2009年06月13日

戦闘員ヴォルテ 感想 谷甲州

戦闘員ヴォルテ (徳間デュアル文庫)


外宇宙における人類の敵との戦闘目的で、バイオ技術によって人工的に作り出された試作戦闘員ヴォルテが自我を持って軍から逃亡する話。
この手の兵器が自我を持つという話は得てしてターミネーター的に不気味なロボットや見るからに剣呑な自律兵器が人類に反旗を翻す展開が多いのですが、本作品の主人公にして人型兵器であるヴォルテはその姿形だけでなく精神構造も人間とさして変わらない存在で、個としての自由を求めて脱走するというのが面白い。
人間と違う点と言うと、肉体の強度と他のたいていの生物と精神を交感できる能力(これこそが一番の目玉なんだろうけど)位。


その設定からして神林長平の作品群よろしく深読み推奨作品な気もしますけど、深読みしなくても充分楽しめるのは大きな美点。
舞台がどことは明記されてはいませんが、作中から断片的に得られる情報から考察するに、ヴォルテが作られた研究施設はサハリン北部、そして彼が目指すヴァイズの故郷の街は恐らくはユーラシア大陸の反対側。
シベリアの極寒の森林や山を舞台にした逃避行はそれだけで読み応えがありますし、谷甲州先生お得意のジャンルでもある。

時に追っ手と戦い、脱走兵や密漁業者や収容所の仲間など数々の出会いと別れを繰り返しながら西を目指すヴォルテの旅は…残念ながら未完で終わるのが辛い。
一応執念深くヴォルテを追跡していた後藤大尉と、3体の量産型ヴォルテを倒した事で当面の追っ手は無くなったとは言え、移動距離を考えるとまだまだ物語は始まったばかりという感じなんですよね。
航空宇宙軍だけでなく地元警察とも大立ち回りを演じてしまっているだけに、シベリア鉄道に乗って一気に大陸の西側へと向かう訳にはいかないだろうし、苦難の旅路はまだまだ続く…筈。


航空宇宙軍史の世界観をある程度把握していたら、色々とヴォルテの今後を想像して楽しむ事も出来そうなんですけど、僕にとってこの作品が初の航空宇宙軍史なので、イメージを膨らませるに足るだけの情報が無いのが少し寂しい。
もう少し他の作品を読んで自分の中で世界観が構築できたら再読してみたい一冊です。



ラベル:谷甲州
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2009年04月20日

リングワールドふたたび  感想 ラリイ・ニーヴン

リングワールドふたたび (ハヤカワ文庫SF―ノウンスペース・シリーズ)


リングワールドの続編となる「リングワールドふたたび」です。

前作では広大なリングワールド世界をフライサイクルで軽く探索下だけと言う感じでしたが、今回はリングワールドの危機を救うために、もう少し突っ込んだ探索がなされています。

まるでマン・アフターマンを髣髴とさせる悪趣味なリングワールド世界の生態系が楽しめるのは個人的に面白く感じた。
生物的ニッチをヒューマノイドタイプの生物が適応進化して埋めると言う発想は、西欧的人類観から見るとかなり冒涜的な気がしなくも無いですが、環境が安定しているようでその実地下資源が無いなど文明にとって条件の厳しいリングワールドにおいては、文明の力によって環境に適応するのではなく、自らの肉体を変化させて環境に適応していかざるをえない部分もあったのではないかと妄想してみます。

流石に大海洋と呼ばれる広大な海に地球やクジン星などを模した大陸が点在し、そこにそれぞれ対応する星から連れて来た人類型生物が住んでいるというのは些か悪趣味と感じましたが、全てはリングワールドを建造したパク人のプロテクターの所業なので作者に罪は無い。
実際の宇宙ではクジン人の侵略をはね除けた地球ですが、リングワールド内の地球はクジン人に侵略されてペットになり下がっているとか、悪趣味すぎて笑えねえ。


前作でシーカーと共にリングワールドに残ったティーラが終盤最悪の形で再登場しますが、あれだけ無敵フラグを振りまいていた彼女の幸運が、彼女自身を守護するものではなくてもっとメタ構造的な幸運の為の踏み台に過ぎなかったというのは酷い話。
彼女の存在とリングワールドの危機が密接に関係しているために、ルイスは彼女を倒さないといけなくなるとか、これまた悪趣味な展開。
リシャスラの件も含めて格調高いハードSFと言う感じはほとんどありませんが、作者の露悪的趣味に溢れた良くも悪くもペーパーバック作品的な雰囲気は個人的には好きです。


ところで、前作でなかなかの愛嬌を放っていた猫型宇宙人クジン人のスピーカーが、今回はハミイーという正式な名前を貰って登場しますが、相変わらず猫科動物らしく気まぐれすぎで和む。
クジン星は究極の男系社会で、女性はほとんど知能を持たないところまで品種改良をなされているらしいですが、言っちゃ何だが雄猫ばっかりで社会システムを維持できるのだろうか。猫科の動物は概してオスは怠け者で働かないのが多い気がしますが…。

