2008年02月22日

急降下爆撃 ハンス・ウルリッヒ ルデル

急降下爆撃 (学研M文庫)急降下爆撃 (学研M文庫)
ハンス・ウルリッヒ ルデル Hans Ulrich Rudel 高木 真太郎

学習研究社 2002-12
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第二次大戦時のドイツ軍で、急降下爆撃機Ju87を駆り、500両以上の戦車を撃破した対地攻撃のエース、ハンス・ウルリッヒ・ルーデルの自伝。

急降下爆撃というのは、爆弾を抱えて目標に対し40度〜60度程度の角度で急降下して投弾する爆撃法で、メリットは普通に爆弾をばら撒くよりも高い命中精度に期待できる事にあります。
しかし、投弾後の機体引き起こしでは機体構造に物凄い負荷がかかるため、専用に設計された機体が必要なことや、損害も大きい事などの問題があり、戦後には消えていった機種でもあります。

さて、このルーデル氏ですが、何と彼は30回も撃墜されていたりします。
しかし驚くべきは、それだけ撃墜されながらも、常識外れの強運でもって自軍基地に帰還している事でしょう。
その強運ぶりを一番顕著に表しているのが、彼は30回撃墜されたものの、全て地上砲火によるもので、天敵とも言える戦闘機に落とされた事は一度も無いという事です。

彼の乗るJu87は、同時代の単発急降下爆撃機と比較しても決して高性能な訳ではなく、緒戦のうちはともかくも、ソ連が立ち遅れれていた航空機開発に本腰をいれ、世界標準な戦闘機を送り出すようになってからは、最大速度が400km/h程度のJu87では一度捕捉されると逃げる事すら困難になっていました。実際に多くのJu87が戦闘機に食いつかれて撃墜され、多大な犠牲を出したにもかかわらず、またルーデル自身何度も戦闘機に追い回されたに関わらず、一度も落とされなかったと言うのは、もはや技量がどうとか言う次元の話ではないのは明らかです。
敗戦時に米軍に投降した彼は、アメリカ人達に、鈍足なJu87でどうやって戦い抜いたのか散々尋ねられたそうですが、本人曰くは特に秘訣は無い・・・との事で、やはり人知を越えた運としか言い様がありません。

ルーデルと言う人物に関してですが、ヒトラーに対する崇拝の念や、ソ連侵攻は自由世界を守るための自衛戦争だと言い切る辺り、当時のプロパガンダに頭の先までずっぽりと洗脳されていた節があります。実際には当時のドイツは国家社会主義で、ソ連の共産主義と同じくマルキシズムに端を発する思想でした。これはイタリアのファシスト党も同じ。決して自由世界寄りではありません。
実際には枢軸の主要国で、マルキシズムに染まっていなかったのは日本だけだった訳ですが・・・。
もっとも、プロパガンダを真に受けると言うことは、それだけ純朴な人間性だったのかも知れません。自分のスコアを部隊の仲間に分けてやっていた辺りからも、そんな雰囲気を感じます。


余談。
僕が読んだのは学研から復刊された版ではなく、ソノラマ新戦記版ですが、とにかく訳が酷い。
例えばソ連にアメリカからレンドリースされたP-39エアラコブラを「空のコブラ」と訳していますし、鉄グスタフなる謎のソ連機が登場したりします。地上攻撃機で、頑丈で強敵という文脈からして、多分Il-2シュトルモビクの事かなと思いますが、こういう微妙な訳が随所に見られます。
学研版も訳者は同じなのですが、その辺修正されているのか気になる所。


ラベル:書評
posted by 黒猫 at 22:08| Comment(4) | TrackBack(0) | 戦記・ミリタリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
以前、朝日ソノラマ文庫海外シリーズを読んだ時も訳が酷かったのを思い出しました。

ウィリアム・ホープ・ホジスンの短編「漂流船」(カビの船)。
これが、創元と朝日ソノラマ両方から出ていたのですが、同じ作品とは思えないくらい、ソノラマの方の訳は、雰囲気も何もなくて酷かったです(^^;)(先に、創元の方を読んでいたのですが、朝日ソノラマの方、落ちが同じなので同じ作品と気が付いたぐらい別物でした)。
訳が酷いと気になりますよね〜。

ルーデルの話は、モリナガヨウの戦車本「ワールドタンクミュージアム」で少し読みました。
この本、イラストと解説がとってもよくてお勧めです。
戦闘機だけじゃなく、戦車に興味がおありでしたら、
書店で立読みして見てください(^^)。
もう読まれたかな?
Posted by ちょこ at 2008年02月22日 23:17
ちょこさんこんばんは。
本当、訳が酷いのに当たるとガックリ来ますよね。言葉遣いが時代がかっているとか、今ではピーな言葉を使っているとかは、逆に当時が偲ばれて良いアクセントなんですが、文脈がおかしかったり、固有名詞を間違って訳す等はいただけません。

モリナガヨウさん、WTMの本はまだ読んでないんですけど、僕は模型が趣味なので、模型雑誌でよくモリナガさんの記事を読んでます。
この人のイラストのタッチ好きなんですよ。
硬くて冷たい鉄の塊を柔らかいタッチで描く事が出来て、しかもデッサンは狂ってないですし。

>ウィリアム・ホープ・ホジスン

気になって調べてみたらホラー系のマスターピース作家なんですね。
興味が涌いたので今度詠んでみます〜。
Posted by 黒猫 at 2008年02月23日 22:39
そうなんですよ、文脈がおかしいとか、主語と述語が噛みあってないとか、意味がわからないとか・・訳が酷いとほんとガッカリです。
精神科医によるアウシュビッツ収容所体験手記「夜と霧」は内容がすばらしいのに、訳が悲惨(意味がわからない文章があったり)でした。
最近新訳ででたみたいで、そちらを読みたかったなぁと思ってしまいます。

ホジスンの「夜の声」は、特撮映画「マタンゴ」の原作にだったと思います。
地味ですが、雰囲気のある作風の作家です。

最近、角川文庫で吉村達也が「マタンゴ」を出しましたが、こちらがどんな感じか気になってます。
Posted by ちょこ at 2008年02月24日 01:04
ちょこさんこんばんは。
読みながら脳内で修正しなきゃならないレベルだと、ストレス溜まりますからね〜。
僕の本棚にはコレクション中のソノラマ新戦史が20冊くらいあるんですけど、訳が微妙なのがたまにあるのでほとんど未読状態です(汗)。
復刊する際には新訳を期待したいです。

マタンゴ・・・あのキノコの奴ですか。
見た事は無いですが名前は有名ですよね。
今度本屋で探してみます。
Posted by 黒猫 at 2008年02月25日 00:47
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