ドラマ化にあわせて文庫が出たので読んでみました。
現代に生きるフリーター青年と、昭和十九年に生きる予科連の軍国青年がタイムスリップによって入れ替わってしまうという話。
この手の作品にありがちな鼻に付く様な反戦思想もしくは戦争賛美思想はさほど無く、二人の主人公視点で時代を見つめながら時にコミカルに、時に物悲しく現代を描き出しています。
それぞれの主人公視点に入れ替わる度に地の文も今時の頭悪そうな文章になったり、硬質な文章になったりするのは芸コマ。
資料として日本軍関係なら外せない光人社の書籍を多数参考にしていますので、考証面でもこの手の作品としては比較的良く書けていると感じました。あくまでこの手の小説としての話ですが。
タイムスリップという要素を前提に組み立てられた話なのでSFのカテゴリーに入れましたが、本当は青春小説が正解でしょう。
過去から来た吾一がとても良い味出しています。現代に戸惑い、誤解を多分に含んだまま何とか適応しようとする姿、過去へ行ってしまったもう一人の主人公健太の彼女ミナミとのくすぐったくなるような恋愛(健太と吾一は全く同じ姿をしているという設定です)。健太の両親とのやりとり・・・
でも最期は・・・。゜(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
そうそう、上で鼻に付く云々と書いておいていきなりですが、吾一が、現代の東京を見て「我々が守りたかったのはこんな国では・・・」と言う感じの感想を持つシーンがありますが、正直この点だけはもうお腹一杯です。漫画のジパングでもこうしたニュアンスは出てきましたが、もう手垢付きまくってます実際。
それさえ目を瞑れば結構楽しめる作品でした。戦争をテーマにしながら悲壮感があまり無いのがいいですね。
48冊目。
ラベル:書評