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惑星ヤポリスで発生した汎銀河聖解放戦線による大規模爆弾テロで、夫と愛娘を失い、ただ一人生き残った神鷹静香。
40日間意識を閉ざして廃人状態になっていた彼女を、再び現世に引き戻したのは夫と娘を奪ったテロ組織汎銀河聖解放戦線に対する壮絶な憎悪と復讐の念だった・・・。
梶尾真治氏といえば近年「黄泉がえり」のヒットで知名度を上げましたが、セカチューとか今会いに行きますと時期的に被った為に、そっち系列の作家と同一に語られる事が多く、昔の作品を読んだ事のあるファンにとっては「???」という状況になっております。
確かに泣かせる話は氏の得意技の一つで、昔読んだ「未踏惑星キー・ラーゴ」とか、SFジャンルにありながらも優しさに満ち溢れていて涙無くして読めない名作だと思いますが、その一方で今回取り上げる「サラマンダー殲滅」の様なハードな(考証に拘ったハードSFと言う意味ではありません)作品も執筆されておられます。
本作は第12回日本SF大賞を受賞作で、過去何度か文庫化されたものの、永らく絶版状態となっていたため、興味はもっていたものの手に取る機会に恵まれませんでした。
昨年光文社から再販された際に購入したものの、予想外のボリュゥムに尻込みして本棚で待機状態となっていた訳ですが、いざ読み始めると、テンポの良い文章と、メリハリの利いた構成でぐいぐい引き込まれるように読めました。
本作のメインテーマは復讐劇。
主人公静香は意識が回復した際、担当の精神科医によって精神にあるリミッターをかけられています。それは、本人がいくら復讐を望んでいても、相手が汎銀河聖解放戦線に属する人間と精神が認識した時点で手足が硬直してしまうと言うもの。これは静香の父親が、娘が無謀な復讐劇に身を委ねたりしないように・・・という思いからかけさせたリミッターでした。
しかし静香は、在人類惑星条約機構対テロ班契約軍人の夏目と出会った事から、復習の為に戦士になる道を選ぶが、彼女の精神には例のリミッターがかけられています。
このリミッターを解除する方法は一つ。
それはP.アルツ剤という薬品を服用する事。その薬品は人工的にアルツハイマー状態を引き起こすと言うもので、リミッターの存在を完全に忘れ去り無効化できるものの、時が経つにしたがって他の記憶も失ってゆき、ただ理由も分からず復讐の為だけに生きる存在になってしまいます。
更に症状が進むとそれすらも忘れ去り、抜け殻の様な存在にまでなる危険性が・・・。
ただの痛快復讐劇ではなく、復讐を果たす為には代償として記憶・・・夫や愛娘の記憶すらも差し出さねばならないという設定が、最大の特徴であり、本作特有の物悲しさを醸し出している気がします。
テロ組織の本拠地「サラマンダー」破壊に成功した数年後、静香は完全に全ての記憶を失ってしまったものの、あるいはそれこそがこの物語の本当の救済だったのかとも思います。
そして、事件を通して知り合った夏目やラッツォが、今のそんな彼女を支えてくれています。
願わくば夏目と共に幸せに暮らしていって欲しいものです。
汎銀河聖解放戦線壊滅後も、世界にテロと戦争の種は尽きませんが、もう静香はそれを知る事もないでしょう・・・。
いやいや、いつもより感想が長くなりましたが(笑)、それだけ面白かったと言う事です。贅沢を言うともう少し静香の記憶が失われていく過程を描けば更に涙腺を刺激する物語になったと思いますが、現状でも傑作と呼ぶにふさわしいので、あくまで贅沢に過ぎません。
SFと言っても科学技術の考証が云々という性格のものではありませんので、SFはちょっと・・・という方でも安心して読めます。
まだ未読の人は是非読んで欲しいですね。
超名作。
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リミッターの存在、解除方法とその副作用に思わず萌えてしまう作品ですねぇ(萌えって言うな
ってなワケで、黒猫さんの書評に興味を惹かれ、帰宅途中に近所の本屋で捜索&購入してきました
まぁもっとも、積読本が多いので読み始めるのに時間は掛かるかもしれません(笑
これは一つの萌えですよ。
ちなみに僕は影法師さんのプッシュで関心を持って、Missing全巻買いましたし、断章のグリムもぼちぼち集め中です。
同じく積読本が多くて(ry
最近のんびり読書する時間がなかなかとれませんよ・・・