虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
![4150309841](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41prk9iwXpL._SL75_.jpg)
国産SFでは珍しいデストピア作品。
テロの温床として無法地帯と化した途上国を舞台に頻発する大量虐殺と、それに関わる謎の米国人ジョン・ポールを追うミリタリーテイストのSF&サスペンス。
作中で描かれる未来世界はとにかく暗い。テロル、貧困、内乱、搾取。この世の醜いあらゆるものが凝縮されて作品に詰め込まれてて、それらはここ10年程の我が国では話の俎上に乗せただけでブサヨだ中二病だと指弾される事柄ばかりではあるけど、それでも敢えて作品のガジェット…のみならず底流を貫く芯の部分として使用した事は素直に凄いと思います。
作者が主人公を通して読者に切々と問い掛けてくるような筆致には些か青さを感じなくも無いのですが、そこは作者の問題提起意識として好意的に受け取るべき部分かも知れません。
いずれにせよ、00年代前半の熱病に取り憑かれていた様な熱狂が冷めてきたここ数年だから評価されていますけど、たぶんイラク戦争当時頃に発表されていたらボロクソに叩かれていたでしょうね。
SFとして見ると、虐殺に関する文法などのガジェットに関する解説らしい解説がほとんどなされてないことや、ミリタリー要素に関しても多少考証が甘い部分はありますが、上記のごとくに、今、こういう時代に敢えてこういう作品を発表したという事に大きな意義があると思うし、読了後しばらく陰鬱な気分にさせてくれる点で作品としての破壊力も充分だと思います。
終わり方に若干破壊願望が垣間見られることと、物語を通して死の影が付き纏っているのが印象的でしたけど、作者の方は急逝されたのですね。
それを知ると作品を覆う独特の空気がより陰鬱さを増して感じられる…。
名作ではありますが、強い欝要素を持っているので読む際には注意が必要です。
「虐殺器官」面白いですよね〜。
黒猫さんがおっしゃられる通り、
全体的に暗い影が漂っているのは、
著者が死を見ていたからかもしれないですよね。
これほどの才能を持ちながら、
亡くなってしまったのが、
本当に残念です(T_T)。
「ハーモニー」も面白いので、
気が向いたら読んでみて下さい♪
そうですよね、この作品の数年後に他界されてしまったんですよね。
気分が沈んでる時に読むとちよっと欝になりそうな怖さはありますが、作者が何を描きたいかが良く伝わってくる作品でした。
「ハーモニー」今度読んでみますね。
やっぱり欝要素ありなんでしょうか^^;