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アフリカの小国モガンボで発生した内戦に巻き込まれた日本人と、反乱軍側が保有する2輌の旧式戦車を巡る物語。
とにかく何が凄いって、戦車の持つ本質・・・つまり圧倒的な暴力と破壊の象徴、人々に絶望をもたらす存在・・・という部分を余す事無く描ききっている事。
戦車は歩兵に弱いだとか、所詮は消耗品だとか、神の視点で見れば確かにそうなんですけど、一個人、一市民の視点ではやっぱり絶対の恐怖なんですよね。
いくらRPGで倒せると言っても、命中させるには肉薄する必要があるし、もし途中で発見されればまずは逃れられない。
この物語の背景には、大国や先進国の都合で翻弄される小国の悲哀と言った要素もありますが、やはり主題は戦車の恐ろしさを描く事にあるんじゃないかと思う。
終盤の、日本人農業指導員都筑と、イタリア人記者、政府軍の生き残り少尉の3人が策を練って戦車を奪取し、反乱軍のジェノサイドに対する報復に向かうと言う展開については、殆ど素人同然なのに戦車を操り、もう一輌の戦車と戦えたりするご都合な部分が無いわけではありません。
それでも、間違えて発煙弾を撃ってしまったりとか、不慣れゆえに慌てている様子がちゃんと伝わる描写でがされていて、それなりに説得力はあります。
どちらかと言うと戦車スキーの人向けかも知れませんが、とても面白い作品でした。
この作品は3部作になっているので、後の2冊も是非読みたいですね。
★密林の戦車狩り 感想
ラベル:書評