翻訳ではクジン人の姿は直立歩行するでかい猫としかイメージ出来ないのですが、あちらのペーパーバックの表紙イラストを見るとタイガーマスクみたいな感じの虎人間なんですよね。
好戦的な性格を考慮すれば虎が正解なのかも知れないけど、個人的には猫でいいな。それもブリティッシュショートヘアみたいにずんぐりむっくりた猫w


リングワールド 感想


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2009年03月30日

深海のYrr 中 感想 フランク・シェッツィング

深海のYrr 〈中〉 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-2)
北川 和代
4150411719



北海やフランス沿岸で発生していた災害が一気に北米まで拡大する中巻。

スケールが大きくなったのは結構な事なのですが、その割にyrrの行動原理が人類に対するテロ攻撃と言うのにはちょっと脱力しました。もちろんこれは人類側の推測でしかなくて、実際のところはまた違った真意があるのかもしれませんが、この作品が執筆された当時世界は対テロの戦いで沸き返っていた事を含めて考えると、自然に対する収奪ととまらない海洋汚染で業を煮やしたもう一つの知的生命――yrrが人類に宣戦布告したという安易なストーリーもあり得るだけに厄い。
文化の問題なのかどうか知らんけど欧米の人は物事を全て人間の基準で計る思考をしますから、未知の知的生命がどこぞのテロリスト的な考え方をしてしまっても仕方ないのか…。
異種の知性と異種の文明を持つ相手ならば思考ロジックもまた異なっていて然るべきだと思うのですが。


そんな中大いに笑ったのが、細菌兵器を満載した特攻カニによる大規模テロ攻撃に晒されたアメリカが対yrr戦に参戦する経緯。大統領がアメリカは世界で唯一神に祝福された国だとか口走るし、お得意の善悪二元論が始まるわで、作者基本的にアメリカ嫌いだからこんなカリカチュア(とも言い切れないところが厄い)しただろとツッコミ入れたくなる代物。アレじゃただのカルト信者だぜ…。

現実問題yrrはあくまで現時点では人類側の推測と過程の存在であり、仮に存在したとしても深海での戦いなんか想定していない現有兵器が通用する相手とも思えません。核爆雷でも爆発させまくって…というのはさすがに自滅パターンですし、アメリカの鼻息が荒いのは結構ですが具体的にどう立ち向かっていくかは気になるところ。


深海のyrr 上巻 感想

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2009年03月15日

プロバビリティ・ムーン 感想 ナンシー・クレス

プロバビリティ・ムーン (ハヤカワ文庫 SF ク 13-1)
Stephan Martiniere 金子 司
4150116881



これは不思議なSFです。
表紙のイラストやタイトル、そしてカバーに書かれたあらすじから大抵の人は、異なる宇宙からやって来た敵と地球人との宇宙戦争ものを連想するでしょう。

ところが、いざ読み始めると…何かが違う。
確かにあらすじに書かれていた宇宙戦争の要素は物語のバックボーンとして存在しています。
しかし、本編は「世界」と呼ばれる惑星を舞台に、「世界人」と呼ばれる異星人と地球人の交流を中心にしたストーリーに終始。
もちろんただのコンタクトものなどではなく、「世界」に秘められたある秘密が異なる宇宙からの侵略者に対抗する上で必要不可欠という理由があっての交流な訳ですが、やはりどこか消化不良感が残ります。

比較的人間に近い容姿と思考を持ち(地球人類とDNAパターンも極めて近い)、独自の精神性とあらゆる事の中心に花がある文化の世界人はなかなかに魅力的な存在であり、宇宙戦争云々を考えずに読むならそれはそれで面白いと思います。比較文化論的な意味で。
例えば「世界」を舞台にしたミステリーとかだったらもっと素直に楽しめたかなあ。
世界人の精神性の設定とか、絶対ミステリー向けだと思う。


物語は3部作と言う事で、この1巻だけでは正直何が何だか良く判らないというのが偽らざる感想。
月の物体の正体も謎のまま投げっぱなしだし、この1冊で何かを判断するのは無理です。
ただ、あと2冊に関しても従来の宇宙戦争ものとは大きく異なる展開で進むらしいので、所謂宇宙艦隊戦を期待している人には不向きかも知れません。
僕は…怖いもの見たさ的な意味で気力の続く限り読んでみます(笑)




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2009年03月09日

UMAハンター馬子―完全版〈2〉感想 田中啓文


UMAハンター馬子―完全版1の続き。
2巻となっていますがこの巻で物語は完結しますので、実質的には下巻というべきですかね。

1巻から引きずってきたヒダゴン編の後半に始まって、謎の漂着物グロブスターやここ最近人気のチュパカブラなど、今回も胡乱な面子が目白押し。
ただ、1巻当時は「UMAの正体見たり」的な展開が多くて、物語も章ごとにほぼ独立したものでしたが、2巻ではUMAを巡るあれやこれやの底流に馬子の正体や山野の陰謀がより色濃く感じられるようになってきて、さらには物語りそのもののテイストも某著名ホラーのアロマが漂い始めます。

