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酒は命の水。
酒は人と人との繋がりを作り出し、より強固な「生命場」を作り出す・・・のか?
遠い異星を舞台に、在り方の異なる生命体同士の戦争を描くSF戦記です。
雰囲気的には「戦闘妖精・雪風」に似ているというか、雪風を違った舞台装置と登場人物で、別の角度から描き直してみましたという感じ。
余談ですが文庫版の表紙イラストは、本作品の重要キャラ?である戦車マヘル‐シャラル‐ハシ‐ハズですが、思いっきりT-72とM1を足して2で割った形ですw
燃料タンクとかフェンダーとかスモークディスチャージャーにT-72神の面影が窺えます。
しかし、T-72神(と言うか、ロシアの神々)の証とも言えるV字型の跳弾板が無いのは残念至極。オブイェークト。
雪風は全編通して虚無的で作者なりの結論に行き着いてはいなかったに対して、この作品は割と明るい雰囲気で、かつ作品のテーマに対して作者なりの考えがきちんと提示されており、小説としての完成度は高いと思います。
ただ、登場人物・・・特にマヘル‐シャラル‐ハシ‐ハズの戦車兵2人組が、酒好きでやたらフランクというか、アメリカンテイストというか、まあそんな感じだし、多分主人公のカレブ少尉も割とノーマルな人なので、雪風の零のような偏屈者に比べると下世話な感じがするのも事実。
もっとも、パイロットは気位が高くて偏屈者が多いと聞いた事がありますし、逆に戦車乗りの様にチームワークが要求される兵科では俗っぽくても気さくな人物の方が良いと思いますし、そう考えると極めて妥当な性格付けなのかも知れません。
作品としてはきちんとまとまっているのですが、中盤以降かなり端折った展開になるのだけは残念。
特に最後はあっけなかったかも。
ラベル:書評