戦鬼 ―イクサオニ― (富士見ファンタジア文庫) 川口 士 富士見書房 2006-09-20 売り上げランキング : 256335 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
桃太郎の鬼退治ならぬ、鬼の桃太郎退治。
基本的にはワンアイデア作品だと思いますが、これがかなり面白いです。
おおまかなストーリーは鬼の少年温羅が、父親の仇である桃太郎に戦いを挑むというもの。
主人公は三人。
父を殺した桃太郎(桃生)、ひいては人間そのものを憎んでいる温羅。
身寄りが無く邑では迫害を受けているものの、相手を恨む事を知らない純真な少女梓。
祖国を中津国に滅ぼされたにも関わらず、中津国の下級役人として任に就いている川楊。
個人的にはやはり川楊が好きですね。
祖国を滅ぼした敵の碌を食み、皮肉屋でお調子者で野心や下心はあまり無く、どこまでもつかみ所の無い男。
人生気紛れだけで生きている様な奴ですが、復讐に燃える温羅や、どこまでもお人好しな梓と一緒にいると、妙に光るんですよね。
最初の印象はあまり良くなかったけど、終盤では彼の飄々とした性格が物語の救いになっていた気すらします。
結構ストーリー展開が早くて、シリーズもの前提のラノベに慣れていると拍子抜けすると思いますが、あくまで1巻で完結する話なのでこれは致し方ありません。
また、いわゆる流行の萌えや甘ラヴ要素は殆どありません。
素材や地の文からして昨今のラノベとは違った雰囲気を醸しているので、一風変わった伝奇小説と思って読む方がしっくりするかもと思います。
と言うか、僕はそう思って読んでました。
個人的には結構楽しめた作品。