籘真 千歳
1作目で完結してたと思ってたら2巻目が出てたでござる。
1巻(と言ってもいいのかな)で感じてた、作者の人の内面部分のあれこれが2巻では更にパワーアップして全面に出てきていて、その点に関しては評価が分かれるみたいですが俺は支持します。
というのも、この作品は壮大な作者の照れ隠しみたいなものが随所から感じられて、読了したあとなんだかニマニマしてしまうんであります。
例えばレギュラーの鏡子女氏の言動なんかは、ひところブームになったジコセキニン論を更に先鋭化させた様な、はっきり言って不快感しか感じられない物言い(この物言いを小気味良いと感じる方もいるらしいが、そういう人は多分「世間」と「自分」は隔絶した存在で合って、あらゆる世間の荒波や風雪は自分のところには届かないと盲信していられる幸せな身分の方だと思う)をズババンとやってのける訳でありますが、ではその鏡子さん自身はどうかというと、その言説を率先して体現しているとはお世辞にも言えない引きこもりで、決して独立独歩な無敵超人ではありません。
俺はジコセキニン論というのは、あらゆる意味で自己完結した超人にのみ許される理論であって、多かれ少なかれ他人の影響としがらみの中で義務と責任を共有しながらでないと生きられないい圧倒的多数の凡人が振りかざすべき言説だとは思ってません。
いや、別に言うのは個人の勝手なんですけど、それは天に向かって唾を吐く行為でしかないと。そういう話です。
ともかく、一見すると無茶言ってんなーと思えてしまう部分が悪目立ちしている一方で、物語自体はその正反対。
作者の人が本気で鏡子理論を信奉しているなら、今回の事件に関わった大半の人物は惨めに死にさらす筈なんですが、それなりの救済が用意されているわけです。一連の突き放す様な言動は何だったか…と言うと、やっぱり照れ隠しなんかなあ。
個人的にこの作品で一番好きな部分でもあります。
物語の方は中盤までバラバラに起きていた事件が終盤で1つに収斂される構成になっていて、若干力技も無きにしろあらずではありますが基本的にはテクニシャンといった感じです。
最後にどんとひっくり返しもありましたしね。
ちょっと読みづらい部分もありますけど、読了すればそうした不満もあまり感じませんでした。満足。