変だろうなあという気も。
とにかくシリアスなアザゼル編、どこかお気楽なアンガス編。二人の主人公の性格がそのまんま話のムードまで強く牽引してしまっていますからね。
なお、もちろんこれは作品の瑕疵ではなく、それだけ一つ一つの物語の完成度が高いという事でもあります。

ともあれ本来なら完結となるはずだった3巻、まさかラストが1巻冒頭のシーンに繋がるとはと意外な展開でしたが、それだけに真の最終巻となる4巻が気になって仕方ないです(これ書いている時点ではまだ購入して無い)。
これまでの伏線を整理すると、残すところは姫にまつわる部分とアンガスとアザゼルの関係、あとはレッドの真意位でしょうか。

個人的にはスカタン人形なセラ様に最後はもっと出番をあげて欲しいです。3巻はインパクトはあるもののやや出番が少なかった気が。基本〜ですの系で時々ドキソな彼女の様子からは心の内圧の高さが伺えて、密かに本作品一番の見所だと思っているのですが(笑)。

“本の姫”は謳う〈3〉 (C・NOVELSファンタジア)
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2009年10月29日

ドラゴンキラー売ります 感想

ドラゴンキラーシリーズ完結編となる「〜売ります」、ですが、何か微妙に完結して無いような…。
とは言え、アルマを巡って送り込まれてきた4人のドラゴンキラーとのバトルは、町を戦場に変えるほどの派手なものになりましたし、事が終わって振り出しに戻ったような読後感も悪くは無いです。
だから、なんか完結して無いなあという印象もあるけど、それが決してネガティブな意味では無い。いつでも続きを書こうと思えば書けるけど、ひとまずはここでオシマイという計算された未完と言う感じですかね。

一応主人公のココが最後まで小悪党のままだったのは美点。
変に仏心を出したり改心したりする事も無く、基本的には自己中だけど微妙に甘いところもあるという当初のキャラ設定を崩す事無く描ききりました。
上で触れた微妙に完結して無い感じというのも、ココがラストまで好きにはなれないけど嫌いにもなれない人間性をぶれる事無く貫いたからこそと言うのは間違いなくある。リリィの言うように、町を離れていたとしたら、そして堅気として生きていく事になったら、それはもうココじゃないし、この先も物語は続くと言う感じはしないでしょうね。


と言う感じで物語としてのひとまずの終わり方そのものに関しては悪い印象はありませんが、やはり頁の都合なのか伏線をあっさり処理されたジンの様な存在があるのは気になるちゃ気になる。
章の始めのモノローグまで貰って伏線張っといて、回収する事無くあっさり死亡というのは寂しい。
全体として4人のドラゴンキラーはあっさり処理された感が強く、やはり1冊に4人ぶん詰め込むのは無理があったとしか思えない。処理こそされなかったけどアイロンも陰が薄いままだったし。

いつか第二期とかやってくれるといいな。ファンタジーとは言え筋書きそのものは海外のアウトローものドラマみたいな感じなので、シーズン化されても違和感無いと思うのですが。


*過去記事*
ドラゴンキラーあります 感想
ドラゴンキラーいっぱいあります 感想

ドラゴンキラー売ります (C・NOVELSファンタジア)

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2009年10月03日

本の姫は謳う 2巻感想 多崎礼



アンガス編と「俺」編のリンクがおぼろげに見えてきた感のある第2巻。
一応3巻完結予定だったけど、諸般の都合により全4巻になったと言う経緯があるとは言え、物語の骨格部分はそろそろ見せてくれてもいいかなあと思うので、アンガスの家族の話や姫との出会い、「俺」とリグレット、そして聖域とネイティブとの相克と言った部分を描いてくれたのは個人的に良かったと思います。

が、その一方で物語のメインにはあまり関係の無いスベル回収部分がかなりなおざりに処理されていて(まあ一つ一つ丁寧に描いていたら本が何冊になるか判ったもんじゃないとは言え)、これは無いよなあと思った次第。
やっぱり3〜4巻程度に収めるには話のスケールが大きすぎるのかもしれません。


