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牧野氏の新作は若年向けミステリー作品。
一読して感じたのは、これミステリー違うよね、と言う事。本の帯にはホラー・ミステリーと書いてありますけど、それとも微妙に違う。謎と言うほどの謎が提示されるでも無く、論理的でも無い。むしろ全ての面でオカルトの色合いが強い。カーの作品の様な、オカルトをガジェットに使った実は論理的なミステリーと言うのとも全然違う。
・・・要するに、良い意味で実に牧野修らしい作品だと言う事です。
若年層向けと言う事で若干猟奇風味が抑えられているとは言え、グロとは違う方向性で充分すぎるほどに生理的嫌悪感(褒め言葉ですよもちろん)を感じさせてくれる。これでこそ牧野です。
物語は主人公の小学生時代と、中学生になった現在との二つの時間軸が交差しながら進行しますが、小学生パートの「真の科学クラブ」が素晴らしすぎる件について。
主な活動内容は、粛清の名のもとにあらゆる手段を使って問題教師を断罪断罪また断罪。
そうやって悦に入るのが趣旨のクラブですが・・・それもまた、年齢に比べてアンバランスに肥大した自意識故の選民意識、そこから来る疎外感のはけ口であり、ぶっちゃけて言うと空気読まない中二病が大人を敵視&攻撃する壮大なオナーヌでしかない。
なんだけど、この中二病的心理の描き方が実に上手いです。ある意味これはハイクォリティな中二病小説かもしれません。
そういう意味で、ホラーでありオカルトでありミステリーでありながらも、(歪んだ)青春ものとしての側面もちゃんと持っていて、ミステリーYA!というシリーズの趣旨にも合っています。
冒頭とラスト前に、ほんの少しSFチックな要素があるのに関しては、果たしてこれは?という気もしましたが、伏線としてきっちり昇華させていましたので、敢えて異物を混入させる事で読者の関心を惹く手段だったのかも知れません。
むしろこれだけ色々な要素を詰め込んで、破綻させず綺麗に纏めた巧さに感心。
牧野ファンとしては、充分楽しめました。
ラベル:書評
黒猫さんの書評を読むととても面白そう!!
歪んだ青春物ってところにとても惹かれます。
私もその内読んで見ま〜す(^^)。
意表をついてヤング向けレーベルからの新作となりましたが、牧野スピリッツは健在なので、充分に厭厭しながら読めますよ。
若い人向けってことで、一昔前のライトノベル的に改行が多めですが、それが牧野節と組み合わさると独特の酩酊感を伴う不思議なパワーを発散しているのも見所かも?
>歪んだ青春物ってところにとても惹かれます。
すごーく嫌なガキどもなんですが、僕自身嫌なガキだったので何処となくシンパシーを感じます。
>私もその内読んで見ま〜す(^^)。
是非!