伊豆鼠村とか、ルビ振らない限りまずは気付かない伏せ方が巧い。
こういう目の前に実は答えがこれ見よがしに提示されているのに、読者はそれに全く気付かない・気付かせないテクニックは他の作品でも度々使われていますが、ここに来て更に磨きがかかってきたなあと。
伊豆鼠村、阿亀町、ヒダゴン…まったく。そのまんまじゃないか。


物語の最終局面は、山野千太郎によって復活さされた八又の大蛇に更に首が一つ増えて完全体となった九頭竜と、馬子に秘められた神の力の衝突という宇宙的恐怖。
田中氏らしくどこまでもお下劣なネタを幾つも仕込んでいる点については好みが分かれそうですが、好き勝手に卓袱台ひっくり返して投げ飛ばして、踏みつけて蹴り飛ばして滅茶苦茶にする展開には笑った。
きっと田中氏はニヤニヤしながら小説書いているんだろうな。
それでもラストはちょっとだけホロリと出来ます。まさかこの作品で感動するとは…(汗)


とにかく一発ネタ勝負の作品なので、ネタバレしないように感想を書くのが本当に難しいとです。
特にこの作品は他の氏の著作以上にネタで勝負してきているだけに。



UMAハンター馬子―完全版〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)UMAハンター馬子―完全版〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)
田中 啓文

by G-Tools



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2009年03月03日

天界の狂戦士 感想 川又千秋

天界の狂戦士 (角川文庫 (6206))


大きな戦争で荒廃した未来の地球を舞台にした壮大な復讐劇。

思えば80年代はこの手の戦争によって荒廃した地球という舞台が好まれて使用されていた気がします。
冷戦もひところの熱狂から醒めてきて核削減の声も聞こえ始めた時代。リアリティを持つ終末戦争が遠ざかり、その一方でオカルトチックな終末――世紀末が近づいてきていた。そうした時代のアンバランスさが娯楽作品に反映されていたのかもしれません。真実味のある終末なんてとてもネタには使えませんしね。

ま、それはいいとして。
長編と呼べるほどボリュウムも無い中で、終末戦争中に月に逃れた一部の人類達による新しい支配の構図や、妻を月の天上人に奪われた主人公雷の放浪と支配者に対抗できる力との出会い、そして月面に乗り込んでの復讐劇…と様々な要素を窮屈にならない様に詰め込む手腕は流石だと感じます。
しかし、やはり物足りない。
「窮屈ではない」と「必要充分なボリュウム」はイコールではありません。

希望を言えばもっと荒廃した地球の様子を描いて欲しかったし、終盤で暴走したヴィダルの描写もやや物足りませんでした。地球と月を股にかけた物語のスケールを考えると、本来なら倍の分量でちょうど良いくらいです。
月で再会した妻との間にもなにかどんでん返しがあるかなと気を持たせた割に、結局何もなくストレートに物語は進行しましたし。地球での雷の心のうちに根を張っていた疑念をもっと活用していたらドラマ性が向上したと思いますが、ラストは妻との再会よりヴィダルの暴走がメインになっちゃったからなあ。

なんとなく現代風にリメイクして欲しい作品ではあります。


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2009年02月24日

老人と宇宙 感想 ジョン・スコルジー

老人と宇宙(そら) (ハヤカワ文庫SF)
John Scalzi 内田 昌之
4150116008




基本的には非常に面白く読めたのですが、物語の主軸となっている宇宙戦争に関する部分の描写には若干物足りなさを感じたのも事実。
具体的には何と言っても、地上での戦闘がほとんど歩兵だけで進展する部分。
拠点の制圧に歩兵は絶対に欠かせない兵科ですし、この世界の歩兵(コロニー防衛軍)が装備する小火器はナノマシンで構成された特殊なブロックを消費する事で通常のライフル弾から散弾、火炎放射にミサイルまで発射できると言うとても革新的な火器となっています。つまり攻撃力と言う面だけに限って言うと一人の歩兵が現用の装甲車並の戦力を持っている事と言っても過言ではありません。
しかし、戦争は攻撃力だけでは優位に立てないもの。

例えば航空機による直協支援、戦車による地域制圧。こうした要素を抜きに歩兵だけを送り込んでも、市街地での掃討戦ならばともかくも様々な地形が存在する惑星表面を舞台にした戦いでは勝負にならないでしょう。
もちろん敵となるエイリアンの中には、地面の中を移動する者など地球の戦術常識が一切通じない相手も多く、航空機や戦車が必ずしも有用とは限らないと思いますが、しかし本編でペリーが対峙したエイリアン達は姿こそ地球人類とは大きく異なっていたとしても、その生態に関しては人類とそんなに違わない連中ばかり。
それでいながら敵味方共にほぼ歩兵だけで戦闘する展開には若干首を傾げてしまった次第。
せめてパワードスーツ位は欲しいところです。