セラとアンガスの旧友ウォルターを巡る展開はそれなりに面白かったかな。アンガスが絵に描いたような草食系なので別に三角関係とかそういうのは無いですけど、それなりに読者をやきもきさせる事には成功していたと思います。
言葉を取り戻したセラの口調には賛否両論ありそうですが、個人的にはお嬢系のですの調と、いかにも民草っぽいワイルドな言葉が不自然にミックスされた味わいは嫌いでは無い。
なんというか、ねるねるねるね的な心地よいグロテスクくさを感じると言うか。褒めてんのかけなしてんのか判りませんね。我ながら。


と言う訳で、一つ一つのエピソードそのものは悪く無いんですけど、全体の構成としてややまとまりが悪く感じました。
中盤の中だるみですかね?


“本の姫”は謳う〈2〉 (C・NOVELSファンタジア)“本の姫”は謳う〈2〉 (C・NOVELSファンタジア)

by G-Tools



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2009年09月18日

“本の姫”は謳う 1巻感想

“本の姫”は謳う〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)
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最近では結構貴重かもしれないロードムービー調のファンタジー。
前作「煌夜祭」が重苦しい閉塞感に包まれた作品だったのに比べて、登場人物が全体的にノリが軽くてライトノベル的ではあります。
ラノベ的ムードを特に強めているのはツンデレな本の姫様と、お調子者のジョニーかなあ。別に否定的な意味ではありませんが、こういう比較的属性のはっきりしたキャラクターが登場するといかにもな感じになるのは否めません。
もっとも、全4巻の長編である事を考慮すれば、こういう雰囲気の方が気楽に読めるのは間違いないですけど。


1巻と言う事で、やはり世界観や登場人物の説明を兼ねた展開が描かれてはいますが、解説臭くならないようストーリーの中に自然に作品の基礎設定を織り込んで描いているのはよいですね。
奇抜な世界観だった前作に比べて、基本的な世界観に西部開拓時代の雰囲気を拝借しつつ、本やスペルといったこの作品独自の設定が簡潔かつ効果的に配されているので、物語の舞台となるソリディアス大陸世界をイメージしやすいのは最大の美点。

また、主人公アンガス視点と、時代も場所も判らない"俺"視点の2つの軸で進行する物語に関しても、前作を読んでいる人間には別々の物語がどう絡み合って1つになるのだろうかと予想する楽しみがある。
前作を読んでないと構造的にやや戸惑う可能性もあるかもしれませんけどね。

ここ何年かファンタジーものに飢えていた事もあって、これは楽しみなシリーズ。



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2009年09月12日

光降る精霊の森 藤原瑞記 感想

光降る精霊の森 (C・NOVELSファンタジア)
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うん、ファティがかわいいね…。
…おっと、作品の内容に関してはもう描く事が尽きたぞ(汗)。

なんというか、この作品、下地となる世界観の設定は物凄く良く出来ていて、精霊の設定とかエカラートの城とか、その他旅の途中で食する野外料理に至るまでとにかく描写が細かいのが特徴的です。
そこまで詳細に書かなくてもストーリーには何ら差し支えないだろうと言うレベルまで書き込むことによって、作品世界をありがちなライトファンタジーよりももう一歩突っ込んだものとして際立たせていて、読んでいる僕の脳裏にも次々と情景が質感を伴って浮かび上がって来るのが美点。

しかしその反面、物語そのものは極めてこじんまりとまとまってしまっていて、なんとも地味。
たぶん、この作品の世界を主人公を変えた短編形式で様々な角度から描くと、SFによくある「××シリーズ」みたいな感じで膨らんでいく素地があると思うのですが、いかんせん一冊きりではせっかくの世界観もその魅力を発揮する間も無く終わってしまった訳で、実に勿体無いといわざるを得ない。

