谷甲州作品としてはわりと初期の作品になるのですかね、執筆された時期が時期だけに、そして舞台が近未来だけに、多少なり時代を感じてしまうものがあった。
作品は一応SFの皮を被ってますけど、実体は第二次世界大戦当時ナチスドイツが研究開発していたゲテモノ兵器2種を近未来に蘇らせて、コンパクトな冒険活劇を拵えてみましたという感じ。
基本的に一冊読み切りに近いスタイルなので、チベット問題や宗教テロ等の要素を盛り込みつつもあっさり味。
ただ、谷甲州センセイの作品はドラマチックなストーリーよりも細かい設定で読ませる方向性なので、二大ゲテモノ兵器をモデルにしたイントレピッドや長距離砲のディティール、宇宙空間の描写などは読み応えがあります。
また、執筆時期が決して新しくはないに関わらず、物語の主題部分にチベット独立運動問題を取り合っていたりするのは美点です。
でも、やはり物語性が淡白なので、谷作品に関心がない人にはあんまり楽しめないかもと思った。