地底獣国(ロスト・ワールド)の殺人 芦辺 拓 講談社 2001-06 売り上げランキング : 573626 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
この作品も、書評系サイトを巡回中にその存在を知って、以来探し続けていたものです。
タイトルに「〜殺人」とあるように、この作品は多分ミステリーに分類しても問題ないんじゃないかとは思います。例え恐竜や謎の古代人が蠢く魔境を舞台としていたとしても、殺人のトリックにある古代生物の習性が使われていたとしても、論理的に謎を解明していく手順はミステリーのそれですから。もっとも、怪作もしくはバカミスと言った方が正しい気もしますけど。
しかし、終盤の謎解き部分に関しては首を傾げざるおえない部分もあります。
確かに論理的には筋は通っていて、破綻した部分は無いのですけど、例えばダイイングメッセージの謎なんかは、そのメッセージが意味する物がどうと言う以前に、何で死の直前にわざわざそんな迂遠なメッセージを書き記すのかなという疑問の方が先に立ってしまったし、破天荒ながら作品を盛り上げてきた「ロストワールド」の存在自体に冷水を浴びせかける部分も蛇足だと感じざるおえない。
これは僕がSF等に好意的な人間だからかもしれないけど、ミステリー小説の中に古代生物蠢く世界があったとして、それが何か問題でも?と思ってしまう。
逆に言えば、本の分厚さで有名なある作家のように森羅万象を詭弁で説明してしまおうと言う姿勢の方が最近では傲慢に感じて、どうにもしっくりこない。
小説なんて所詮嘘の世界なんだから、何処まで読者を幻惑できるかがポイントであって、果たして冷めた態度をとる必要があるんだろうか・・・?
とまあ、それはあくまで個人的な感想ですけど、導入部の活火山の火口探検〜トルコはアララト山への探検行は純粋にワクワクしながら読めましたし、序盤で幾つか提示された伏線が見事に収斂される構成力も見事でした。
物語のガジェットであるトンデモ歴史学に関しても「んな阿呆なwww」と失笑しつつも、世界の歴史には意外にこじつけられる共通点が多い事に驚いたりと、何だかんだ言って結構楽しんで読んだ気がします(笑)。
万人にお勧めとはとても言えないけど、たまには変わった作品が読んでみたいという人には手に取る価値があるかも。