一言で言ってしまえばキル・ビルであり仁義なき戦いであり、全体を通して漂うのは菊地秀行風味。
異世界の技術で生まれた改造人間や人外の化け物が犇くもう一つの日本、そこは未だに第二次世界大戦が終結していない、違った歴史を歩んできた世界でもあります。
かつて広島市を支配していたヤクザの連合組織、報国究理会の会長が後継を指名しないまま死去した事に端を発する、纐纈考廉会と愚者殲滅党との抗争が語られるのが第一巻の概要。
これを背景として、愚者殲滅党の"鉄砲弾"少女榊塚アカリと、広島市を訪れていたアメリカ人少年アドルファス・クーリッジのボーイ・ミーツ・ガール物語が繰り広げられます。
感想としては、素直に面白い、と言えます。
組織間のドロドロした駆け引きや裏のある登場人物達、愚直なまでに親分に忠誠を誓う主人公、すべてこの手の作品ではお約束と言える要素なのですが、そこに異境という要素を加える事で更に過激で馬鹿馬鹿しい娯楽作品として仕上がっています。
特に後半の敵対する矢車一族に対してアカリが単身戦争をしかけるくだりでは、人間とは思えない異形の超能力集団を相手に100ページに渡って大活劇が繰り広げられますが、矢車一族の異形っぷりはあちこちのアニメや漫画に元ネタがありそうでニヤリとさせるものがありました。
初登場時はいまいち気弱な少年という役回りだったアドルファスにも話が進むにしたがって特殊能力が覚醒してゆきますが、この能力に関してもなにやら大きな伏線が埋設されている雰囲気です。特にアドルファスが眠っている時にいつも見る夢というのが、ベルリンの壁であったり、アポロの月面着陸であったり、ケネディ暗殺、天安門、9.11テロと言った、作中世界では起こっていない、本来の歴史での事件というのは、この少年が作中世界そのものに対する何かの鍵だと言う事を暗示しているようです。このあたりは次巻以降でおいおい明かされていくでしょうが・・・。
個人的にはクーリッジ家のメイドさん、ヘイゼルがツボでした。
次巻では冥土服の着用を激しく希望します。