一応は宇宙の戦士のオマージュ作品であると作者も認めている訳ですが、この生身の兵士ばかりで戦うヴィジュアルはどちらかと言うと映画版のスターシップ・トルーパーズのそれに近いかも知れません。
終盤での惑星コーラル軌道上におけるララエィ族宇宙艦隊との衝突も、なんとなく映画版での地球艦隊がプラズマ対空砲火で次々と撃破されていくあのシーンを思い出した。
悪く言えば映画やアニメ的で軽いと言う事になるのですが、反面すぐに脳内にビジュアルが浮かび上がるのは美点ともいえます。この点の評価は本当に人それぞれでしょうね。

戦争部分については物足りないものを感じつつも、老人が兵士として期間限定で若返る事ができるという設定は面白かったです。
若い肉体に記憶と意識を移し変えられた途端に言動まで若者っぽくなって来るのは、肉体が若くなっても中身は年寄り臭いままというパターンが多い日本の若返り系作品と違った雰囲気で興味深いですね。やはり文化の違いかなあ。
アメリカ人特有の奔放さというか、日本的な「年齢相当に落ち着く」と言う考えはあまり存在しないと思われる連中らしいと言えばらしい。

なお続編も出ているらしいのでチェックしてみようと思います。





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2009年02月22日

日本以外全部沈没―パニック短篇集 感想 筒井康隆

日本以外全部沈没―パニック短篇集 (角川文庫)
筒井 康隆
4041305225



年齢を重ねても曲がったものは絶対に許せない心を持ち続ける事を厨房力という(らしい。たぶん)。

なんだかよく判らない権威を嵩に着る連中にはとことんまで食い下がる魂を厨房力という(らしい。たぶん)。

自分の気に食わない森羅万象全てを揶揄して物笑いのネタにする筆力を厨(以下略)


老いてもなお盛んな厨房力を発散する筒井康隆氏の短編集です。
どの短編からも、長いものには巻かれない、流行ものには流されないという筒井氏の熱い魂が感じ取れて、こんな風に歳を取るのも悪くないなと思わせるものがあります。
特に世情を風刺しながらも特定イデオロギー方向へのベクトルは無く、ハリネズミの如く全方位に針を尖らせて噛み付く姿勢が心地よい。本来風刺とはかくあるべしと思えます。

左翼活動を皮肉った新宿祭やマスコミ批判を含んだヒノマル酒場などは、現代のネット勃興した特定思想の方面には非常に耳障りの良い作品ですが、その一方で表題作である日本以外全部沈没ではそのキャッチーなタイトルに反して日本人に対する皮肉が強く込められていて、タイトルに釣られて金甌無欠ゆるぎなきわが日本の誇りなれ…とワクワクドキドキしながら読んだ人のピュアなガラスのハートを打ち砕くに充分な内容となっています。

というか、昨年末からの経済危機に際して最初のうちは「日本には打撃が少ない」「先進国では一番傷が浅い」と言っていたのに、あれよあれよと言ううちに危険水域を超える沈没ぶりを晒して最早笑うしかない状況となった流れにどこか重なって見えて厄い。
侮れないな厨房力!

正直SFなのか?と問われると返事に窮するものはありますが、風刺作品としては現代でも充分に通用するものばかりなので、本屋ででも見かけたら手にとって見る価値はあると思います。





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2009年02月15日

吸血鬼ハンター 20 D-不死者島 感想 菊池秀行

吸血鬼ハンター 20 D-不死者島 (朝日文庫)
天野 喜孝
4022655313




中学生の頃この友人に借りて読んで以来すっかりはまってしまって、それ以来年に一度程度のペースで発売されるシリーズ新刊を楽しみに読み続けていたのですが、途中から若干作品の空気が変わってきていつの間にか読まなくなってしまいました。

今回久しぶりに手に取ったシリーズ第20作目ですが…。
僕のこの作品に対する評価については、世間の評価とほぼ同じと思ってください。
長い間シリーズを続けているとどうしても変化を求める声と、シリーズとしての基本路線との間でいろいろと軋轢が生じてきます。
たとえそれが異世界ファンタジーやSFだとしても、世情というのを完全に無視して描く事は出来ないし、仮に作者が無視しようと意識したとても完全に無視しきれるものではありません。
シリーズが始まった1980年代初期と現在とでは世情も人間の意識も全然違います。
また、小説に最も求められる要素も違っています。
具体的に現在の小説――主にラノベやジュブナイルに求められるのは、強いキャラクター性と心理の開陳(心理状態を細大漏らさず赤裸々に開陳する書き方。主にラノベ読者は心の機微を描く"心理描写"とこれを混同しているが、全く別物なので注意)です。

作者なりに現代の様式を意識しつつかなりの産みの苦しみを経てこの作品が仕上がったのは理解しますが、その「苦しみ」が作品の構成にも反映されてしまっている気がします。
カウボーイやウェスリーなどのキャラクターが立った人物を登場させつつも、魅力を発揮する前にこのシリーズのフォーマットに従いあっさり退場となってしまうところや、敢えて主人公をDではなくメグという少女にして、メグ視点で物語りを進行させた――必然的にDが脇役になってしまった点など。

