![]() | 日本幻獣図説 湯本 豪一 河出書房新社 2005-07-21 売り上げランキング : 375996 おすすめ平均 ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本書は江戸期から明治初期にかけて、この国に存在していた「幻獣」を、当時の錦絵や新聞記事等の資料を基にして主に文化論的な背景から論じています。
まず幻獣の定義ですが、著者は妖怪とは違うとして区別しています。これは妖怪が垢舐めや網切り等の、「事象」に血肉を与えた存在であるのに対して、幻獣とはより生物的なもの。
具体的には河童、天狗、件、人魚などを指します。
これらの幻獣が、当時のメディアや伝承を通じてどう変化し、拡散して行ったのかという視点はありがちで意外と無かったもの。
民俗学的視点から考察した本はゴマンとありますけどねー。
と・・・難しい話は置いといて、妖しい幻獣に関するビジュアル的な資料も豊富に掲載されているので、純粋に幻獣図鑑として楽しむのもまた良し。
特に、掲載されている絵に関しては有名所の石燕等ではなく、当時の新聞挿絵や「姫国山海録」等の、あまり知名度の高くないものを使用している為、こんなの初めて見るぞというものも多いのが極めてポイント高し。。
特に蟹とも獣ともつかぬ雷獣の薄気味悪さと、姫国山海録から何種類かチョイスされている幻獣は必見。何と言うか、絵の下手さ(失礼)も手伝ってはいますが、そこに描かれた得体の知れない生物達はもうシュルレアリスムの域。昔の人のイマジネーションの豊かさにはただただ驚かされるばかり。
こればっかりは文章で表現できないので、実際に読んで貰いたいですね。
・・・ところで、「南極のニンゲン・ヒトガタ」や「スカイフィッシュ」、やや古いところだと「モスマン」や「3mの宇宙人」なども現代の幻獣ですよね。どれもUMAと言うには生物としてのリアリティは無く、しかし霊的なものよりは肉感を持っているという点で、資格は充分かと。
ラベル:書評