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前作の「六とん2」がなかなか面白かったので、勢いに任せて3巻も。
ちなみに「面白い」件ですが、かなり人を選ぶ面白さではあります。ミステリーと言うジャンルを深く愛している人、ミステリーの醍醐味は、謎をかけた作者と読者の真剣勝負の様なものにあると考えている人には・・・確実に噴飯ものです。ご注意くださいませ。
そんな六とんの3巻目ですが。
うーん、2巻の時は冒頭の第一話目から壮絶な肩透かしでクラクラさせてくれたんですが、今度のは六とんシリーズのノリのまま変に上手くまとめようとした為、第一印象としては、方向性がどっちつかずであまり宜しくない。おいおい、大丈夫かよ・・・。
と、心配させたものの、2話目、3話目といつものノリを取り戻して、一安心。たまーに大きくハズレた話が入っているのもご愛嬌。今回の特徴としては、シュールな話が多少増えたかな?というのがあります。もちろんトリックはいつもながらシュールなんですが、そっちではなくて物語全体としてシュールな、と言う意味です。「死ぬ」とか「嘘と真実」とか、笑えねえよ、みたいな。
個人的にはその「嘘と真実」が本作では一番好き。
嘘による皮肉なサイクルが延々続いて、一つの真実でサイクルが断ち切られた途端に、更に皮肉で後味の悪い結末が・・・という話。意図的に文章の使いまわしを多用して、テンポの速さを強調した、短編ならではの遊びとも言えます。
ただ、後半の話は梶尾真治系のちょっといい話系SFなんですが、個人的には今ひとつでした。
作者自身はこういう話を書きたい雰囲気を感じるんですが、書きたいと言うのと、適正があるというのは別の話。個人的にこの人は、ラノベで言うとキノの旅の様な、毒のあるシュールな短編を書くのに一番適正があるように思えます。
ラベル:書評