昔からのファンにとってはこれがD?と言うものになっていますし、かと言ってこの巻から読み始めた人からしたらどうかと言うと、全体的に消化不良な感じで。


シリーズ屈指の傑作と言える北海魔行の頃の雰囲気が一番良かったなあ。
未読の人はまず北海魔行から読むことをお勧めします。





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2009年01月31日

深海のYrr 上 感想 フランク・シェッツィング

深海のYrr 上 (1) (ハヤカワ文庫 NV シ 25-1) (ハヤカワ文庫NV)
北川 和代
4150411700



以前から書店で見かけて気になっていたのですが、全3巻で1冊500Pというボリュームから尻込みしていました。
しかしこの手の与太生物ネタものは大好物であり、もし内容が多少アレだとしても充分許せる性格なので、思い切って買ってみた次第。

ノルウェーの海底油田建設予定地で発見された未知のゴカイの群生。
それはメタンハイドレートを侵食し、ブローアウト現象や地層の融解を誘発する危険性を大きく孕むものでした。
時を同じくして世界各地の海で発生する異変の数々。
日本近海でも未知のゴカイがメタンハイドレートを侵食し、オーストラリアでは猛毒の水母が大量発生。カナダでは鯨やシャチが凶暴化し、フランスではロブスターに巣食うフィエステリア・ピシシーダに似た未知の渦鞭毛藻によって多数の死者が発生する。
これら一連の危機には何か関連性があるのか――という所で上巻は終わり。
こう書くと500ページも費やしてそれだけ?という気もしますが、これらの事態の描写が非常にスリリングで冗長に感じさせない秀逸なものですから、気が付いたらもう読了していたという感じです。

海という宇宙以上に未知の世界を題材にし、世界規模の災厄というスケールの大きな物語として完成している本作品。まだ物語の1/3地点でしかないのもあると思いますが、一連の事態の原因がまだ全く見えない事もあって非常に薄気味悪い読後感。
生物学に詳しい人ならツッコミを入れつつ冷静に読めたりできるのかも知れませんが、僕は生物学に詳しい訳ではありませんのですっかり作品の空気に呑まれてしまっています。
これは早く続きが読みたくなる作品ですね。


ただ、一つだけ雑音に感じたのは、作者(ドイツ人)が所謂反捕鯨イデオロギーの信者であるらしく、こと鯨に関しては文章の端々に信仰めいたものが散見されます。
当然反捕鯨と言う事は、捕鯨国である日本に余り良い感情は持っていないらしく、日本の技術力は評価しつつも国民性に関しては微妙な描き方をされているので、この点気になる人は気になるでしょう。
キャベツ臭いナチの癖に奇麗事言って(以下検閲により削除)とかちょっぴり思ってしまったら負け。
所詮ゲルマニアの蛮族の寝言と思って広い心で読みましょう。

…僕ももっと心を広く持たないとな(笑)。





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2009年01月25日

宇宙海兵隊ギガース 4巻 感想 今野敏

宇宙海兵隊ギガース〈4〉 (講談社ノベルス)
今野 敏
4061824821




いよいよ戦いは最終局面を迎え、アトランティスは敵の本拠地木星圏へと向かう…のはいいとして、折り返し部分の作者の一言に吹いたw
多分某ナデシコの事を言っているのだと思いますが、僕にはどちらかと言うとクロスボーンガンダムを連想させるのですが。
とは言え作者が釈明している通りにギガースの叩き台となった氏の「宇宙海兵隊」(だったかな)は90年代初期に刊行され、僕も読んだ記憶がありますからパクリ云々なんて思いませんよ。

なんでもかんでもパクリパクリという人たちに関しては、自分はこんな作品も知っているんだぞう(と言いつつ、好んで例に出すのはエバンゲリオン程度であって、そのエバンゲリオンもまた過去作品の"インスパイヤ"集合体である事は知らない)と言うのを誇示したくてパクパクいってるケースが多いので、気にしないのが一番です。
幾ら釈明しても彼等は聴く耳持ちませんから、やるだけ無駄です。


話を戻して4巻です。
1巻当時から戦闘シーンのあっさりさが気になっていたのですが、ようやく軌道戦闘というこの作品のルールにも慣れて来ました。軌道を外れると宇宙の迷子となって永久に彷徨い続ける事になる設定は、ゲーム的に言うとリングアウト負けみたいなものである種の緊張感はもたらしています。
もっとも、ギガースに関しては多少軌道を外れても自力で帰ってくる能力があるみたいですが。

この巻では木星への反攻の第一段階として、ジュピタリアンが地球圏侵攻の為に小惑星帯に建設したレーザー発振施設の破壊作戦がメインとなります。
ジュピタリアンのミラーシップは帆の部分でレーザーを受ける事でスイングバイを行う事無くある程度自由に進路を変えられるという事で、これは地球側にすると非常に厄介な事です。

