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六とん・・・何とも妙なタイトルですが、読んでみてやっと理解出来ました。もともと前作が「六枚のとんかつ」というタイトルだったので、続巻は略して「六とん」。
あー。
まあ。
その。
なんだ。
もしかしなくてもナメてますか?
と、そんな六とんですが、ふむふむなるほど、これはまた一風どころではなく変わったキワモノミステリーですね。
多分本格や新本格と言ったジャンルを愛する人には、ミステリーに対する冒涜としか見えないでしょう。
僕みたいにそんなに思い入れの無い人間は、こういうのもアリかなと思ったりもしましたが。
本書には脱力系の短編ミステリーが7本、同じく脱力系短編SFが4本収録されています。ミステリーの方は保険調査員(失業中)が主人公の3本と、半下石刑事が主人公の4本ですが、個人的には保険調査員(失業中)の3本の方が好みかな。
もうヒネリなんて全く無い。考えるな感じろを地で行く完全脱力系のストーリー。下手に頭を使うと逆に混乱してしまうこの感覚、とても新鮮です。一話目の、ダイイングメッセージの謎なんて、普通に5分位考えて全然判らなくて、適当に眺めた途端謎が理解できてしまったこの感覚。ポートピア連続殺人事件の
「こめいちご」
の謎が解けた時と同じくらいのカタルシスでした。はい、やたらミニマムなカタルシスですね(笑)。
SFの方はと言うと、やっぱり最終話の「きみがくれたメロディ」に尽きますね。夢を諦めかけた売れない音楽家と、視力を失って生きる望みをなくした少女との時を越えた交流の物語で、40ページ程のボリュウムですが、これ、登場人物や背景を膨らまして書けば、充分200P程度の中篇になり得ます。短編にしておくのが勿体無いなあと思いつつ、「勿体無い」と思わせる事にこそこの作品の真の価値があるのかも知れないとも思います。
まあこのノリ、続くと飽きが来そうではありますけど、意表をつく変化球としてはなかなかのものでした。
たまには変わったものを読みたいと言う人、キワモノを理解できる人は一度読んでみても良いかも知れません。
ラベル:書評