深夜プラス1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 18‐1)) ギャビン・ライアル 早川書房 1976-04 売り上げランキング : 34847 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ここ最近忙しくて、仕事すんで録画したアニメ見て感想書いてアップしてトラックバック送ってコメント付けて・・・が終わったら日付が変わっていると言うパターンが多く、読書はとってもスローモーになってしまっています。しかし積むペースだけは変わらないので困ります。
と、そんな近況はともかく、名作と言われる「深夜プラス1」です。
ある海外系ミステリーを取り扱うサイトでその存在を知って、以来ずっと気になっていた作品でした。
まずは、何と言っても読むのに時間がかかった。
別にページ数が多いという訳でもなく、展開が冗長と言う訳でもありません。
頁数は350P弱ですし、展開は次から次へと危機また危機の連続で飽きると言う言葉とはとことん無縁です。なのに、何故読むのに時間がかかるかというと、その巧みな伏線の張り方故。
ちょっとした会話の端にも伏線が仕込まれていて、新たな展開のたびに何ページか戻って伏線を確認して・・・と、そんな感じですから。ジャンル的には冒険小説ですけど、伏線の巧みな張り方は下手なミステリーでは太刀打ちできない位。
複雑な思惑が交錯するドラマ部分の面白さは当然として、車や銃と言ったガジェットもしっかりと活かされているのがまた良いですね。小道具が玩具臭いと、どんなに面白い筋書きも三文芝居に落ちてしまうのは良くあることですが、この作品においては小道具のディティールよりも、特徴とその効果の部分の描写に力が入っているのが特徴。
主人公ケインの持つモーゼルM712を例にとると、日本人の作家だと得てして長々と解説しそうな、寸法や重さや口径や装弾数と言ったカタログデータ部分の説明は、
「あんなデカイ銃をどうやって持っていくんだ、貨物列車で送るのか?」
という台詞一つで、ああ、きっと大きくて重いんだなと理解させるに留めておいて、銃撃戦のシーンになったらフルオート射撃を行ったり、ストックを取り付けて精密射撃を行ったりと、特徴を存分に活かした描写を見せてくれます。巧いなあ。
そして、何と言ってもケインと、相棒のアル中ガンマンロヴェルとの掛け合いが実に良い。
互いに言いたい放題なのに、いざ危機に向き合うと息がぴったり合うというのは、良くある要素ではありますが、でもやっぱり燃えますよね。
最後のシーンで、ロヴェルを心配して過激な行為に走るケインのツンデレぶりも最高です(笑)。これ、ハードボイルド作品としても一級かもしれません。主人公一人称視点というハードボイルドのお約束にも合致していますし。
いやあ、実に面白かった。また機会があればこの作家の作品読んでみたいですね。
ラベル:書評