一方、ジャーナリストのコニーは木星圏にヤマタイ国を建国した地球側の将軍を求めて事件の核心部へ。
この戦争がすべて仕組まれたものである事を突き止めますが、何の為にこの壮大な自作自演が計画実行されたのかに関してはまだ先送り。
作品の雰囲気からして人の革新しか言い出しそうで厄いものはありますが、良い意味で予想を裏切ってほしいものです。
ある程度構成要素は明るみになったので、次の巻で完結でしょうか。




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2009年01月17日

リングワールド 感想 ラリイ・ニーヴン

リングワールド (ハヤカワ文庫 SF (616))
ラリイ・ニーヴン
4150106169




恒星をリング状に取り巻く形で建造された、地球の300万倍以上の広さを持つ超巨大構造物ダイソンリング。
この探索に赴いた地球人二人+異星人二人が、不意の事故でリング表面に不時着を余儀なくされてしまい、何とかそこからの脱出を図ろうとする物語。
巨大構造物というと「垂直世界の戦士」や「BLAME!」といった作品が連想されますが、リングワールドはスケールと設定持つ物語の発展性においてそれらの比にならない域に到達しています。
シェアードワールド展開しても良い位に。


物語のバックステージには因果律すらも支配するヒロインティーラ・ブラウンの強運や、探索行メンバーの一人であるパペッティア人ネサスの気の長い陰謀があったりするのですが、そんなものはダイソンリングのスケールの前にはほんの小さな事でしかありません。

この作品は約500ページ程で比較的序盤でダイソンリングに不時着するも、ラストまでに旅した距離などごくごく僅かなものでしかなく(と言っても地球だと余裕でユーラシア大陸を横断する距離だと思われる)、リングワールド世界の本の一端を垣間見ただけでしかありません。
リングワールドは恐らく数千年前にある原因で文明の利器が次々と使えなくなり、人口天体故に鉱物や化石燃料も存在しないため次第に文明水準が退化し、現在は原始時代に毛が生えた程度の文明しか無くなっています。
しかしそれはあくまでルイスたち4人が旅した極僅かな地域での話であって、もしかするとリングワールドのどこかにはまだ文明を維持している地域もあるかも知れないし、機械文明とは違う異質の文明が育っているかも知れない。
圧倒的なまでに広大無辺な空間は想像力をどこまでも刺激してやみません。

それだけに、何とかリングワールドを脱出したルイス達のその後よりも、現地人の戦士シーカーと共にリングワールドを旅する事を選んだティーラのその後が気になって仕方ありません。
この広大な世界を旅するには人の寿命は余りに短いですが、幸い作中世界には不老の薬が存在するため時間が壁となって立ちはだかる事はありません。
また、ティーラの異常な幸運スキルがあれば道中の危険など取るに足らないものでしょう。
この二人を主役にした作品出ないかなあ。


余談ですが僕はクジン人(猫宇宙人・肉食。強い。)のスピーカーが好きですね。
融通利かない上に作中では一番酷い目に会っていますが、何か憎めない。

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垂直世界の戦士 感想 K.W.ジーター




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2009年01月12日

UMAハンター馬子―完全版〈1〉感想 田中啓文

UMAハンター馬子―完全版〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
田中 啓文
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駄洒落SFの第一任者が挑む新境地は未確認生物――UMA。
いわゆるネッシーとか雪男とか、そういう奴ですね。
夢のある与太話が大好きな僕自身かなり好きなテーマであり、たとえ作者が田中啓文氏でなくても手に取ったであろう本書。して、その内容とは…。


一話完結の連作形式で、特徴的なのは全て舞台が日本の片田舎になっている事。
日本が舞台となると一気に胡散臭くなると言うか、ネッシーはアリでもクッシー・イッシーはナシみたいな雰囲気は確かにありますが、この作品の場合明らかにそうした胡散臭さ効果を狙ってやっているフシもなきにしろあらず。

上巻ではネッシーならぬリュッシーを皮切りに、ツチノコにキツネ(何でキツネかは読んでのお楽しみ)にヒバゴンとにと色々な国産UMAが登場し、作者ならではの軽く脱力するオチが用意されています。
流石にツチノコの正体が×××というのはどうかと思うけど。
また、UMAを取り巻く人々の姿もUMAに負けず劣らずの個性派揃いとなっていて、ミステリー仕立てのストーリーもなかなか面白い。
ただ、いかんせん「蹴りたい田中」「銀河帝国の弘法も筆の誤り」の時に見せてくれた鮮やかに全てを瓦解させる駄洒落オチが無いのが寂しいですね。
"田中啓文と言えば駄洒落"と強烈に刷り込まれてしまっているので、どうしても違和感が残ってしまいます。


基本的にはUMA好きなら楽しめる作品なのですが、主人公の馬子が精神的ブラクラな御仁なので、その点で人を選ぶかもしれませぬ。
蘇我屋馬子は芸人ではない。もっとおぞましい何かだ――。


