九軍神は語らず―真珠湾特攻の虚実 (光人社NF文庫)
真珠湾攻撃に投入された特殊潜航艇の乗員たちと、彼らを死後軍神として祭り上げた戦時報道の不気味さを軍神の遺族へのインタビューを元に描くノンフィクション。
戦意高揚プロパガンダはいかなる体制のいかなる国にも存在するものではあるけど、やはり度が過ぎると薄気味悪さの方が強くなるのを思い知らされたかんがあります。
特にこの本に収録されている、当時の著名人からの賛辞というのが政治家軍人はもとより文壇の偉い人や学者までが諸手を挙げて軍神を絶賛していて薄ら寒い気持ちにさせてくれます。
もちろん搭乗員の方たちの心意気や国に対する想いは素晴らしいものである事に疑いの余地はありませんが、それだけに彼らの想いを過剰演出して政治利用する行為が醜悪に思えてしまうのは致し方ない。敢えて言えば英霊に対する愚弄。
また、遺族の方達の証言では、"軍神の遺族"を演じる事を強要(命令では無くても演じる事を強要する空気が存在した)され、親として息子の死を悼むことすらままならなかった事などが語られていて、この辺りは本音より建前を優先する事が美徳とされる日本らしいと思ったり。
なお、タイトルに真珠湾「特攻」と付いていますが、のちの神風や神武特別攻撃隊のそれと繋げて考えるべきものではないので注意です。