2007年10月29日

アンダーウッドの怪 ディヴィッド・H・ケラー

underwood.jpg




あこがれのアーカム・ハウス叢書。
最初に手に取ったのは「アンダーウッドの怪」です。理由は、作者のデビュー作にして、古典SFを語る上では決して欠かすことの出来ないマスターピースの一つ「健脚族の反乱」が収録されているから。
この短編、一言で言うと人類の文明が一周してもとの位置に戻る話なんですけど、そこには行き過ぎた文明への警鐘、社会主義に対する批判などが盛り込まれています。単純で安直な文明批判と違い、新人類と旧人類の生々しい確執や、昨今顕在化している地方と都市部の人たちの意識の溝(と言うよりも断絶)も盛り込まれていて、現代でも充分通用する作品だと思います。

で、その他の収録作品の中で特に気に入ったのはズバリ「死んだ女」。
何というかね、ホラーなのかサイコなのか判然としない、足場の不安定さがより恐怖心を掻き立ててくれるんですよ。果たして誰が正常で誰が狂っているのか、狂っているとして、どの時点から狂い始めたのか、その辺りの事は一切作中で触れられない。
そのモヤモヤ感が怖い。
故意に限定された情報を読者に与える事で、最悪の想像を喚起させるという手法は、作者が精神分析医だからこその高等テクニックですな。

後は、導入部はグロテスクながら、オチは何となく微笑ましい「発想の刺激剤」。
いいなあこのオチ。不安のどん底に突き落とされたり、強烈な皮肉に苦笑いせざるおえなかったりする作品群の中で、皮肉は皮肉なんだけど、笑って済ませられる皮肉として締められているのが良い。
と言うかこの薬真剣に欲しいんですが(笑)。

他にも某映画の元ネタと思われる「怪音」とか、とことん笑えない「リノリウムの敷物」など印象に残る作品はありますが、全部書いていたらとんでもなく長文になるので泣く泣く割愛。
作品によって若干話の出来にムラがあるものの、全体としては充分面白い出来です。
ただ・・・現在ではかなり入手が難しい本なので、興味のある方は図書館などで探される方が良いと思います。
posted by 黒猫 at 20:32| Comment(0) | TrackBack(0) | ホラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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