UMAハンター馬子(2) 感想




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2008年12月31日

宇宙海兵隊ギガース 3巻 感想 今野敏

宇宙海兵隊ギガース〈3〉 (講談社ノベルス)
今野 敏
4061823159



やっぱりと言うか何と言うか、3巻では終わりません。
現在5巻まで出ていてまだ未完のようですが、もうこうなったら完結まで付き合うべきなんだろうなあ。

そんなギガース3巻ですが、カーターやオージェ達プロの軍人が発散する漢臭に溢れていた2巻までと違い、3巻はほぼ新聞記者のコニーが主人公状態。
月面都市で出合ったジュピタリアンの潜入スパイを巡るポリティカル小説ばりの駆け引きがほぼメインとなっていて、この作品が当初目指していたと思われるガンダム路線はどうなったの?と言う部分さえ気にしなければかなり楽しめます。
この辺りの手腕はさすがミステリー畑の人だけあるなあと思わせてくれますね。
2巻の感想で書いたコニー側とアトランティス側の物語が噛み合ってないという点に関しては、今回ジュピタリアンの首魁であるヒミカの存在が明らかになり、またミズキともなにやら関係性が伺える状態となった事で、二つの線がようやく一つに繋がってきはじめました。実に良い感じの流れで、先の展開が楽しみになります。


ただその一方で、空間戦闘が微妙に物足りない。
広大な宇宙空間を戦場にするなら作中の規模での戦闘で正しいのかもしれませんが、やはり戦争と言う位ならば多対多で互いに蹂躙しあう魔女の大釜みたいな戦場が見たい訳です。
こればかりは戦馬鹿の本能に根ざしたものなので、どうにも抑えきれない欲求でもある。
リアリティを多少削いででも戦の臭いを濃密にして欲しいというのは無茶な希望でしょうか。

しかし新型機が配備される運びとなってもオージェにヒュームスを宛がうような無節操な事をしなかったのは感心。
これはヒュームスの汎用性を描きつつも、支援兵器の重要性も忘れない作者のこだわりなんだろうと思います。
特に最近のガンダムシリーズなどではMS万能主義が横行して支援兵器の存在がともすれば無視されがちになっているだけに、こういう姿勢は見習って欲しいところ。



宇宙海兵隊ギガース 2巻感想
ラベル:今野敏
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2008年12月18日

宇宙海兵隊ギガース 2巻 感想 今野敏

宇宙海兵隊ギガース〈2〉 (講談社ノベルス)
今野 敏
4061822551



全3部作と1巻時点で公言して割に、物語の進行が遅いのが気になります。
現時点で5巻まで発売されている訳ですが、木星編は予告どおり3巻で片付いてそれ以降は新展開かと思っていただけに、この明かに3巻では片付きそうにないペースはイカがなものか。

1巻では連合軍軍人のカーターやナザーロフの視点を軸に物語が進んだのに対して、2巻ではこの戦争の裏を探ろうとするフリーランスのジャーナリストコニーや、反戦政治家のジンナイ代議士などの登場シーンが増えてポリティカルな要素に結構な頁数を割く様になったのが大きな変化。
戦争をどちらかの勢力万歳で描くのは作品そのものを極めて薄っぺらいものにしてしまうとは言え、いわば主人公をもう一組用意した様なものですからこれではどう考えても3巻では終わりそうにありません。

更に、火星軌道上にて木星圏から侵攻して来たミラーシップとの戦闘が描かれるのですが、木星側の人員に関する描写が一切無いのがどうにもこうにも座りが悪い。唯一敵機のパイロットとして描かれた人物は1巻冒頭の戦闘で行方不明となっていたカーターの部下のみ。
おそらくは作者に何らかの意図があって木星人の描写を避けているのだと思いますが、物語の核心ともなっている「ジュピター・シンドローム」ともども実体が見えないだけに、リーナやカーター達は一体何者と戦っているのだろうかと不安になって来ます。


コニー視点のサスペンス展開もリーナ視点のSF戦記展開もそれ単品で見るとなかなかにスリリングで良く描けているのですが、それぞれが出会う事件に関連性を持たせるに至ってないのがテンポの悪さに繋がっている気がする。
戦う場所と立場は違えども共に同じ「戦争」と言う厄介な代物と対峙している筈なのですから、その辺りをもっと意識出来る展開に期待したいですね。



宇宙海兵隊ギガース 1巻感想


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2008年12月05日

宇宙海兵隊ギガース 感想 今野敏

宇宙海兵隊ギガース (講談社ノベルス)
今野 敏
4061822136



人類生存圏の最果てである木星圏に興った国家、ヤマタイ国と、地球連合との戦いを描く――というストーリー概要は、クロスボーン・ガンダムを髣髴とさせるものがあります。
作中ではHuWMS(Human-Style Working MachineStandard)と呼ばれる人型兵器が戦場の主役となっていて、尚更ガンダム臭が強い。

