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物語にはすべからく何らかの意味とメッセージがあり、登場人物の台詞には何らかの隠喩が込められている。それが無いなら、そんなものは物語ではなく駄文に過ぎない・・・。
そんな風に考えていた時期が僕にもありました。
正直、この作品から、意味やメッセージを読み取ろうとする行為は野暮天でしょう。
もちろん深読みすればどんな風にでも意味合いを見つけることは出来ます。
でも、それをやると作品としての風味を著しく損ねてしまう。
「彼女」の持つ不可思議な掴み所の無さ、「先輩」の持つ我々オタ属性にも通じる妄想力、そしてそれを取りまく一癖も二癖もある人たちの、意味があるようで意味の無いやりとりを、酩酊感を感じつつ読むのが最も正しい楽しみ方ですね。
一応ジャンル的には恋愛もの(らしい)ですけど、いわゆる甘系ではありません。
時々李白氏謹製の火鍋の様に辛い部分もあれど、それもあくまで一瞬の事。
「いや。たまたま通りかかっただけだから」
苦労の果てにこれしか言えない「先輩」には落涙ですが、それすらほわんほわんと韜晦してしまうんですよね、この作品は。
ま、「先輩」の恋愛観は、外堀埋めたら林檎の木を植えて、小屋を建ててそこから本丸を眺めているのが好きという、そんなタイプの人ですしね。
読む事で何かを得るタイプの作品ではありませんが、僕としては万人にお勧めしたいですね。
この気持ちよさを味わってほしい。
なにせこの手のジャンルは苦手で、ともすれば辛口評価になりがちな僕が絶賛している訳ですから間違いない(笑)。
恋人が死ななきゃ盛り上げられない百凡の恋愛小説等よりは遥かに面白いです。これだけはガチ。