これまでありそうで無かったモノづくりの世界を取り扱ったライトノベル。
鉱物に特定のパターンを掘り込んだ石を蒸気機関に取り付けることで本来以上の力を発揮するという「機石」の発明によって蒸気機関の技術が飛躍的に発達した世界が舞台となっています。平たく言えばスチームパンク。
機石は上記の如く不思議な力を持っていますが、それは決して魔法ではありません。特定のパターン=回路と解釈してもらっても問題は無いかな?
珪石を特殊加工してチップが生まれる様なものです。多分。
そういう次第なのでこの作品、魔法バトルは愚か、戦闘シーン自体皆無。伝説の機石職人ドームスター(故人)の息子ドミが、父親の後を継いで機石職人としての道を歩み始めるまでを描いた物語です。当然お約束で最初は父の事を嫌っており、父が生涯を捧げた機石自体も大嫌いだったりする訳ですが。
着眼点は面白いと思います。思い切ってバトル要素もセカイ要素もバッサリ斬り捨てて、職人の世界を描いたと言うのはライトノベルとしては斬新でしょう。
しかし斬新なプロットながら、それを充分に活かせていたかと言うと微妙。随所に「それに必然性はあるのか?」と問いたくなる部分が散見されました。
元来地味なジャンルだけに、同ジャンル作品ではイロモノ系ライバル職人が次から次と登場して腕を競い合う展開に持っていくことで緊迫感を持たせているわけですが、この作品では職人として認められるまでの紆余曲折のみに終始しており、今一つ盛り上がりに欠けます。本来そういうもんだろうと言えばその通りなんでしょうが、物語なんだからもっと馬鹿馬鹿しい展開があっても良かったのでは…。
いや変なところで馬鹿馬鹿しい部分はあるんですが、本筋とあまり関係ないだけに単なる悪ノリにしか見えないのが残念。
まあその本筋にしても、構成自体に難があるわけですが。
キャラクター的にはかつてドームスターと共に働いていた老人達が出番は少ないものの良い味出しています。何か、町工場の熟練工と言う雰囲気で、口より腕で物を語る人たち。実に渋い。
そうそう、イラストはヤバイです。表紙は綺麗な絵ですが、モノクロの挿絵に関してはとても表紙と同じ人が描いたとは思えないお粗末ぶり。ドタバタシーンばっかり絵にしているのも正直どうかと思いますね。キャラクターの魅力を引き出す挿絵ではありません。
参照リンク
http://blog.so-net.ne.jp/maxim/2006-10-28-4
http://maijar.org/?q=node/781

ストーンヒートクレイジー