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つい最近映画化されたのも記憶に新しい、ハンター御大の出世作「極大射程」です。
この作品は何が巧いかというと、サスペンス的要素と活劇要素が相当高い次元で融合されている点、そして上巻と下巻とで追われる側から一気に追う側へと物語が転がる爽快感に尽きるでしょう。
上巻の巻末で死んだと思われたボブが、下巻で何事も無く再登場するのは強引な気もしますし、100人以上の敵を相手に、丘の上に陣取って超ハイペース狙撃をやってのける無茶なシーンがあったりもしますが、その辺はアメリカ的、ハリウッド的と思って笑って済ませましょう。
その代わりという訳ではありませんが、謎解き部分などはなかなかに凝っていて、強引さは感じさせない完成度です。ある程度銃や銃弾の知識が無いと判りにくい部分もありますが、この作者の場合そこがウリでもあるので、その辺のマニアックな要素を削ると、もう別の作家の作品みたいになってしまうのが痛し痒しですね。
例によってサブキャラも魅力的で、ある事件の際、狙撃に失敗して人質の女性を半身不随にしてしまった過去を持つFBI捜査官ニックが非常に良い味を出しています。
こういうヘタレキャラや駄目人間の類を、愛情を持って描けるのもこの作者の魅力です。
・・・唐突ですが、以前読んだ「地上50m/mの迎撃」を思い出した。
もっとも、あっちは戦闘シーンのありえなさや、自己顕示欲から薬莢に色を塗るという、薬室に薬莢が貼り付いて動作不良の原因になりかねない事を平気でやる「プロ」など、笑わせてナンボという、壮大なネタ小説なんですが、この「極大射程」にストーリーのアウトラインが似た部分も多く、多分影響を受けて執筆したんだろうなと思います。
ちなみに「地上50m/mの迎撃」の戦闘シーンがリアルと評しておられる方もいるんですよねえ。いや、それは絶対ありえないから(笑)。
ラベル:書評