ムーミン谷の十一月 (講談社文庫 や 16-8)
トーベ・ヤンソン Tove Jansson
ムーミンシリーズの最終巻は、冬の足音が迫るムーミン谷を舞台に、ムーミン一家以外のキャラクターたちが織り成す物語。ムーミン一家は旅に出ているという設定なので登場しません。
晩秋のある日、何かに導かれるように主不在のムーミンムーミンハウスへと集まったサブキャラクターたちが、数日間の共同生活をするというのがストーリー。
と言ってもムーミンシリーズのキャラクターたちはみんな個性が豊かすぎる上に自我も強いので揉め事ばかり。みんながてんでバラバラに主張しあうばかりで、読んでて結構どんよりしてくるモノがある。こいつらには空気を読むという概念はないのかと。
日本では穏やかな大人なイメージの強いスナフキンも、原作では機嫌が悪いと奇声を上げたりする結構アレな人(?)だからなー。まとめ役不在のまま終盤まで取り留めのない展開が続くが、そんな状態でも全員の心の中にはムーミン一家の存在がひとつの指標として存在していて、それが最悪の事態への最終安全弁となっていた感があった。だから最後には皆で同じ方向を向くことができたのかも知れない。
ムーミン一家を登場させない事により、一家の存在の大きさを感じさせるという手法。
誰もがムーミン一家のように仲良く穏やかに楽しく暮らすことは出来ないけど、そうあろうと努力する事はできる。そしてそれが一番尊い事なんだと感じた。