前巻の短編形式から本来の流れに戻った6巻。
いよいよトリステインはアルビオンに対して宣戦布告、反攻作戦に出るというのが全体を通しての背景です。
男子生徒大半が軍に志願し、閑散とした雰囲気の学園ですが、いつもマイペースで才人が持って帰った零戦を整備しているコルベール先生。
今回の主役は間違いなくコルベール先生でしょう。彼の秘められた過去と自らの意思で封印していた真の実力、更には魔法と初歩的な科学を組み合わせて発明された新兵器などなど、見所満載で、とても一巻でフーケに軽く騙されていた人と同一人物とは思えません。
しかし本当の力が発揮されたら、次は悲しい別れがくるのは物語のお約束。
この巻をもって彼は永久退場となってしまった模様・・・合掌。
最後のシーンで、零戦にこっそり積まれていた先生の手紙(遺書)はちょっとあざといかなという気がしなくも無いですが、折角作者が用意してくれた泣かせのシーンですから、素直に涙するのが読書人の嗜みというものです。
と、まあシリアスなシーンが最大の見所となっている6巻ではありますが、笑わせどころもちゃんと用意されているのがゼロ魔クオリティ。
実家に従軍の許可を貰いに帰るエピソードで、酒に酔ったシエスタが柄悪くなるくだりとか、アニメでも使われた例の小船、あの中で才人とルイズがあんな事やこんな事(未遂)しちゃうくだりとか、もう笑いっぱなしでした。テンパってる才人の様子なんか、多分男なら誰でも持ってる思い出したくも無い恥ずかしい記憶を無理やり穿り返してくれるんじゃないでしょうか(笑)。
以下余談。
この作品で上手いなと思うところは、例えば零戦が登場し、科学に理解のあるコルベール先生というキャラがいるなら、流れ的に零戦を多少デチューンしたものや、魔法と組み合わせた魔改造零戦を量産させたりといったチープな展開がありそうなのですが、作中世界の冶金技術では必要な精度の部品を作れず、また同一規格の部品を量産するという発想自体が存在しないという制約があって、機関砲の金属薬莢一つ作れない。あくまでオーパーツでしかないという位置付けをしっかり守っている点です。
これは昔日本がドイツ製航空機エンジンを手に入れても、同等の精度を出せる工作機械や冶金技術が無くて満足な複製すら出来なかった事や、戦後米軍のお下がり兵器を供与してもらった際にも同様の事態が起こった事を考えると当たり前と言えば当たり前なんですが。
意外と火葬戦記系小説ではその「当たり前」すら理解できてない作品も多々あったりしますから、それ考えると侮れませんねゼロの使い魔。

>酒に酔ったシエスタが柄悪くなる
ルイズ様にあんなこと言っちゃうなんて、失礼極まりない…… たぶん本心なんでしょうけど(笑)。
産業革命を経験していない世界では社会構造がまったく異なるのは当然ですが、技術面にも言及しているのはさすがといった感じです。
コルベール先生に黙祷!
シエスタの「おい才人」「とにかく飲め」が酔っ払いのおっさんみたいでウケました。なお今週のる〜んでアニスが酔っ払って居酒屋のおやじに絡むシーンも笑いましたが、それはそれ。
ゼロは軽妙な台詞回しやスプラスティックな面ばかりが目立つせいか、楽しいけど薄いという印象を持たれがちですが、意外と世界設定なんかしっかりしている気がします。衒学的に小難しい単語を並べ立てればカッコいいと勘違いしたライトノベルが急増中の昨今では、真正面から直球で勝負する姿勢が高感度大です。