2006年12月14日

チョウたちの時間/山田正紀

それがわれわれの責任だと・・・・・・知性だ、知性が人類をこんなにも醜くしているのだ

山田氏の作品を読むたび、氏は人類性善説に基づいて作品を書く人だと感じます。この作品もまた然りで、人類が本来あるべき姿、あるべき歴史と、それを恣意的に歪めようとする存在との戦いを、純粋時間というギミックを駆使し、歴史のターニングポイントなどを絡めつつ描き出されています。
時間という要素が軸となるため、またぞろ頭の痛いパラドックス云々に苦しめられるのかと身構えましたが、純粋時間なる概念の中ではパラドックスは発生しないという設定があるので、その点で頭を悩ませる事はありませんでした。
ただ小説としては冒頭の「ぼく」視点の後新介視点と続き、中盤以降はマヤ、シンの時間世界の住人視点で進行しますが、切り替えが決してスムーズではないので章が変わるたびに戸惑いを感じました。内容の性格を考えると終始マヤ視点で良かったのでは・・・?

なお本作の重要キャラであるマヨナラですが、本名エットーレ・マヨラナ、20世紀初頭に活躍したイタリアの物理学者であり、核理論の扉を開きましたが、1938年謎の失踪を遂げ、現在に至るも行方は謎のままという実在の人物です。この人物を本作ではああしてこうしてこうなって、成る程そうきたかという形で登場させてます。この辺りは作者の上手さを感じさせるものがありますね。

非常に哲学的な内容で、特に終盤は作者のインナースペースに入ってしまったかのような展開となりますので、著しく読者を選ぶ作品ですが、物語としても、理論としても一歩筋は通っていますので理解に苦しむと言う事はありませんでした。





チョウたちの時間



ラベル:書評
posted by 黒猫 at 22:21| Comment(0) | TrackBack(0) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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