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マサチューセッツの田舎町ホイートンで、現地のコカイン密売組織の調査を行っていた新聞記者が惨殺された。新聞社から依頼を受けたスペンサーは事件を追ってホイートンに赴くが、警察をはじめ町全体が捜査にたいして非協力的な態度を取る。
実はこの町は北米全体にコカインを供給する密売組織の拠点だったのだ・・・。
久々のスペンサーです。
正直なところ極めて微妙な作品です。
シリーズで言うと中期の頃の作品と言う事で、何だか展開に倦怠期を臭わせるものが滲み出しているんですよね。ヒネリが無いと言うか。
この手の探偵小説の醍醐味と言うのは、最初は些細な依頼だった筈なのに、気がつけば大きな事件に巻き込まれてしまっていた・・・という流れにあると思います。それがいきなり殺人事件の調査依頼から始まる時点で、探偵小説のテンプレ的にもどうよと言う感じ。
そして、後半の展開が確実に前半に比べて尻すぼみになっている事。多分この物語のあらすじを読めば、大半の読者は自分以外全て敵という町で、スペンサーがタフに孤軍奮闘するのを期待するはずです。それなのに、期待と正反対の方向へ畳むのは読者への挑戦なんでしょうか(笑)。
何というか・・・「移民が人口の大半を占め、犯罪組織の拠点となっている町に単身乗り込む」というプロット自体は悪くないと思うんですよ。季節感の描写も厳しい冬の寒さが伝わってきて悪くない。
そういう意味で素材は良かったと思うんですが、完全に調理失敗した感じですね。
長期シリーズ物にはどうしても中弛みの時期があるとは言え、本来のシリーズとしての方向性を見失いかけている作品と言うのはやっぱり辛いですね。
ラベル:書評