ぷりるん。―特殊相対性幸福論序説 (一迅社文庫)
十文字 青 ま@や
ひところのエロゲみたいなタイトルだけど、何かが迸るような内容と一種独特のテンションとで一気に読ませる作品。
クラスのアイドル的女子と付き合い始めたのをきっかけに、主人公ユラキの周囲で巻き起こるトラブルや理不尽なあれこれを、ちょっぴりメンヘルっぽく描いている。
この作品をどう評価するかと言われるとちょっと悩むのだが、問題児ヒロイン桃川みうの常に誰かに愛されているという実感が得られないと不安になり暴走する依存症的な性格には、実際のところ覚えがあるというか、みう程エキセントリックではないけど、異常なまでに電話やらメールやらを強要しながらも、こっちが忙しくて構えないと男友達と勝手に遊びに行ったりして、どうして?と問うと素でどうして?と返してくるような、そういう女の子と一時期縁があってやっぱりユラキよろしく煩悶とした思い出があるもんだから、ユラキの鬱が結構ダイレクトに伝わってきて精神的にまいる作品、というのが一番の感想。
だもんだから、純粋なエンターテイメントとして楽しめなかったのが残念。
ただ、ユラキの姉や妹やぷりるんさんと言った人達が、良い意味でエロゲのサブキャラクター的な存在感を発していて(実際ぷりるんさんなんかサブキャラと思わせてラストでメインヒロインだったという極めてゲーム的なキャラクターだし)、憂鬱な物語をライトに感じさせる効果を発揮していた。
十文字先生の作品はまだ2冊目だけど、いわゆる漫画・ゲーム的な部分と変に生々しい部分とを上手く織り交ぜた作品を書く人という印象を受けた。