恐らく今時戦記なんてウヨクしか読まないと思われてそうですが、前回書き足りない事がイロイロあるので第2回目です。
下手したら第3回もあるかも知れません(汗)
リアル厨房の頃から仮想戦記フアンだった僕は、自分の中で仮想と火葬の線引きをするガイドラインが出来ています。
その一番の要素が、タイトルに「〜の艦隊」と付く作品は得てしてつまらないというもの。昔沈黙の艦隊と言う漫画がヒットし、「紺碧の艦隊」が仮想戦記ブームを作り出して以来、「艦隊」という言葉は作品の売り上げにも関わってくるようで、数多の作品タイトルに使われてきました。
幾つか挙げると、
「天翔の艦隊」
「彗星の艦隊」
「孔明の艦隊」(笑)
「旭日の艦隊」
「天空の艦隊」
「ガラスの艦隊」(これは違う)
etcetc・・・・・・
この手の作品はまず日本大勝利ありきで書かれているため、技術論的にも戦術論的にも歴史認識的にも全く駄目駄目で、都合よく開発される無敵新兵器や稚拙な罠にコロリと引っかかる米軍など、読むのがひたすら苦痛です。
でもこういうのの方が売れるようで、よく書店でリーマンの中間管理職っぽいおっちゃんが物色していたりする訳ですが。
で、そんな呪いの言葉「艦隊」ですが、僕の中で唯一、未だ印象に残っている作品があります。
それはSF作家山田正紀氏が、機神兵団(これもそのうち触れたい作品)に続いて執筆した仮想戦記「影の艦隊」。
太平洋戦争終結後、北方四島に建国された新国家"日本群島人民共和国"。
ここに社会主義の理想にとり付かれた若者達が集い、朝鮮戦争を背景に米軍の作戦行動の妨害工作等を行うというのが大まかなストーリーです。
物語は日本に残って国家の再建に尽力する道を選んだ者、理想を求めて日本群島人民共和国に身を投じた者とのふたつの視点で進行するのはこの手の作品としては斬新。
そして・・・悲壮感が半端ない。
初期の巻こそ理想に燃える若者達の姿を活き活きと描いていますが、中盤以降は物資の欠乏や仲間内での不協和音、大国(ソ連)のエゴにひたすら翻弄・・・と、理想に隠れて見えなかった「現実」が若者達に牙を剥く展開で、読んでてすごく辛かった記憶があります。
これって仮想戦記の皮を被った青春群像ものだよなと言う気もしますがそこはそれ。僕的には「艦隊」と名の付く作品では間違いなく最高傑作です。
なおイラストが草なぎ(漢字だと上手く表示されません)琢仁さんというのもジャンル的には異色。
影の艦隊
amazonリンク。今全巻揃えるのはちょっと難しいかもしれません。