スワガーシリーズの最終章にして最高傑作。
上下巻構成でページ数も多く、ちょいと難物だな・・・と思っていたんですが、上巻下巻で物語の色合い自体が全然違う事や、これまでのシリーズで張られてきた伏線が次々に処理されていく事もあって一気に読めます。
大筋を挙げてしまえば、単にベトナム時代からの因縁だった宿敵との戦い、という一点に全てがある訳ですが、過去の因縁をおさらいするために上巻丸ごとベトナム戦争当時のエピソードとして使ったのは快挙。それもただひたすらドンパチ、と言う訳ではなく、国内の伝説的反戦活動家との友情や、ベトナムでのスワガーとダニーの出会い、薄気味悪いロシア人スナイパー、ソララトフの登場・・・そしてようやくクライマックスで包囲された友軍を救出すべく2人で一個大隊の敵に立ち向かうというけれん味大爆発のドンパチ祭り。
既に極大射程にてスワガーの超人的な強さを見ているので、今更突っ込む気はありません(笑)
一転して下巻は舞台を現代に戻し、スワガーの家族を付け狙う宿敵に家族を守るべく立ち向かう展開。警察よりも己のライフルの方が頼りになると言うストーリーは実にアメリカ的ですが、基本的に嫌いじゃありません。
敵ももとスナイパーですから、問答無用に大暴れと言うよりは、蛇のようににじり寄ってくる感じです。敵の偏執的な性格も含めて、上巻に比べて結構ウエットな雰囲気で進行するのが特徴でしょうか。
以前読んだ「地上50m/mの迎撃」が突っ込みどころ満載ながら不思議なパワーを醸し出していて、突っ込んだら負けよという暗黙のルールに護られたネタ小説だったのに比べて、本作は内容的にも描写面でも好対照です。良く言えばガチ。悪く言えば冗談が通じない。
ある程度読者に銃の知識が無いと理解しづらい部分があるのも人を選びそうです。
物語の面白さは抜群ですが、やや銃オタ向けかもしれません。
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