漫画「ジオブリーダーズ」の影響で読み始めた・・・というと何やら情け無い感じたが、きっかけなんか何でもいい。
ボストンの私立探偵シリーズ、それがこのスペンサー・シリーズだ。
本書は第一作目とあって、まだまだキャラクターの造形が固まりきれてない部分が多々ある。美食家(ただの食道楽)で、皮肉家で健康マニア・・・そんなスペンサーの基本設定は出来ているものの、この手のハード・ボイルドものには欠かせない要素――つまりタフでマッチョな部分が、どこか形式的すぎるようだ。
シリーズが進むとスペンサーの「マッチョ」はやや空回り気味のものになってきて、実際には恋人の尻に敷かれている雰囲気が漂い、それがまた微笑ましいものとして描かれるのだが、第一作目ではまだまだ「固い」。
要はハードボイルドってツンデレに通じるものが有るような気がするんだが、(多分気のせい)この時点ではツンが勝ちすぎ・・・位丈高なマッチョズムの方が強いという事だ。
物語は盗まれたゴッドウルフの写本を巡ってスペンサーがボストン中を駆け巡るものだけど、まだ恋人のスーザンや相棒のホークは登場しないので基本的にはスペンサー一人で数々の危機に直面、処理しないといけない。それ故に後の巻のスペンサーよりも硬派な雰囲気があるのでは・・・とも思う。
後の巻のホークとの嫌味の応酬もシリーズとしての魅力のひとつではあるけど、ひとつの独立した物語としてはこの1巻が一番練りこまれているかもしれない。