天帝のつかわせる御矢 古野 まほろ 講談社 2007-06-08 売り上げランキング : 242126 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
初めて読んだ天帝シリーズですが、これ、一応2作目なんですね。
さて、この本の舞台となるのは満州国から日本へ向かう豪華特急列車あじあ号なのですが、舞台はどうやら現代のようですね。
仮想戦記ではありませんが、この作中では満州国が今も存在していて、しかも東西に分裂して絶賛内戦中らしいです。
で・・・。
散々噂に聞いていた「読みにくさ」と言うのは、実はあまり感じませんでした。妙なルビが多いのは確かなんですが、意識の外に追い出して読めば、文章そのものはライトノベル的で読み易いです。
ただ、ページ数が多いわりに本筋とはあまり関係ない描写が延々続き、物語が本格的に始動するまでに200P近くも費やしているのには疑問符。
そして、その本筋とはあまり関係の無い部分というのも、断片的な知識の羅列や、変態コアラの妄想&暴走が殆どです。
うーん。
あのね、この際だからはっきり言ってもいいですか?
これ、典型的なファウスト系です。悪く言うと中二病。
まず色々な知識の断片が詰め込まれていますが、殆どはあくまで断片であって体系化されてはいません。裏表紙には偏愛なんて書かれていますけど、偏愛と言うほど深いわけではなく、それこそwikiで表層的な情報を集めて知識自慢をしているような感じ。
いわゆる定番のミステリーに対する批判的な台詞が見られるのも、「定石に逆らい続ける俺様カッコイイ」という中二病の典型的症例で、こういう人は一度、夜の校舎窓ガラス壊して回って来るか、盗んだバイクで走り出してくる事をお勧めしますね。
破天荒なパラレル世界の舞台設定はワクワクさせるものがあるし、本来のミステリー部分も伏線の張り方や、終盤での畳み方が良かっただけに、中二病部分をカットしてタイトに纏めればかなり良作だと思うのですが。
ちょっと勿体無いですね。
「天帝」シリーズなんですが、1作目と比べると、遥かに2作目の本作の方が読みやすかったですね。正直、1作目の『天帝のはしたなき果実』はかなり読みづらいです。ついでに、頁数が多く、無駄なエピソードも多いです(笑)
こういっては何ですけど、1作目を読んだ身としては、これでもかなり読みやすくなった、と言うのを感じます(笑)
なるほど、1巻に比べると読みやすくなっていたのですか。なんだか1巻に興味が涌いてきそうです(笑)。
無駄なエピソードとはやはりまほろ君の暴走系妄想でしょうか。もう少し分量を抑えてくれると、良い感じに変態が滲み出ていて物語のアクセントになると思うんですが(汗)。
この2巻だといきなり冒頭で戦争始まっているのにも驚きましたが、こういう何でもアリな部分は結構好きです。
350P程度にトリミングすれば、もっと分量的にも読みやすく、物語も把握し易い良作になるかもと感じました。