2007年01月13日

ぼくらはみんな、ここにいる 大石英司

私達の幸せは四00年の時を超えて永遠に輪廻している。

正直この本、どのカテゴリーに入れて良いのかかなり迷います。歴史、SF、ファンタジー、青春・・・どの要素も盛り込まれていて、なかなかこれ!と判じられない。更にこの物語中で展開する出来事、それの顛末を知っていて、全てのお膳立てを整えた人物が登場人物の中に一人いる。それは一体誰か・・・という部分も含めるとミステリーでもあります。
最後まで読了したら、謎だらけだったプロローグを読み返してみると、なるほどあれはこういう伏線だったのかと感心してしまいます。この辺実に巧いなあ。


で、内容的には前作(大石氏の本業であるミリタリー系を除外した場合の"前作"ですが)の「神はサイコロを振らない」と同じくタイムスリップを取り扱ったものとなっています。
普通タイムスリップものと言うと、主題は「いかにして元の時代に帰るのか」という点に集約されてしまうのですが、大石作品では元の時代に帰る事よりも、現状を受け入れ、そこに如何にして適応してゆくのかという点に重きが置かれているのが特徴。
むしろ本作の場合元の時代に帰ってしまうとパラドックスが発生してしまうので、飛ばされた先で生きていくしかないという過酷な運命が用意されていたりします。


また、前作の、登場人物が多くて物語が散漫になってしまったという反省点もしっかり活かされていて、今回はメインの登場人物を絞り込み、かつ舞台もある無人島に設定する事で方向性がぶれない様に組まれています。
ただ、色々不穏な時代に飛ばされたわりに一発のミサイルは愚か、銃弾の一発も撃つ事無く(猟銃と言う名目でPSG-1が持ち込まれているにも関わらず)、精々盗賊を現代から持ってきた改造エアガンで撃退する程度というのは、いつもの大石フアンには物足りないかもしれません。
まあ、ハードカバーは女性層にも読んで貰いたいそうなので当然の措置と言えば当然の措置なんですが。

個人的に残念なのは終わり方がやや唐突だった事。天草四郎の意外な正体とか、現代人の一人が彼に協力した事など、思わせぶりな展開を予感させつつも、その辺りは軽く流されてしまったのはちょっと悲しかった。
でも作者が書きたかったのは皆の小さな努力の積み重ねが歴史を作り、そしてそれを支えるのは友情であり愛情である、という事なんだと思います。多分。
だから歴史ネタはあくまで盛り上げるためのエッセンスであって、それ以上のものではないのでしょう。

・・・でももう50ページ程長かったらなあ(笑)




ぼくらはみんな、ここにいる

ラベル:書評
posted by 黒猫 at 14:45| Comment(0) | TrackBack(1) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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京四郎と永遠の空/2話 三華月白夜
Excerpt: これだけ笑えるアニメは久々ですね。
Weblog: てけと〜な日記
Tracked: 2007-01-14 13:28

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