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いわゆる古典名作と呼ばれる作品で、SF読みにとっては基本教養とも言える本ですが、僕はニワカなんで今まで読んでませんでした。
さて、この本は4本の短編を繋げた様な構成で、1000人以上の科学者や軍人を乗せて宇宙探索の旅を続ける宇宙船ビーグル号と、彼らが遭遇する未知の生物達との戦いが描かれています。
本作品は、基本的には主人公グローヴナー視点ですが、作中ではしばしば宇宙生物視点で描かれるシーンがあります。倫理観や種の本能と言う部分に関しては人類のそれとは大きくかけ離れた彼ら宇宙生物ですが、思考ロジックは妙に人間臭いのが特徴で、特に第一話に登場する猫型宇宙生物ケアル(クァール)や、第3話登場のイクストルなど、ついうっかりと本能を抑え切れなかったり、凡ミスをやらかしたりして慌てる描写がどこか微笑ましい感じもします。
個人的に面白かったのはやっぱりイクストルですかね。卵を生きた人間に産み付けたりとか、ちょっと気持ち悪い部分がありますけど、ストーリー的にはSFホラーの原型みたいなもので、もしかすると後の「エイリアン」とかにも影響を与えているかも。
また、そうした宇宙生物たちとの戦いだけでなく、若き科学者グローヴナーと、彼を取り巻く他の科学者たちとの軋轢、艦内での主導権争いなど、閉鎖された空間内での人間ドラマもしっかりと描かれているのも見逃せません。特にグローヴナーの専門はネクシャリズムと呼ばれる新興の学問だけに、保守的な科学者達からは軽く見られる辺りなど、文壇におけるSFの立場をメタ化した様にも感じられます。
ちなみに、この本の第一話、ケアルが登場する話が初めて世に出たのは何と1939年。第二次世界大戦勃発の年です。実に70年近く前の作品ですが、テンポのよい展開と、現在の目で見ても色褪せない宇宙生物達の造形など、さすが名作と呼ばれるだけはある作品でした。
ラベル:書評
昔は、球状型の宇宙船ビーグル号がカバーイラストになっていましたが、さすがに今は違うんですね。
ご承知かと思いますが、ダーティペアに登場する宇宙ネコの「ムギ」は、猫型宇宙生物クァールの設定を拝借しています。
今読むと、古典SFって実に奔放なんだなあと感じます。猫型宇宙人なんて、最近のSFで登場させたりしたら非難されそうですもんね。
昔の版というとハヤカワ版でしょうか。
21世紀になって出た創元版すら最近はあまり見かけませんが、ハヤカワ版は一度も見た事がありません。名作だけに、もっと容易に読める本であってほしいのですが。
>ムギ
初代のダーティペアが放送されていた頃僕はまだ小学生だったので、記憶がかなり曖昧になっていました(汗)
僕の場合だとやはりファミコン世代なので、某FFに登場した猫型モンスターの印象が強いです。
色が豹柄な所意外は、小説のイメージそのままです。