悪く言えば設定に拘り過ぎてストーリーがお留守気味と言う事なのですが、しかしかつて異世界を想像(創造)しては楽しんだ経験のある人なら、この作品から漂ってくる一種独特の拘りには共鳴するものがある筈。
セールスの問題もあったんだろうけど、気長に育てて欲しかった作家さんかもしれません。


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2009年08月26日

煌夜祭 感想 多崎礼


煌夜祭 (C・NOVELSファンタジア)
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2人の語り部によって紡ぎだされる物語が絡み合い、一つの大河物語として出来上がっていく様が見事。
舞台となる十八諸島輪界と言ったRPG的閉塞感を伴う世界観の構造は正直説明不足だと思うけど、しかし物語として面白いとそうした設定の瑕疵なんてほとんど気にならないのも事実。
むしろ世界設定の閉塞感すら作品そのもののエッセンスとして利用している節があります。


最初から全ての答えと役者が揃っていて、しかし最後までそれを読者に確信させない。
だから幕間の語り部同士の会話が気になって気になって仕方ない。
目新しい一発ネタやキャラクターのインパクトに頼らず、純粋に物語の力だけでこれだけの作品を仕上げる作者の力量には脱帽モノ。
これでデビュー作とか信じられないんだぜ…?
投稿歴17年とか自己紹介されていますが、たしかにこの(良い意味での)老獪さは二桁単位の年月小説を書いてないと身に付かないだろうな。
何せミスリードさされても卑怯だともずっこいとも思わない。ただひたすら素直に、「やられた〜」と言う感じで。
クォルンことムジカの正体とか、最初から気付いていたらエスパーだよ…。
最後まで読んでから改めて表紙を見ると、トーテンコフがちゃんとアレに見えてくる辺り、山本ヤマトさんの絵の冴えも見逃せない。


久々に文句の付け所が全くない作品を読んだ気がします。
この作者の作品は全部押さえておきたいですね。


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2009年07月30日

ドラゴンキラーいっぱいあります 感想 海原育人

ドラゴンキラーいっぱいあります (C・NOVELSファンタジア)
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ロアナプラも裸足で逃げ出す無法の街を舞台に繰広げられるガンアクションファンタジー第2弾。
今回はココの軍隊時代の上官が登場してココの過去に迫るエピソードが描かれる……かと思いきや、落ちぶれた上官とココとの意地と命を懸けた壮大な喧嘩だっのはどう判断してよいものやら。

同じく軍を抜けた存在同士ながら、ドラゴンキラーをパートナーとして小さいながらも自分の事務所を持つココと、飲んだくれの浮浪者でしかない中尉。
そんな現状に鬱屈とした思いを募らせる中尉はある時もう一人のドラゴンキラー、アイロンと出会い――。
まあ、なんと言うか何故もっと賢く生きられないんだろうかとつくづく思うのですが、それが出来ないから今ここにいるんでしょうね。

それにしてもココの非道ぶりはかなり突き抜けたものがあって、憂さ晴らしの為だけにチンピラを射殺するわ、一度ココと因縁が出来てしまった相手は後で報復の可能性があるからというだけの理由で皆殺しだわ、すげえ主人公だ。
しかしこれのどこがハードボイルド?
表紙にはハードボイルドファンタジーとか書いてるし、レビューサイトさんの中にもハードボイルドだと評しておられるところがありますけど、ハードボイルドとピカレスクを混同してない?
ハードボイルドって基本やせ我慢の世界だから、憂さ晴らしに暴れたりなんかしないし、後で報復があると承知した上で相手を見逃したりしてこそナンボでしょう。
バイオレンスとかピカレスクと言うなら判るけど、ハードボイルドとはちょっと違うんだなあ。


中尉とアイロンの屈折した内面は良く描けていたと思うけど、最後のシーンであっさりアイロンが心変わりしたのはどうも唐突な感じがした。まあ、頁数の都合なんだろうけど。


*過去記事*
ドラゴンキラーあります 感想
ドラゴンキラー売ります



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2009年07月22日

小さなトロールと大きな洪水 感想

小さなトロールと大きな洪水 (講談社 青い鳥文庫)
Tove Jansson 冨原 眞弓
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ムーミンシリーズの原点とも言える作品。

