さらば長き眠り (ハヤカワ文庫JA)
沢崎シリーズ事実上の完結編。
第一作から一体何年かかったのかなんて気にしてたらいけないので、その辺には触れません。
結構ページ数がある上に、複数の小さな事件が関係性を持ちひとつの物語の流れを作り出しているという緻密な構成のために読むのにはなかなか根性がいります。
100Pぶんくらい一気に遡って読み返さないと細かな伏線が把握しきれなくなるなんてザラ。そういう意味では非常な力作であると同時に、難物でもあります。
もっとも、この作品は所謂本格ミステリー系ではありませんので、伏線や事件の謎と言った部分はあまり気にせず、流れるまま流されるままに読んでもたぶん問題なかったかも知れません。
ハードボイルドは主人公とそれを取り巻く人々の心理模様こそが主題で、謎解きはあくまで登場人物たちを引き立てるためのガジェットです。
前の巻を読んだのももう随分前なので若干記憶が曖昧になっていますけど、初めて読んだ沢崎シリーズ第一巻『そして夜は甦る』当時に比べると若干沢崎の言動が丸くなったように感じるのは気のせいだろうか。当時は和製チャンドラーだなあ、という印象があったんですけど、本書ではタイトルにこそチャンドラーへのオマージュがあるものの、それ以外は完全に沢崎であり原りょうであるという感じ。
大仰さがなくなり、若干素直じゃないおせっかい焼きのくたびれた中年男という現代の日本にいても違和感のあまりないキャラクター性へと辿り付いている気がします。
せっかくこなれてきたところで完結というのも勿体無い気がしますけど、この巻で正式に事務所の主が渡辺から沢崎変わったので、シリーズとしては完結しても沢崎の物語はここからが真のスタートなのかも知れません。
新沢崎シリーズも始まっているようですが、まだ旧沢崎シリーズに読んでないのタイトルが一つあるので、まずはそっちを読むべきですかね。