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タイトルおよび降下装備を身に纏った兵士が火星に降下するアニメっぽい表紙の印象から、地球と火星との星間戦争ものかと思っていましたが、実際には作者の創造した「啓示空間宇宙史」という架空の宇宙史を舞台にした連作短編でした。
一応は時系列にそって物語を並べられてますので、人類の領域が拡大してゆく過程や、文化や意識の変化というのも感じ取る事が出来ます。
作中では、宇宙に進出した人類は苛酷な環境下でも活動できるように、肉体のパーツを改造してゆき、大まかに分けると3つの種族が生まれます。
肉体機能を強化する事を念頭に、積極的に機械化を進めたウルトラ属。
脳を徹底的に改造し、常に機械や同種族とデータリンク状態にした(当然個という意識すら希薄)連接脳派。
そして、その両者の中間に位置する無政府民主主義者。
更には、個体数こそ少ないものの、殖民惑星の特殊な環境化でも活動可能な様に改造され、外見には人類の痕跡すらあまり見受けられない者達も。
なんというマンアフターマン。
物語は未開の惑星で100年前の殺人事件の謎を推理したり、休眠スパイを始末したりと、SFと言いつつミステリーやエスピジオナージの香りも漂っていますが、基本的にはこれら人類から枝分かれした種族間の相克を描いたものです。
「ダイヤモンドの犬」だけちよっと雰囲気が違うかなあ。異星人の残した謎の塔に挑むと言う、ゲーム的な趣向の話ですしね。しかしこれがまた、良い意味で衝撃的な話。
ページ数が多い(500P程)ですが、訳が読み易い平易なものなので、リーダビリティは高いです。
いわゆるハードSFの様に、予備知識が無いと意味が判らないというものでもありませんので、僕の様なライトにSFが好きな人には結構良い作品だと思います。
ラベル:書評