2007年05月30日

四度目の氷河期 荻原浩

四度目の氷河期四度目の氷河期
荻原 浩

新潮社 2006-09-28
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母子家庭で育ち、子供の頃から何処か他人と違っていたワタル。
彼は自分と自分を取り巻く小さな世界の中で孤立し、母親の仕事に関係するある事柄から、自分の父親はクロマニヨン人だと思い込む。
ワタルはやがて来るであろう氷河期を生き抜くためにと、一人で石器を作ったり、狩りの技術(と言うほどのものでもない)を習得しようとする日々の中、サチという都会から引っ越してきた少女と出会う。彼女もまた特殊な身の上の持ち主だったが、彼女との出会いからワタルの世界は広がり始め、中学、高校と進学するにつれて、「自分は決して他人と違う存在等ではない」事に気づき始める・・・。


荻原さんの作品はこれが2冊目なんですけど、本当に読後感が爽やかな作風だと思う。
差別、孤独、非行、母親との死別、傷害・・・と、内容は結構ハードなんです。
なんですが、本編を終始一貫して「少年の自我の確立」という軸が通っている為、上記の要素はあくまで「乗り越えてゆくもの」という位置付けの範疇に収まっていて、物語の流れをぶれさせるほどの自己主張をしていません。
この構成は非常に上手いと感じます。

自我の確立・・・砕いて言うと自分探し。
ここ最近はこの自分探しという、うすら甘い言葉に対して批判的な意見を述べる人が多く、かく言う僕もあまり良い印象は持っておりません。
が、この作品世界におけるワタルの自分探しには大いに入れ込んでしまいました。それは単純に波乱の物語だから・・・と言う以上に、僕自身がこのワタルほどひたむきに生きているのかと問われると、返答に窮してしまう位に惰性に陥っているからかも知れません。
巷に溢れる「自分探し」が現実からの逃避や時間稼ぎだとするならば、この作中のワタルの「自分探し」は現実を掴む為のもの。
こんな思春期を送りたかったと栓の無い事すら思ってしまいました。

一つだけ言うと、終盤のロシア編〜サチとの再会〜ラストまでの流れがやや駆け足気味で、多少強引な展開もありましたが、作品の評価を下げるほどのものではありません。
文句無く良作。


ラベル:書評
posted by 黒猫 at 00:41| Comment(0) | TrackBack(2) | 青春・恋愛 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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