それもそのはずで、作者の今野敏氏は文壇有数のガノタであり、自らフルスクラッチでMSを作ってしまう様な方です。
近年では「ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに」のノベライズも手がけられていて――まあ要するに筋金入りと言う訳ですね。
ですからガンダム的な諸々は全て氏の同作品に対する深い愛情の発露。安易な拝借ではなくリスペクトと解釈しておきましょう。


1巻はまるまる序章と言う感じ。
木星軍の戦艦や人型?兵器との戦闘もありますけど、それほど大規模なものではなくあくまで前哨戦。
むしろ新型機G(ギガース)とパイロットのミズキたんのデモンストレーション的な色合いが強いです。
とか言いつつミズキたんの出番はさして多く無いのですけど。
むしろ彼女を取り巻く軍人さんたちの方がキャラが立っている気がするのはたぶん気のせいと言う事にしておきます。


何と言っても残念なのは、敵味方のHuWMSに関する三面図の一つも用意されていない事です。
文章から大まかな形は想像できるとは言え、やはりMSフェチとしては詳細な形状が知りたい欲求があります。
機体デザインからどの様な戦闘を得意とするのか、追加装備はどの位まで運用出来るのか…と妄想するのが楽しいのに、その妄想材料が無いのは痛い。この点はマイナスですね。

とは言え、伏線の埋設の仕方などから発展性はあると感じたので、続けて読んでいこうと思います。




posted by 黒猫 at 15:22| Comment(0) | TrackBack(0) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月15日

垂直世界の戦士 感想 K.W.ジーター

垂直世界の戦士 (ハヤカワ文庫SF)
K.W. Jeter 冬川 亘
4150112487



…邦題に偽りあり!!

遥か宇宙まで続く?巨大建造物を舞台にした物語と言う事前情報と、そのタイトル(邦題)から弐瓶勉氏の名作SF漫画「BLAME!」の様な雰囲気を期待していたのですが、ちよっと肩透かしでした。
もちろんこれは邦題が悪いのであって作品そのものに何の責任もありません。

最後まで通して読んで作者が描こうとしたものは理解できましたし、所謂ワンアイデアもの小説でありながらも物語を巧く膨らませて読者の想像力を刺激するものに仕上がっていたのも認めます。
建造物の由来から外壁部で活動する戦闘部族達の成り立ちなどなど投げっぱなしの謎は多いのですが、そうした部分を些事と思わせる後半の展開もスピーディーで楽しめました。

しかし導入部があまりにも突き放しすぎです。
物語は風船エンジェルと呼ばれる、空中を浮遊するヒューマノイドのセックスを主人公のアクセクターが撮影しているというこの上なくポカーンな形で始まり、ほとんど物語世界の説明もなされないままに淡々と進行して行きます。
この前半部はかなりの鬼門で、正直あまり面白いとはいえません。前半部での出来事で、後に大きな伏線となるのも風船エンジェルのラーフトとの出会い位です。

物語が本格的に動き始め、作者の描きたかったものが見えてくるのは中盤以降。建造物外壁の「垂直世界」と、内部の「水平世界」がそれぞれ何をメタファーとしているのかが理解できた途端、急に主人公アクセクターに愛着が湧いてくる仕組み。
具体的に言うと、建造物の外壁である「垂直世界」は、「都会」のメタファーでしょうか。
と言っても別に沢山の人がいて繁栄している訳ではなくて、上昇志向を持つ者には大きなチャンスが転がっている反面、一度転落するとどこまでも落ちていく場所と言う意味です。
垂直世界では幾つもの戦闘部族が鎬を削っている弱肉強食の世界と言うのも、またそれら戦闘部族がある種の投機対象となっているというのも、そのまま資本主義社会そのものに置き換える事が出来る気もします。

逆に建造物内部の水平世界は、特に上を望む事は出来ないけど平穏がある――「故郷」のメタファーです。
アクセクターはこの水平世界で生まれ、平凡に工場勤めをしていた青年でした。
しかしその変化を望めない生活に飽きて、一山当てようと意匠師の道を目指して垂直世界へと出て――そこで数々のトラブルや裏切りを経験し、比喩的な意味と物理的な意味両方でどん底へ転落し、そしてそこから必死で這い上がろうと足掻くのが後半の展開。
どん底を抜け出せたら故郷に帰ろう、そして堅実に生きていこうと里心に取り付かれる辺りは、世の東西問わずしみじみと理解できてしまう部分です。


つまるところSFの体裁を取ってはいますが、故郷から夢を抱いて都会に出てきた若者が様々な試練に晒されて挫折を経験し、それでも諦める事無く夢を追い続ける姿を垂直世界と水平世界というメタファーを通して描いた作品でした。
原題は「Farewell Holizontal」ですが、「Farewell Hometown」と書き換えてもしっくり来る様な。


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2008年05月18日

今宵、銀河を杯にして 神林長平

koyoi.jpg
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酒は命の水。

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2008年04月29日

イカロスの誕生日 小川一水

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2008年04月03日

機神兵団 2 山田正紀

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