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何故か続巻が出しまう『人類は衰退しました』。
改めて1巻をパラパラと読み返すと、やっぱりこれ、ワンアイデアものとして始まった作品だよなあと感じる事しきり。
しかし、ワンアイデアものでありながら、そうした作品が陥り易い罠に嵌っていないのがさすがロミオ御大というべきか。
普通、ワンアイデアで始まった作品が予想外の支持を得てシリーズ化された場合、もともと一発ネタだったものに肉付けして物語を膨らませてゆく訳ですが、その基になる骨格が、悲しいかなワンアイデアであるが故に非常に細くて小さい。そんな骨格にいくら肉を付けても大した量が付く訳でもなく。
結局は物語の広がりの限界を迎えるのが早く、最後は破天荒なキャラを登場させて押し切るか、超展開で卓袱台を返して仕切りなおすかのいずれかの方法をとらざるおえなくなります。
1巻はすげえ面白くても後はキャラのみで押し切っているあの作品(敢えてタイトルは伏せる)とかがいい見本だと思います。はい。
で、この人類〜なんですが、基本的にシリーズと言いながらも、1つの物語としての連続性を最小限度に抑えていて、物語を繋げて膨らませると言うよりは、小技を連打してくると言う感じで、骨格に肉を付ける事よりも、骨をいかに踊らせるかと言う部分に作者の情熱が注がれているんじゃないでしょうか。
2巻の「わたし」の妖精さん化にしろ、今回の都市遺跡探査&中二病探査機祭りにしろ、そこに物語の連続性は希薄です。そして、連続性が希薄だからなかなか先の展開が読めません。
ここら辺がワンアイデアものでありながらも、頭打ち感を感じさせない秘訣なのかも。
ぶっちゃけ、"人類が衰退し、それに代わって妖精さんと呼ばれる存在が現れた遠い未来"という舞台と、数人の登場人物を使ったシチュエーションコメディと言うのが一番的確なんだと思います。
それにしても妖精密度とか、意味が不明な様でいて、脳髄の深い部分ではそこはかとなく理解できてしまう微妙な斜め上設定が実に上手いです。
その一方で、妖精さんは機械では存在を認識する事が出来ない点とか、ついつい深読みしてしまいたくなる釣り餌が沢山ぶら下げられているのも魅力。
特に今回の都市遺跡探査は釣り餌の宝石箱でした。
これまでの傾向からすると、こうした要素が伏線となるのか、それとも投げっぱなしで終わるのかという比率は3:7位だと思いますが(笑)。2巻で散々「わたし」を撹乱し、作品空気の変化を危惧させた助手さんも、3巻では意図的に"空気である事に意義ある"扱いになっていましたからね。
全く油断の出来ないシリーズです。