シリーズ化されて以降のムーミンに比べると設定に色々と差異があり、特にムーミントロールの姿は後のものに比べると随分違うのが興味深いです。
存在そのものも、人間の家のストーブの裏などに住んでいる妖精みたいなものとされていて、当然サイズもそれなりに小さい。

そんなムーミントロールの母子が、冬が訪れる前に安住の地を探して旅に出て、様々な冒険を経てムーミン谷にたどり着くまでの話。こう書くと結構長い物語の様に感じられますが、結構短い作品です。

ムーミンパパはニョロニョロと一緒に勝手に旅に出てしまって行方不明というのも何か凄いけど、これはもしかしたら執筆された当時の世情を表しているのかなと思ったりも。
執筆当時のフィンランドはソ連に対して、国内からドイツ軍を撤退させる事を条件に休戦を結んでいた頃だと思います。ようやく戦争が終わると思ったら、今度はドイツ軍相手にラップランド戦争が始まり…と、そんな状態。
この作品におけるニョロニョロは自らの意思があるのかどうかもよく判らない、集団で行動する生き物(植物)ですが、これはきっと軍隊をカリカチュアした存在だと思います。そう考えると、家族を置いてニョロニョロと旅に出てしまったと言う事がどういう意味なのかはなんとなく見えてくる気が。

後のシリーズではこうした暗い世情を匂わせるものは少しずつ減っていくのですが、でも完全に無くなる事はありません。海に機雷が流れ着いたり、アメリカのラジオを聴いて喜んだりと、ソ連の影が重くのしかかっている事を連想させる描写は随所にあるわけです。そういう意味で、ムーミンシリーズはフィンランドの苦難の戦後史を反映していると言えるのではないでしょうか。



たのしいムーミン一家 感想
ムーミン谷の夏まつり 感想
ムーミン谷の彗星 感想



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2009年07月18日

僕僕先生 感想 仁木英之


僕僕先生 (新潮文庫)
仁木 英之
4101374317



玄宗皇帝時代の唐を舞台に、ニート青年とボクっ娘神仙が繰り広げるロードノベル。


正直言うと最初は結構退屈でした。物語の流れが何処へ向かおうとしてのかさっぱり見えなくて、旅を通してニート青年王弁の成長を描くものかとも思ったのですが、確かにその要素はあるものの決してそれがメインと言う訳でもなく。最後まで作品の主題はよく見えなかったというのが第一の感想。

ただ、作品そのものとして面白いなと感じたのは、ファンタジーと歴史とライトノベルの要素を高次元で融合させる事に成功している事で、特にライトノベル的なラブコメ展開とは全く相容れない上に、客層も完全にずれている筈の歴史要素を巧く取り込んでいるのには脱帽。
基本ラノベは甘くてナンボであり、歴史要素なんて「こまけぇこたあいいんだよ!!」とか「歴史なんかどうでもいい、えーいラブを見せろ!」とか「歴史オタうぜえwwwww」と言った感じで嫌悪される部分だったりするのですが…。

物語としてはまだ面白いともなんとも言いがたい部分はありますが、作品としては実によく練られた造りで、それだけで充分楽しめるのはいいですね。続編も出ているみたいなので、物語としての面白さはそちらを読んだ上で判断したい。たぷんこの「僕僕先生」は1冊丸々プロローグみたいなものだと思うし。


ところで僕僕と王弁の関係は某素人童貞行商人とケモノさんに似てなくも無いです。
面白い事に刊行時期もほとんど同じで、かたやラノベと歴史を、かたやラノベと経済をと共に変化球勝負なのが興味深い。同時期にこのような作品が出現した背景に何かあるのか、ちよっと気になる。





posted by 黒猫 at 22:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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